188話 脱出成功?
とりあえず城から脱出した龍なのだが果たして本当に成功できているのか?
いいえ、サブタイから成功してないのは明らかです。
ってな訳で続きは本編で!
下水道に転移した龍は周囲を確認して漁港に出てきた。
転移先の下水道は漁港に繋がっていたのだ。
その証拠に活気ある漁師の声や貿易船から荷物を下ろしている人が確認できる。
「港の方に出たか。近くに知り合いは…居ないな」
さて、これからどうしようか?
脱出には成功したが行く場所をまだ決めていない。
普段は王の護剣の誰かが案内してくれるからな。
確かに龍は脱出に成功した。
しかし、龍の行動を把握している、あのアヴェルが龍の脱出を許すのか?
いや、そんな失態は絶対に起きない。
そもそも、ルシフェルが何度も城から脱け出している。
それを初代当主達が知らないとでも?
また、次期当主にその事を伝えていないとでも?
要するに何が言いたいのかというと龍が今日、城から脱け出すなど想定の範囲内、関係者全員に知らされている。
というか脱け出してくれる方が警備に人員を割く必要がなくなるので、むしろ好都合なのだ。
それ故にアヴェルは龍の服に発信機のような機能を持つ魔導具を装着させて転移先である漁港にヘイスとウルミナを待機させていたのだ。
これには天国のルシフェルも驚いているに違いない。
「うわっ、本当に城から脱け出してる。どうやったのあれ?」
「何か玉座の間に組立式の転移魔法陣を仕掛けてあったって婆さんに聞いた。ルシフェル様が日本で療養している時に調べたってさ」
「ええ~、大戦中なのに城を脱け出してたの?」
「らしい。そんでバアル様が一番、キレてたそうだ。さて、気を引き締めて行くぞ」
「了解」
まあ、そういうことでヘイスとウルミナが護衛担当になった。
そして誰にもバレずに脱出できたと勘違いしている龍は意気揚々と城下を探索する。
「そういえば初日にアヴェルから地図を渡されていたな」
もちろん、これもアヴェルの計らいである。
「魔物園は昨日、行っただろ。…よし、劇場に行くか。 劇場まで馬車で…いや、道すがら観光を楽しもう」
「…ヘイス、龍様は何処に向かうって?」
「劇場らしい。交通手段は徒歩だ」
「劇場ね。アヴェル様に報告しとくよ」
龍は創造で創ったショルダーバッグに地図を入れて、劇場に向かった。
一方で物陰で龍の行き先を聞いたヘイスはウルミナにその事を伝える。
また、ウルミナは龍の行き先をアヴェルに報告した。
これは龍が行く先で不穏な動きをしている輩が居ないか巡回している騎士に確認させるのと、その場で龍と鉢合わせしないためである。
そして食べ歩きや途中で店に入ったり、気になる脇道に行ったりと大回りをしながら龍は劇場に到着した。
「ここが帝都国立大衆劇場か…。演劇なんてほぼ文化祭とかで見るようなものだったから楽しみだ。チケット売り場はあそこだな」
「…行ったな」
「行ったね。さてさて、龍様が観る演劇は…。『聖霊と王の愉快話』!これ超観たかったヤツよ!龍様わかってる~」
「あのな気持ちはわかるが仕事だぞ仕事!劇に夢中になって目的を忘れるなよ!」
聖霊と王の愉快話、この大陸に古くから伝わっている伝承で、諸説はあるが舞台はユルグレイト王国とされている。
恐らくエルフの王国としてユルグレイト王国が有名だからであろう。
大雑把に説明すると、ある一人ぼっちの聖霊と一国の王が共に語り合う愉快な話である。
客はこの二人が語る話を観ることになる。
「大人一人、二千二百フェルです。『聖霊と王の愉快話』は四番ホールです」
何とか席は取れた。
ほうほう、向こうの世界のようにポップコーンと飲み物が買えるのか。
こっちの世界の商人も考えることは同じなんだ。
同様に一日三食も存在してるしな。
と言っておりますが普通に買うんだけど。
だって食べたいし。
「ねえ、ヘイスヘイス」
「…わかったわかった!見張りは俺がするから俺の分も買ってこい!」
「やった~!ヘイスが優しくて良かった!」
「浮かれすぎだろ…。本当に仕事に集中できるんだろうな?」
さて、三人共に、飲み物とポップコーンを買って四番ホールに入っていた。
しかし、そこで龍は自分の席に座らずに立ち止まっている。
おっとこれはマズい…。
流石にこれは予想外の展開だな。
何でもう到着してんだよお前ら…。
何故なら四席前に知り合いが座っていたからだ。
それはルシフェル大帝国に到着して自由行動を行っているフィアナ達である。
「エレノアも来たら良かったのに」
「仕方がない。エレノア、公務があるって言ってた」
ああ、明日の戴冠式のために色々と準備をしているのだろう。
それはさて置きバレないように何とかしなければ…。
脱け出したことがバレたら何て言われるか。
次回は演劇開演です!
予定としては龍達の出番はないですね。
後、意味のない回ではありません。
それではまた次の話で!




