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187話 自由を求めて

さあ、脱出作戦開始!

倒すべき相手は四方八方を警備する第一騎士団!

果たして龍は無事にお忍び観光できるのか!?


 …さて、朝食は文句より、称賛の言葉しか出ないほど素晴らしいかった。。

 しかし、俺は今の状況に文句を言いたい。

 いくら何でもガチガチに警備しすぎじゃない?

 扉、窓の下、城壁の上、廊下と一瞬の隙すら見当たらない!

 俺は檻に入れられた獰猛な獅子か!

 これじゃあ脱出する気なんて失せるっつうの!

 まあ、俺はこれしきのことで諦めはせんけどな!

 お陰さまで余計に脱出意欲が沸いてきたわ!

 見慣れない光景が眼下に広がっており、尚且つ脱出したら一人行動できるんだぞ!

 昨日は大人しく閉じ籠ると誓ったが絶対に脱出してやる!


「けど、どうやって脱出するかなぁ。もしかしてあの本に載ってたりして…。何だこれ?」


 流石に爺ちゃんからもらった本に脱出の仕方は載ってないだろうと思って半信半疑で開けてみる。

 そして数十頁ほどめくると小冊子が挟まっていた。

 別紙にするほど重要な情報なのかと思って念のために開けてみた。


「別紙に載ってる…」


 しかし、別紙には重要情報なんて一行も書かれていない。

 代わりに求めていた脱出方法が書かれていた。

 更にこの状況を予測していたのか次のような伝言が記されている。

 

「『暇すぎて暇すぎて脱出したい気分になった時はこれをこっそり読め。追伸。爺ちゃんも良く脱出してました』」


 おいおい、大戦中に城から脱け出すなよ。

 まあ、それはさて置き…昔の城内の地図が載っている。

 これを今の地図と照らし合わせれば何とか使えるかもな。

 幸いにも警備は殆ど俺の部屋の周りにしか配置されていない。

 目的地は玉座の間、そこには転移魔法陣が隠されており、それを起動させれば脱出できるらしい。

 でも、肝心の部屋からの脱出方法がない…。

 これは自分で考えるしかなさそうだな。

 あ、そうだ。


「…何か御用ですか陛下?」


「いや、トイレに行くだけだ」


「…御手洗いですか。では動向を御許しください」


「ああ、けど中までは来るなよ」


 よっしゃ!部屋からの脱出は成功っと。

 だが、この騎士を離さなければ部屋に戻されてしまう。

 という訳で例の方法を試してやる。

 

 龍はトイレに入ると数分して出てきて動向した騎士と共に部屋に戻った。

 しかし、ドッペルゲンガーなのか影武者なのかトイレから何ともう一人の龍が出てくるではないか!

 

 …よし、騙せてるな。

 こっからは一言でも漏らせばあれが偽物だとバレてしまう。

 今からは慎重に行かないとな。

 ちなみにあれから改良を重ねて俺の動きを真似しないようにしてやった。

 手元のリモコンは離せないけどな。

 どう考えてもこれが邪魔で戦闘では役に立たない。

 多分、爺ちゃんもできたが同じくこれが邪魔で利用しなかったのだろう。

 入室成功!誰も来ないうちに玉座の間に向かうとするか。


  さて、難なく第一関門は突破できたが玉座の間だけあって配置されているな。

 というか二人で左右の戸を押して開けるタイプの扉かよ。

 一人で押すのは無理そうだし創造(クリエイト)でやや強引に開けるか?

 その前にどうやって二人の騎士を扉から退かさな話にならん。

 …影武者の方で陣取ってる二人を名指しで呼ぶか?

 でも、名前はまだ知らないし、どうせ呼んでも来る前に別に騎士が代わるだろう。

 例え影武者の要領で人型の何かを創っても怪しまれて終わっちまう。

 …ああ、どうすっかなぁ。


 龍はこの状況に対する打開策を練り始める。

 一方、扉の前で陣取っている騎士は皇帝が直ぐ近くに居るとは知らずに欠伸をしていた。


「おい。欠伸が出ているぞ。団長が不在だからといって気を緩ませるな」

 

「すまない。…っていうか流石に戴冠式なんだし団長、戻ってくるよな?いくら各地を放浪しているあの方でも戴冠式ぐらいは」


「いやいや、入団試験の時も居なかったぞ」


「そうか新入団員はまだ団長に会ってないんだな」


「まあ、俺らも五回ぐらいしか会ってないけどな」


 騎士の話からして職務怠慢な団長が居るらしい。

 これはクビ案件かね?

 それはさて置き、見えてないよな?

 透明化(ステルス)っていう自身の姿を隠す魔法を使用して物音を立てずに近づいたんだが大丈夫そうだな。

 で、次はこの扉の向こう側で少し大きな物音を立てる。

 この扉を抜けると約百五十メートルほどの一直線の長い廊下が現れて、その先の扉を開けると玉座の間という構造になっている。

 なので向こう側に行っちまえば実質、この二人は気にしなくていい。

 また、その廊下には飾り物だけの機能を持つ装備一式が荘厳な雰囲気を醸し出すためだけに置いてあるのでちょうど良い。

 ってな訳で遠慮なく利用してやるよ。


「…何か物音がしなかったか?」


「したよな。ちょっと確認して…。うわっ、取り付けが悪かったのかな?一体、倒れてるぞ」


「おいおい、傷とか付いてないだろうな?…目立った傷はないな。『せーの』で持ち上げるぞ!」


 そりゃあそうだ。

 クッションを敷いて倒したんだからな。

 じゃあ、ありがたく通らせていただきます。


 二人の騎士は倒れた鎧を元の位置に戻して扉を閉めた。

 まさか皇帝が忍び足で背後を通ったとは知らずに。

 そして向こう側に入った龍は即座に廊下を駆け抜けて、徐々にゆっくりと玉座の間に通じる扉を開ける。


 …流石に誰も配置されていないよな。

 ってか玉座の間だけあって広い。

 それなりの広さの体育館の半分ぐらいだ。

 まあ、はしゃぐのはこれぐらいにして場所は玉座の背後だな。

 …で、背後に回ってみたが魔法陣なんて何処に隠してあるんだ?

 ただ『感じ取れ。それでわかる筈だ』って書いてあるだけだ。

 それ以外は魔法陣の欠片が書いてあるだけ。

 あのね修行したからって、そう簡単にはできないのよ普通は。

 定番は絵画の裏だが…絵画そのものがない。

 それと背もたれの裏側…けどこっちもない。

 足元も見渡したがそれらしいものは見当たら…まさかと思うが玉座の下か?


 玉座を退かすと巧妙に隠されていた魔方陣を見つけた。

 恐らく意識しなければ確認できないタイプの魔法陣だな。

 そうでなければ床の模様と勘違いしてしまうぐらいだ。

 それと何故だか魔方陣が完成していない。

 所々、欠けている箇所が…ああ、これってそういうこと。

 創造(クリエイト)で記載された魔法陣の欠片を書いて完成だ。

 創造(クリエイト)で創ったペンなら個力解除と同時に消せるからな。

 お、魔法陣が光り出して玉座が元の位置に戻った。

 なるほど脱出したことがバレないよう直しに来る必要はないのか。

 ああ~、やっと喋れる!


 魔法陣から放たれた光は龍を包み込んで転移させた。

 また、龍は転移し終わると個力を解除して、影武者と書いた魔法陣を消す。

 龍は作戦通りに滞りなく脱出に成功したのだ。

 しかし、龍は肝心なことを忘れている。


「よっしゃ!脱出成功!だけど臭っさ!何処に転移したんだって下水道…」


 それは必然的に人気のない場所に転移してしまうことを。


脱出成功により、下水道に転移した龍でした。

次回はとりあえずお忍び観光しまくる話です!

後、久ぶりにあいつら登場させるかも?

それではまた次の話で!

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