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196話 社会科見学

てなわけで社会科見学の現場に向かいます。

ちなみに今回はこの世界の情報がかなり出てきます。

長命種の黎明期もその一つです。

まあ、それは本編で。 

 

 エレノアに城を脱け出した事がバレそうになった龍だが機転を利かせたヴィクトリアに助けられた。

 そして今は社会科見学をするためにペオル家専用の竜車で西門に移動している。

 要するに一人っきりの自由時間は終わったのだ。


「…『社会科見学するのに何で西門に向かってるのか』って顔してるな」


「あ、はい。社会科見学ならもっと別の場所に行くかと」


「…陛下は西門に何があると思ってる?」


 …帝都の北には漁港があったな。

 そういえば北もそうだが東西南北に駅があるな。

 ってことは今から駅に行くのか?


「駅かな?」


「交通手段って事は合ってるぞ。…ではちょっと付け足すよ。世界各国から来る要人の船が果たしてあの港に泊まれると思う?」


 そんな風に言ってくるのなら『港に要人の船は泊まらない』だな。

 そして駅は違うが交通手段は合ってるのか。

 …西門には湖とかないから港とは除外されて駅は既に知ってるので除外される。

 …まさかやっぱり()()もこの世界にあるのか!


「空港か!」


 龍は自分が出した答えを驚きを交えながら言った。

 そして数秒ほど間を空けてヴィクトリアは 不適な笑みを浮かべて答える。


「そう正解だよ。西駅の隣には空港があるのさ。もちろん、場所を取るから外壁にだけどな」

 

「…でも、この世界って鳥よりも大型の生物が飛んでるよな?ドラコンとかさ」


「それなら心配ない。人語を解する竜族の長と飛行ルートを決めてっから俺様系の竜以外には遭遇しないよ。まあ、魔物と遭遇する確率もあるから迎撃用に対空魔導砲とかを積んでるけどね」


 竜族に許可を得ているが遭遇するちゃ遭遇するのね。

 というか慣れた風に話してるけど遭った事あるなこの人。

 …お、竜車が止まった。


「ヴィクトリア様、目的地に到着致しました」


「おう!ご苦労様!また連絡すっからよろしくな!」


「はい。喜んで駆けつけます」


 ヴィクトリアって姐御肌ぽいな。

 何かやること全てが思い切ってる。


 竜車は龍とヴィクトリアを降ろすと空港の納屋に移動した。

 ヴィクトリアは長期滞在をする場合は御者に迎えまでの間は自由時間を取らしてる。

 そのためか帝都で行った『どの五王家のもとで働きたい?』というアンケートでは堂々の一位であった。

 要するにペオル家が運営している場所は好待遇なのだ。

 また、『皇帝』を選択欄に入れたアンケートの結果は言うまでもない。


「そういえば竜車を引く竜は竜族と契約して得た竜なんですか?」


「ああ、その質問するかぁ。ちょっと答えにくいな。飛行ルートを一緒に決めた竜族って族の中で最強と呼んでも過言ではない大集団なんだよ。だから竜車を引く竜とは関係ない」


 ああ、皇帝通りで会った冒険家っぽい男性も竜車を引く竜は『飼い慣らした竜』って言ってたな。

 それにユルグレイト城でのパーティーでブランド竜を食べたわ。


「じゃあ、飛行ルートで遭遇する竜はその集団に属してない竜ってことか」


「そうそう。それにあいつらも同族食いをしてるし、私らも竜を食ってるしな。言うなれば『我々に迷惑をかけないルートを決めよう』っていう契約を交わしたの」


「随分と警戒心のない竜だな。普通なら突き返すだろ。それに見下しそうだし」


「その竜族は『知性ありし二足歩行の生物との共存を望む』って言ってからな。まあ、竜種にも色々と居るからな。無駄な争いは好まない基本的に温厚な竜族なんだよあれは」


 …でも、それ以外に何か隠してそうだな…。

 本当にそんな単純な理由で契約を結べたのか?

 

「さて、長々と話してたらロビーに着いたな。ここが帝都インフェルノの空の玄関口、インフェルノ国際空港さ」


 ここが帝都の空港かぁ…。

 駅とは違って金属で建てられている。

 そして切符売り場やロビーに至る所には電光掲示板のような物が置いてあり向こうの世界と同じく便の時間が表示されている。

 それと飛んでいるのは飛行機ではなく甲板があるまるで船のような飛空艇だ。


「あ、社長!お戻りになられましたか」


「何か変化はあったか?」

 

「いえ、各国の要人を乗せた飛空艇は順調に帝都に向かっております。他の便も今の所は何事もなく飛行しております」


「オッケー了解した」


 社員から飛行状況について一通り聞くとヴィクトリアはポケットからトランシーバーのような魔導具を取り出した。


「ああ整備場、聞こえるか?聞こえたら応答しろ。どうぞ」


『はい。聞こえてます。どうぞ』


 相手は飛空艇の整備場である。

 ヴィクトリアは戻ってくると毎回、飛行状況と整備場の確認をしている。


「問題は起こってないか?どうぞ」


『はい。滞りなく進んでおります。どうぞ』


「対空兵器の点検はしたか?どうぞ」


『はい。先ほど済ませました。どうぞ』


「了解した。今から確認に行く」


 そう言うとヴィクトリアはトランシーバーのような魔導具をポケットに戻した。


「…さてと整備場に向かうぞ」


「あの社長、その少年も整備場に連れて行くおつもりですか?」


「ああ、知り合いの黎明期を終えたばかりの子だ。ちょっとした社会科見学よ」


「なるほど黎明期を終えたんですね。私は持ち場に戻ります」


 爺ちゃんに教えられなかったが黎明期ってなんだ?

 この世界にはそんな期間があるのか?

 社員の方も去っていったし訊くなら今しかないな。


「黎明期って何ですか?」


「魔族やエルフ等の長命種に使われる用語で産まれてから百歳を過ぎるまでの期間の事だ。この時期に長命種は将来のために活かせる様々な事をスポンジのように吸収して成長する。まあ、大雑把に説明すると長めの自主勉期間か?この時期を過ぎると長命種は高等学校とかの教育機関に通い出すんだよ。陛下は十六年前に終わったな」


「そうなりますね。でも、俺は成長を止められてたし」


「心配しなくても翔龍様なら陛下に何かと教えてる筈だ。だからちょっとは頭を動かせるだろ?じゃないと長命種として生きてけない」 


 ああ、確かに人より頭の回転が速い自覚はあったな。

 なるほど親父や母ちゃんは百年ほど俺に様々なことを教えていたのか。

 前にユルグレイト城でエレノアが言ってた『幼い頃』ってこの黎明期を差すのか。

 となると田舎ではその埋め合わせをしたって感じか?


「多くの場所を見回らなければならないから移動するぞ。それと名前を聞かれても偽名で答えること。くれぐれも『自分が明日の主役』だとバラさないように」


「ああ、そういえば俺って明日の主役だった」


「…本当に王座に座る自覚があるのか陛下?」


「あるよ。現在は羽目を外してるけどな」 

次回、社会科見学開始!

初めは整備場からです!

それではまた次の話で!

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