184話 皇帝の器
かなり更新しなかったのでちょっとしたあらすじ解説します。
戴冠式を行うためにルシフェル大帝国にやってきた龍だったが夜に五王家当主が参加する食事会に出ることになった。
しかし、その食事会は龍の器を見極める食事会で…ってなことがあって今回のお話です。m(_ _)m
「先に言っておこう五王家当主は君が皇帝として即位することに反対している」
「ちょっと父上!?主が皇帝になるの賛成だって言ってなかった!?」
クラウスが話を切り出した所、ジェイムズが五王家当主が龍の即位に反対していることを言い放った。
また、レンは父親に裏切られ酷く驚いている。
「大人は嘘つきなのだよレン。まあ、当の本人は気づいていたようだがな」
「そうなの?」
「まあ、普通に気づくだろうよ。今まで空席だった玉座に『血筋』だけで決められた無能が座るんだぞ。嫌悪しない方が気色が悪い。で、ベルブゼラは代理皇帝だ。自分が治めている国を簡単に渡さないだろ。…ああ、こっちの口調の方がやりやすいんでね」
「それぐらいアヴェルからの報告でわかるわ」
…一応、アヴェルは味方でも敵でもない中立の立場か。
にしてもキースが今にも喉元に食らいつきそうな形相しているが大丈夫だろうな?
「では我々、一人一回だけ問いかける。そして全ての問いで我々を満足させろ。そうすれば君は晴れて即位できる。自己紹介の逆順で問いを出していく」
ってことはペオルからか。
最初っからハードル高そうだな。
「じゃあ、私から。あんたはどうやってこの国の経済を回すつもり?」
「全ての街道を整備する。経済を回すのはその後だ。例え経済の方を先にしても街道が廃れていたら、盗賊やら魔物やらに襲われたら終わりだ。物資がなくて地獄を味わった事例を俺は知っている」
言うまでもないがシエラのことだ。
仮に街道が整備されており、天使の止まり木まで難なく行けたら?
仮に街道が整備されており、天使の果実が市場に流通してたら?
そんなことを考えると俺はこの国の整備が行き届いていないと感じてしまう。
だから俺はこう答えた。
「…気に入った。街道で盗賊や魔物に襲われた事例は年に百件以上ある。良いね時間がある時にまた話そう」
「これでペオル家の賛成は得ましたよ主!…次は父上ですね」
「では私の問いはこうだ。君はこの国をどう導いていく?」
「全ての者は平等であり、発言権を持つ。例え農民でもスラム街に住む者でも政を行う権利を持つ。要は全ての国民が共にこの国の行き先を決めていくそんな国を目指している」
「…その精神、見事だ。皇帝は国の象徴であり、国民と共に国を作っていく者だ。仮に君が独裁政権樹立を宣言するのなら私はこの場で君を殺していたよ。やはり、龍君はルシフェル様の孫だ。あの御方も同じようなことを言っていたよ」
いや、当然のことを言ったんだけどな。
そうか爺ちゃんも同様の発言をしたんだ。
じゃあ、何でこの国は貴族が政治を行っているんだろう?
持っている力が大きいからかな?
「次は妾じゃな。妾は反対派だが、ちと皆の思うようなことではない。御主、即位したら勉学はどうするのじゃ?」
「まあ、転移の館とかを利用して、ルシフェル大帝国とユルグレイト王国を行き来します」
ルシフェル大帝国とユルグレイト王国って結構、離れているから列車では一日以上かかる。
そのため転移の館を利用するのは仕方がない。
要するに俺の勉学にあの嘔吐が付きまとってくる…。
「良い心がけじゃな!城内にユルグレイト王国への転移門を設置しておこう」
「シャルロッテは甘いなぁ」
「ん?何か言ったかグレン」
シャルロッテは蛇のような目つきでグレンを睨んだ。
グレンは先ほど言ったことを訂正しようしたが寸での所で引っ込めて、身震いしながら龍に問いかけた。
「お前は兵、まあ騎士共に何を求める?」
「帝国や俺のためではなく愛する者のために戦ってほしい」
「そりゃあそうだろな。自分のために死んだなんて思わなくてすむしな。お気楽なこった」
返答を聞いたグレンはふてぶてしい態度を取り始めた。
どうやら龍が皇帝になることを拒んだようだ。
しかし、龍はグレンの答えを聞くと呆れた口調で言った。
「何か勘違いしてません?察してくれると思って、言いませんでしたが言いますよ?」
「…言ってみろ」
「薄っぺらい忠誠心で戦場に立たれても目障りだ。それに国が滅びそうになっても逃げない騎士なんてどこに居る?仮に一介の騎士が『身も心もあなた様に捧げます』って言われても俺は全力で拒否するね。何の忠誠心もないクセに大それたこと言うなど気色悪い。雰囲気でわかるキースみたいな奴は歓迎するけどな。自分の身は自分で守る。テメェらは自分の大切なモンでも守ってろ」
そう龍が問いに対しての本当の答えを述べるとグレンは態度を改める。
この答えを聞いて、龍が皇帝の器に相応しいと思ったのである。
また、今まで五王家当主に噛みつきそうな勢いだったキースは満面の笑みを浮かべて先ほど退出した。
恐らく人目につかない所で号泣するのだろう。
「ああ、三人と同じ意見だ。俺はな自分のことを他人に守らす糞野郎が大嫌いなんだ。聞けばあんたは率先して、誰かを守るために戦っていたそうだな!このボンクラ息子から聞いてるよ。良いぜ俺もあんたについて行ってやるよ陛下!」
これで龍はクラウス以外の賛成を得た。
けれど油断はまだできない。
四人は賛成していても、一人が反対したら龍は皇帝になれない。
そしてクラウスは代理皇帝、難解な問いが飛んでくる筈だ。
「龍君、この質問は『はい』か『いいえ』で答えなさい。皇帝とは庶民とはかけ離れた身分だ。君の今ある暮らしが帰ってこないかもしれない。君が嫌がろうと私達は君を戦場に送り込み最前線で戦わせるだろう。一度でも玉座に座ったのなら最後までその定めを全うする意志はあるか?茨の道とは言い表せないほどの地獄が待ち受けるであろう。長くなったな最後の問いだ。」
長々と前置きを語ったクラウスは真剣な目で龍を見つめた。
そして龍は頷いて最後の質問を聞く。
それは今まで出されたどの問いよりも重みのある問いであった。
「それでもなお君はこの帝国の象徴になるのか?」
「はい」
「その言葉を聞きたかった。…今の君の顔は幼き日に拝顔したルシフェル様の御顔にそっくりだ。四人とも代理皇帝の時代を終えよう。明後日からは真の皇帝の時代だ」
「クラウスさん、今までこの帝国を護ってくださりありがとうございました」
「勿体ない御言葉です。…次は君の番だよ皇帝陛下」
この日、龍は本当の意味で即位の権利を得たのであった。
次回はとある御方を救います。
前は龍の直ぐ近くに居たあの御方です。
それではまた次の話で!




