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173話 レンの兄

レンの兄ちゃんの名前が出る話です!

…まあ、ほぼそれだけσ(^◇^;)

 先ほどまでテーブルに顔を伏せて寝ていた男を注意した料理人は慌てふためいている。

 何故なら彼はルークス家次期当主でルシフェル大帝国第六騎士団の団長だったから。

 更に目の前の少年は翌々日の戴冠式で主役を務めるノボル・インフェルノときた。

 何かヤバいと感じ取ったのか店長は直ぐさま看板をしまう。

 そして料理人を落ち着かせて目を輝かせながら龍達を見る。

 第六騎士団が訪れるだけで光栄なことなのに皇帝まで訪れた。

 料理で例えるのなら、飽きぬことない初めて知る二つの甘美な味を一気に口の中へと流し込まれたような感覚であろう。

 また、皇帝龍も今の状況に置いてけぼりにされて戸惑っていた。


「えっ?お前の兄ちゃん?」


「はい。兄のノア・ルークスです。気を抜くとだらしなくなるバカ兄貴です」


「えっとノアさん?」


「呼び捨てで構いません!」


 『呼び捨てで構いません』と頼まれてもこの方が言いやすいんだけど。

 というか周りの目線が痛い!

 別に従わせているとかそんなんじゃないから!


「…お咎めはしません。それに仕事で疲れて寝ていたって事はその疲れは国を護るために付いたモノだろ。それを咎める気はないですよ。まあ、公共の場で寝るのはどうかと思いますが」


「その寛大な御心に敬服と感謝させていただきます。そして国民の迷惑にならないよう以後、気をつけます」


 ああ、立ってくれた。

 あのままずっと跪かれていたら俺に悪いイメージが付きまとう所だった。

 そういえば第六騎士団なんだよな?

 ってことはあの時に居たのか。


「良かったねぇ。主の御心が寛大で」


「ノアさ」


 おっと呼び捨ての方がいいんだったな。


「ノアはシュトルツ騎士王国の国民を鎮圧する際にユルグレイト王国に来ていたんだよな?」


「ええ、現在、第四騎士団に所属しているアイザックが貪狼騎士団団長に操られて起こしたあの事件ですね。確かに私はその際に一部の団員達を引き連れて赴きました。市街地に赴いた故に陛下の御側には居りませんでしたが」


 ああ、やっぱりそうだ。

 じゃあ、あの時にノアの顔を見ていたら少しはレンに違和感を持てたのかな?

 …例を言おうと思ったがまた跪かれそうだから止めとこ。


「…では参りましょうか主」


「いや、久々の再会なんだしもう少し居ても」


「どうせ家に帰ったら付きまとわれるし良いですよ。それに仕事が優先です。バカ兄貴はほっといて結構」


 うわっ、本当に何も言わずに出て行った。

 …会計したいけど店長があの様子じゃなぁ。

 ああ、会計も自動人形(オートマタ)なんだ。


 龍はさっさと会計を済ましてレンの後を追いかけた。


「おい、本当に何も話さなく良かったのか?」


「どうせ本家に帰ったらずっと付きまとうに決まってるから良いの」


 ああ、これはうざったいと思っている時の口調だ。

 伊達に十年ほど一緒に過ごしていない。

 これぐらいの感情の変化は二人でもわかる。

 まあ、お兄さんの場合はあれだな普段かは会えない妹が帰ってきてテンションが鰻登りになってんだろう。


「というか兄ちゃんいたんだ」


「後、お姉ちゃんもいる。あたしは末っ子なの」


「確かに末っ子っぽい」


「それどういう意味?」


「そのままの意味です」


 恋の時の行動が何かと末っ子ぽかったからだよ。

 誰かに迷惑をかけるなど思いっきり末っ子だ。

 レンってしっかりしてるが本当はおてんばなのか?

 それはそうとずっとなだらかな上り坂だな。

 で、この反対側に目的地の海だろ?

 ちょっと時間がかかりそうだ。

 そりゃあ飛ぶことも移動手段の一つになる筈だ。


 帝都の坂は緩やかで時折、平地の箇所も見られる。

 そのため疲れはしないが運動にはなる。

 ちょっと盛り上がった山を切り崩して造ったのかな? 


「なあ、バスみたいなモノってないのか?」


 別に飛んで移動すれば解決するがアヴェルから『目立つような真似はしないでください』と釘を刺されている。

 そのため飛んでの移動はできない。

 …そういえば目立ったなあの店で盛大に。


「…なら馬車乗り場に行ってみる?」


「うん、そうしよう」

 

 馬車乗り場があるなら先に言ってくれ。

 海を見たらそれで一日が終わりそうな気がしてた。

帝都インフェルノの地形は大ざっぱに説明すると円錐ですが周辺は至って平たんな地になっております。

さて、次回は帝都インフェルノの漁港に行く話です!

それではまた次の話で!

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