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194話 聖霊と王の愉快な話⑥

六話と長い間、主人公一行が一切、登場しない話にお付き合いいただきありがとうございましたm(_ _)m

これにて『聖霊と王の愉快な話』、完結てす!

 その後の演劇は少年召喚士によって生まれて初めて外の世界に出た従魔のゴブリンが驚く様子や感動する様子、また面白おかしく失敗する様子を描く『僕の親友、ゴブリン君』が行われた。

 そして今はは王様と聖霊が今生の別れをする場面である。

 この世界ではルシフェルと勇者の戦争以前にも多くの戦争が起きていた。

 まだ、様々な国が興る時代に生まれた王様も例外ではなく、同盟国を助けるべく戦地に赴く事になってしまった。


「戦争…。嫌ですあなたと離れたくありません!お願い!死のみが待ち受ける戦地に行かないで!例え国があなたを無理に戦地へと連れて行くのなら私が匿います!」


「いえ、これは私の意思で決めた事です。あなたとは星の数ほどの愉快な話を語り合ってきました。これらの話の多くは民から聞いたモノ。王は民を守るために自ら剣を取らなければなりません。これは宿命ではなく私が選んだ道、故に後悔はない。どうかそんな顔はせずにいつものような笑顔で見送ってください。あなたの笑顔はとても美しい」


「…そうどんな言葉をかけてもあなたは行くのね。あなたと紡いできた物語は私の宝物です…。私はいつでもこの森の周りに野花が咲き誇るこの岩の袂に居ますから」


「ああ、まだ話したい物語が幾つもある。では行ってくる」


 王様は別れを告げると森から出て行った。

 そして向かった先は戦地、己の民を守るために。

 だが物語を知る者なら結末はわかっている。

 その事を今、暗転した舞台に現れた語り部が告げる場面だ。

 要するに『聖霊と王の愉快な話』の終焉である。

 語り部は先ほどとは違って歩き回らずに木製の案楽椅子に腰を掛け本を読んでいる。

 

「これはこの世界に起きた事実です。私が仕えた王は一人の聖霊と出会いました。彼女が我が王のあり方を変えてくれたのは言うまでもありません。そういえば戦争が激化する中での跡継ぎを産むための婚約者決めは積極的ではありませんでしたね…。結論を述べると二人は二度と紡げなかった。戦死ではありません。流行病による病死であります。死の間際すら『約束の場所に参りたい』と仰っておりました。それはもう王妃が嫉妬するほどにね」


 王の死を追悼するかのようにしばらく目を瞑った後に語り部は読んでいた本を閉じて観客席の方を向いた。

 そして足元に置いてあった木箱に本を入れて観客席の右側の席から一周するように周りを歩き出した。


「ところで話は変わりますが皆様には二人のような関係を持つ人は居りますか?ああ、『居る』とそれは良い!その人とは掛け替えのない時間を作れる筈です。ああ、『居ない』と大丈夫!まだ遠い出来事かもしれませんがきっとあなたの運命を変える人に出会えます!どうかその人の事を大切に思ってください」


 その話を終える頃には語り部は舞台に戻ってきており、案楽椅子の変わりに教会の入り口が設置されている。

 語り部は教会に入る事なく再び観客席の方を向く。

 時の流れの再現か語り部は段々と年老いた老人になっていく。


「時折、私は思うのです。やはり人生は面白い!まるで先読みできない一冊の本のようだ!とね。二人の出会いもそうです。仮に王があの場で妖精達に愉快な話を聞いていたら?仮に森の奥へ進まず引き返していたら?仮に聖霊があの場で歌を奏でていなかったら?ええ、あの二人の出会いの運命はそこで途切れてしまいます。そしたらこの話は皆様の元には届かなかったでしょう。または別の形で伝わっていたか。…さて、これにて幕引きにしましょう。さようなら!また、会う日まで!」


 幕が下がり中、語り部として振る舞ってきた王様の使用人は木箱を大切に抱えながら教会の奥へと進んでいった。

 これで『聖霊と王の愉快な話』の上演は終わった。


ということで次回からは主人公一行が戻ってきます!

もう一度、確認しておきますが龍は城から脱出して楽しんでおります。

まあ、龍の行動を把握したアヴェルにより、ほぼ認められた状態なんですけもどね。

それではまた次の話で!

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