153話 影武者の創り方
影武者の使い方を教わります!
ああ、生物じゃないです。
ルシフェルから創造の扱い方を教わり、龍は浮遊させた剣を動かしている。
そして自分なりの使い方も探っている途中だ。
龍が地下室に入ってから半日が経過した。
地下室に入ったのは昼過ぎのため地上では見回り以外の者は寝ている。
まさかディルフェアン連合が別荘に攻めてくるなど龍は思ってもいないだろう。
だいぶ慣れてきた。
自分の手足だと思えば楽に動かせる。
試しに目の前に豆腐のように柔らかい壁を出して、足でそれを斬るように剣を動かす!
「…こんなものか」
壁は斬り刻まれた。
続いて的を出して、武器を槍に変えて突く!
次は斧で薙ぎ倒す!
「上出来だ。これなら遠近両方で戦えるだろ?」
「そうですね。でも、まだまだです」
「ああ、まだ基礎だ。そういえば龍には影武者が居るのか?」
影武者って俺と似ている人を雇って俺の代わりに動かすっていうあれか?
…居ないんじゃないか?
居たらマスコミもあまり、騒がないと思うし。
それに数週間前までは『次期皇帝です』と世間に公表してなかったしな。
「多分、居ない」
「なるほど、それなら影武者の創り方を教えよう」
「いや、それって生物でしょ?」
「武器を持たずに動かすヤツの応用さ」
ああ、人形を創って動かすのか。
というかそれはもはや、
「影武者じゃなくね?」
「…まあ、分身体みたいなものだ。影武者は帰ってから雇え」
「爺ちゃんは雇ってたの?」
「我は雇っとらんよ。自分の代わりに誰かが死ぬなど御免蒙る」
やっぱり、爺ちゃんには居ないと思っていた。
だったら俺も雇わない。
例え周りに勧められても断る。
俺も爺ちゃんと同じ考えだ。
「なら、俺も断る」
「やはりな。さて、話を戻すぞ。まずは自分と同じ姿をした人形を創る。後は自分の声を出す魔導具を取り付けてより生物らしさを出していく。これで完成だ」
「主な用途は?」
「例えば一対一の状況を二対一にしたい時、これは止めておけ。はっきり言って役に立たん」
何で役に立たないんだ。
別に何のリスクもないだろ?
…ああ、なるほどそういう事か。
「自分と同じ動きをするから?」
「そうだ。それに頭も使う。後は玉座の間とかでかな?」
「何で?」
「報告してくる奴が裏切り者で殺られそうになった時がある。あの時のリティーの警告は賞賛に値する」
自分にも起こりそうな事を聞いてしまったぁ…。
それじゃあ堂々と玉座に座れなくなる。
一応、周りを警戒しながら話を聞く癖でも付けるか?
…そうしたら聞き逃すかもしれないな。
用心だけはしておくか。
…気を取り直して、自分と同じ姿をした人形を創って自分の声を出す魔導具を創るんだっけか?
おそらく、スピーカーの事だろうな。
よし、できそうだ。
鏡で確認しながら創り、スピーカーを喉に取り付ける。
次にリアルな質感を出してと…。
「こんなものか?」
「動かせるか?」
「…問題ない」
「…問題ない」
うわっ、気持ち悪いな。
自分と同じ姿をしたリアルな人形が同じ動きと声を出すとか。
夢に出てきそうだからもう、消しておこう。
「何故、消した?」
「夢に出てきそうだったから」
「確かに不気味だったな。それよりも良く難なくできたな」
「やることを頭で纏めたら普通に」
「我より成長が早いではないか。これは将来が楽しみだ」
へえ、爺ちゃんより成長が早いのか。
普通は頭で纏めないのかな?
戦闘中にはそんな暇がないからか。
じゃあ、この癖は直さないと。
瞬時に創りたい物を創れるようにしないとな。
「もう、ほとんどの事は教えた。思っていた以上に創造の使い方を理解しておる。後は磨き上げろ。最後には試験を行うからな」
「試験って何の?」
「我と本気の勝負だ」
最後に爺ちゃんと本気の勝負か。
つまり、勝てたら終わりで良いよな?
一発合格できると良いのだが…。
次回は時間をすっ飛ばして地上の翌日から始めます!
そしてディルフェアン連合がそろそろ、到着しますね。
それではまた次の話で!




