141話 音色が響き渡る森で
今回はエレノアがメインの話です!
肝試しします。
次はエレノアと交代なのだが何故か指定された場所に向かうようになった。
さて、時間計測は交代してからではなく前の番が終わった瞬間に始めるから急がないと。
ああ、居た居た。
…神社の隣に列ができてる?
何かあるのか?
龍は狛犬のそばに立てかけてあった看板を見る。
それには『肝試し大会』と書かれており、最後まで行って戻ってきたペアには狛犬キーホルダーがもらえるそうな。
「狛犬キーホルダーって何だ?」
「こっちです龍!見てください!このキーホルダー!」
見たらわかるよ。
観光名所がないこの村で作られてる狛犬キーホルダーでしょ?
何の意味もな…と思ったら何か書いてある。
『ありがたくも有名になった谷山村の恋愛運アップの狛犬キーホルダー』って。
いつの間にそんな風になったの?
「神獣ですよ!幸運の神獣のキーホルダーです!」
あれ?エレノアの言葉とこの看板に書いてあることが一致してないんだけど?
もしかして、
「狛犬って居るの?あっちの世界」
「ええ、極東の島に生息しています」
顔つきは怖いけどあれが極東の島に生息しているのか。
一度でいいから見てみたい。
…火とか吐きそう。
「それでは並びましょ」
肝試しに参加するために俺達は列に並んだ。
順調に列は進んでいき俺達の番になったが絶え間なく悲鳴が森から響いてくる。
神社の横の敷地をお化け屋敷風にしてるようだが、そんなに恐ろしいのか?
「それでは次の方どうぞ!」
二人は森の中へと入っていく。
なるほどなるほど、整備された道を矢印の方向に進んでいくと。
作りは普通のお化け屋敷とは違って雰囲気で驚かすタイプか。
もちろん、街灯なんて場違いな物は置かれていない。
灯りと呼べる物は月明かりと矢印の看板のみ。
スタッフが待機して驚かす系でもあるのか。
スタンプを押してもらえば狛犬キーホルダーがもらえると。
「龍は怖くないんですか?」
龍の腕にしがみつき震えながらエレノアは訊く。
「俺は次期皇帝だぞ。怖がってどうする」
なーんて強気に答えたが普通に怖い。
しかし、魔族なら怖くないのでは?
いやいや、数ヶ月前まで人間だと思いこんでた小僧に何を仰る。
けどエレノアがいるから怖くない。
不思議な気分だ。
何でだろう?
「ああぁぁぁぁぁ!!」
「いやああぁぁぁぁぁ!!」
「大丈夫大丈夫、怖くない怖くない」
「うん」
ああ、こりゃあダメだ。
エレノアがダメダメモードに突入している。
こうなると普段のエレノアじゃなくなるかな。
ま、そうした元凶は皆が云うには俺らしい。
「…きっとあそこの影から出てくるに違いありません。次は恐ろしい恨みを持ったゾンビです」
「安心してくれ。ゾンビが出てきても俺が守る。エレノアが俺の手が届く場所にいる限り、俺は必ずエレノアを守るよ」
「恨めしや~」
龍がエレノアに勇気づけていると木の影から落ち武者の姿をしたスタッフが飛び出してきた。
「ううっ、ありがとうございます。けど私だって龍を守れますよ」
「う、恨めしや~」
「おお、そうかい。なら最後まで行けるな!俺を守るんだろ?」
「はい!もちろんです!」
しかし、二人が会話に夢中になっていて無視された。
というかその空間に存在しているモノとして認識されていない。
「…驚いてくださいよ」
そして二人はゴールまで辿り着きスタンプを押してもらった。
エレノアは狛犬キーホルダーをもらい早速、喜んでいる。
「おかげで達成できました。ありがとうございます」
「喜んでもらえて良かった」
「それと大好きです。あなたのそういった所。本当は怖がってたの知ってるんですよ」
別れ際にそんなこと言うか!?
ああ、何かヤバい。
この状態で恋と回るのか!?
ダメだダメだ!
これはこれ!それはそれだ!
気を引き締めて行け!
いや、気を引き締める必要はあるのか?
…とりあえず行くか!
次回で夏祭り篇は終わります。
それとそろそろ章も変わるので例のヤツ、更新します。
それではまた次の話で!




