174話 インフェルノの漁港
ということで帝都の漁港にやってきました!
後、合流はしませんが一人、到着します。
いったん目的地を変更して、馬車で移動するために乗り場にやってきた。
ちなみにこの馬車は帝都インフェルノの外には行きません。
その代わりに帝都インフェルノ内なら二百五十フェルを払うだけで何処でも行けるそうな。
で、漁港に到着しました。
「活気あるなぁ」
漁港では漁師達が獲ってきた海産物を運搬用馬車に積んでいる。
汽笛を鳴らして出港する船もあれば休憩に入るのか港に船を繋げている者も見られる。
「祝賀会とかあるしね。そのことで思い出した。明日の予定なんだけど龍は城内で過ごしてね」
「何でだ?」
明日も帝都中を回ろうと思ったのに。
「王の護剣も警備の確認とかで使われるの。まあ、簡潔に説明すると誰も龍を警護する人が居ないってこと!絶対に外に出ないでね!」
「わ、わかってるよ」
こりゃあ言うこと聞くしかないな。
でも、バレないのなら出ても…いや、アヴェルに気づかれたらこっぴどく叱られそうだから止めておこう。
明日は城下には下りずに城内を散策しようか。
…だが城内の散策は明らかに楽しい時間になるだろう。
けど改めて考えるととあれって俺の住まいになるんだよな?
ってことはいつでも城内散策はできるぞ。
…何とか脱出して街に下りられないかなぁ。
「あ、豪華客船が入ってきた」
「あれ客船じゃないよ。個人の所有物」
「どこの国の王様?」
「ちょっと待って…。ってあれユルグレイト王国よ!良く見なさい!左右の木々に囲まれた妖精の顔の紋章があるでしょ!」
「あら本当」
ユルグレイト王国は左右の木々に囲まれた妖精の顔の紋章を使っている。
左右の木々はもちろん、世界樹ユルグレイトのことだ
そして世界樹ユルグレイトに囲まれている妖精というのは王家の祖先ではなく世界樹ユルグレイトの主と昔から伝えられている世界樹の妖精らしい。
世界樹ユルグレイトの加護を受ける国、世界樹ユルグレイトと盟約を結んだ国、あなた様を脅かさないという意味があるらしい。
…実在しているのならば一度は会ってみたいな。
「…うん?ってことはあれに皆が乗っているのか?」
「いや、到着にはまだ早いからエレノア様だけだと思う。『ユルグレイト学園様は列車でお越しになられます』って来賓リストに書いてあったから」
「何その来賓リストって」
「来賓者の詳細が書かれた本。来賓者の移動手段、人数、宿泊される施設、所属している国、来賓者が持っているアレルギーや持病、ルシフェル大帝国との関係等々、様々な情報が正確に書かれているの」
来賓者リストは戴冠式に携わるルシフェル大帝国の関係者、全員に渡されている。
そのため戴冠式の時には龍のそばで護衛しているレンも持っている。
これはクラウスが事前に制作を進めていた物である。
「スゴいな。そんなの作ったのか?」
「ええ、戴冠式とは言えこちらはもてなす側でもある。一つの過ちがルシフェル大帝国の顔に泥を塗ることになる。だから文字通り、完璧にこなさなければならないの。おわかり?」
「あ、はい」
確かに戴冠式に参加する国の偉いさんに迷惑をかけたらそれだけで外交関係にヒビが入るよな。
食事会を終えたらルシフェル大帝国との関係の場所だけでも目を通しておこっと。
「…エレノア様を呼びに行くのもダメよ」
レンは船を見つめている龍にすね気味で伝える
龍がエレノアを呼びに行くのではと勘違いしているのだ。
「いや、呼びに行かない。俺の立場やエレノアの立場以前にこれは俺が望んだレンと二人っきりの観光だ。だからそんな事はしない」
「あたしと二人っきり?…そうなら良いけど。じゃあ、楽しみましょ二人っきりの初デート」
『初デート』、この言葉を聞いた瞬間に龍の顔は赤く染まり、恥ずかしいのか片手で顔を覆った。
そんな龍に笑顔を向けながらレンは無邪気に龍の手を引っ張っていく。
別に龍は『二人っきり』という言葉にそういう意味を持たせてない。
けど、自分に想いを寄せている少女が満面の笑みで言うのだから『二人っきり』に『初デート』という意味がくっ付くのは仕方ないのかもしれない。
晴れ渡る空の下で顔を青春の色で染めた少年と恋心を抱く少女。
船はまるで少女の想いを応援するかのように汽笛を響かせる。
そしてカモメは二人をからかうように世話しなく鳴いていた
なだらかな坂を青春の一頁と共に駆け上がるのであった。
まあ、そんなわけで初デート開始です(≧∀≦)
それではまた次の話で!




