19話 動き出す物語の歯車
フィアナ編終了!
…まあそんだけかな。
ユルグレイト王国には各国の要人がよく立ち寄ったり、各国の名だたる名門貴族の子や有名店が出店している。
なので偶に大犯罪が起こる事があり、大牢獄が三カ所ある。
そのうちの一つにユルグレイト学園に侵入した男は収監されていた。
大牢獄の名前は悠久の地下世界、名前の通り地下牢であり、たいていの者は終身刑だ。
「あぁ~、どうしてこうなったかなぁ」
侵入者は牢屋内に落ちていた小石を壁にぶつけている。
世界共通で牢屋は魔法無効化の効果がある天然の岩石で作られているので、例え魔法を放とうとしても直ぐに無効化される。
「まあ、あの方なら助けにきてくれるだろう」
「よくわかっているではないか」
侵入者が顔を上げると鉄格子の前に漆黒の鎧を着た男が立っていた。
悠久の地下世界の内部は迷路のようになっているが入り口はアダマンタイトで作られた大門の一カ所だけ。
そして騎士団の駐屯所が監獄の目の前にある。
だが男は侵入とは大いにかけ離れた状況を自ら作り出しているのにも拘わらず無傷で騎士団の追っ手もなく侵入者の牢の前に立っている。
「おお!あんたが来てくれたか!助かった早く解放してくれ」
「ああ、解放してやるさ」
早急に訪れた幸運に侵入者の心は喜びで溢れる。
また、龍達にどう復讐するか楽しげに策を練る。
しかし、それは束の間の出来事、侵入者の体はだんだん青白くなり冷たい地面に横たわる。
そして黒鎧の男の剣には血が付いていた。
「何でだ…」
「解放したさその魂を…使えぬ駒は消える定め」
「まだ俺は…」
侵入者は黒鎧の男の足にすがりつく。
黒鎧の男はしゃがみ込み侵入者の頭を掴んだ。
「消し飛べ」
侵入者は頭を粉砕されて息絶えた。
一方、そんな大事件が起きてるなど全く知らないフィアナは、
「何であれだけのことを言えないかなぁ…。あたしのバカ」
ベッドに転がり頭を枕に埋めながら何故か一人反省会を開いていた。
(まさか龍がルシフェル様の孫だなんて…これからどう接したらいいんだろ)
そんな反省をしている最中に龍の声が廊下から聞こえてきた。
「えっと…やっぱしここが一番広いよな」
(龍?なにしてんだろ)
フィアナは恐る恐るドアを開ける。
「何やってんの?」
「騒がしくして悪いな。『創造で木に穴を開けて部屋を創っていいか?』って学園長に訊いたら『男子寮は部屋と部屋との隙間があまりないから部屋と部屋との隙間が広い女子寮に創ってくれ』って言われてさ。おかしな話だよな俺の部屋を女子寮にあるとか」
さて、さっさと創り上げて部屋でゆっくり休むとしますか。
学園長に連れ去られてから全く休憩してないからだ。
「部屋使っていいわよ」
「何か言ったか?」
「あたしの部屋を使っていいわよ!」
そんなに大きな声出さないでくれ!
鼓膜が破れるかと思った!
「お前はどうすんだよ」
「相部屋に決まってるでしょ!」
「相部屋!?お前は俺が同じ部屋に居てもいいのか!?」
「別に良いとか嫌とかそういう問題じゃなくて…。えっとその…恩返し。そう!恩返しよ!あの時、助けてくれたお礼に部屋を使わしてあげるわ!」
フィアナは必死で考え抜いた答えは『恩返し』だったが『当たり前の事をしただけ』と思っている龍には無意味な答えである。
「別にそれは当たり前のことだし」
ほら、この通り。
「いいから使いなさい!それともあたしの頼み事が聞けないの?それかあんたがあたしとの相部屋が嫌なだけでしょ!」
「そこまで言うのなら上等だ!荷物持ってくるからスペース開けとけ!」
しかし、挑発するように頼めば話は別だ。
自分の考えを曲げてでも龍は引き受けてしまう。
結果としてフィアナの願いは叶い、龍は荷物を取りに行くため女子寮を出て行った。
「…あたしのバカやろーーーーー!」
そして何故か再び一人反省会を今度は部屋の隅っこで行うフィアナであった。
「何やってんだ?」
「懺悔中」
こうして龍達の物語の歯車はゆっくりと動き出したのであった。
フィアナ編終了っということで次回から生徒会長編スタート!
女学園最強の生徒会長が降臨します(`・ω・´)
それではまた次の話で!




