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189話 聖霊と王の愉快な話①

前回の後書きで予告しましたが主人公 一行の出番はありません。

演劇なのでつまりは役者のみが出てきます。

今回登場する役者は作家(進行役)、王様、使用人達です。

それでは開演

 開演すると劇場は暗転して舞台上に現れた語り部にスポットライトが当てられた。

 設定としてはこの物語を後世に伝えるべく書き上げた名無しの作者である。


「これは忌まわしきあの大戦が起こる前にあったとされるお話。そしてとある一国の王と独りぼっちの聖霊が紡ぎ上げる愉快なお話である。それでは皆々様!物語を開始する!」


 そう言うと語り部に当てられたスポットライトは消えてホール全体が暗闇に包まれた。

 再びホールに明かりが戻ると何と観客達は玉座の間を模した空間に転移していた。

 もちろん、これはホール全体を覆っている空間構成魔法の効果である。

 単純に劇場を玉座の間のように変えただけで転移はしていない。

 そして当然だが玉座には王様が座っている。

 

「使用人達よ!何か愉快な話はないか!余は退屈である」


「御要望に応えられず申し訳ございません国王陛下。城下には胸が躍る話を催す吟遊詩人も居なければ笑いを届ける旅芸人も居りませぬ。今の城下は路地裏で寛ぐ猫すら欠伸をするほど退屈で満ち溢れております」


「それはいかんぞ!退屈が蔓延すれば余のやる気が損なってしまう!愉快な話を求めに城下に手向くぞ!」


 王様は立ち上がると真っ直ぐ従者を引き連れて観客達の方に歩いてきた。

 ある程度、進むと一瞬にして場面が城下の光景に変わり、王様は国民達に愉快な話がないか訊ねている。

 そして再び語り部が舞台上に現れて、薄いスポットライトを浴びた。


「ええ~、どうしたものか何とこの王様は愉快な話を求めて城下に出向いたではないか!実は王様、政の次に退屈が嫌いな性格であった。故に退屈が溢れる状態がとても気に食わなかったのだ!さてさて、王様が求める愉快な話は見つかるのでしょうか?」


 語り部が王様の性格について話していると王様一行が語り部の方に近寄ってきた。

 普通なら通り過ぎるのだが王様は語り部に話しかける。

 

「おい、そこのお前」


「…あら?私めの事でしょうか?」


 驚いた語り部は目を丸くしながら観客の方を向く。

 

「そうお主の事である!何か愉快な話を知らぬか?」


「いえ、私めはたった今、朝食を食べて仕事場に向かっている途中、故に陛下が求めるような話は持ち合わせておりませぬ」


「そうであったか。では励むとよい!」


 王様一行が語り部から離れると暗転して、語り部のみにスポットライトが当てられた。


「…というか現在進行形で励んでいる最中なんですけどね。まあ、そんな奇妙な出来事は倉庫にて埃を被りなさい。さてさて、城下に出向いた王様一行は目的の話を得たのか?それは言うまでもなく得られないの一択だけです!では愉快な話を得られなかった王様はどうしたのか?様子を見てみましょう」


 語り部が立ち去らぬまま明るくなると場面は玉座の間に戻っていた。

 そこには愉快な話を得られなくて怠けている王様と頭を悩ませている使用人達が居る。


「これはこれは国民には見せられない光景だ。果たしてどう解決するのか見物ですね」


「…この手があったか!森の妖精達に愉快な話を聞けば良いのだ!」


「おっと妖精達から愉快な話を得ると思いつきましたか!確かに王様より何百年も生きる妖精からは愉快な話が得れることでしょう!しかし、妖精達は滅多に人前に現れない存在。会うのは至難の業でございます。だが!この王様はそんな事では諦めない!一度やると決めた事は最後までやり遂げる!それが彼だ!妖精達に会うため考えて考え抜いた彼の出した答えは…」


「手始めにエルフに会うぞ!」


「そうエルフに妖精達の居場所を聞くことです!果たしてエルフに聞いた所で妖精の居場所などわかるのか?それでは新たな頁をめくらさせていただきます」  

ってことで第二幕に続きます。

ちなみに第一幕とサブタイにしても良かったのですが途中は省くのでこのサブタイにしました。

それでは次回の話で!

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