132話 海では時折、かなづちの方が有利
泳ぎます!
そして教えます!
誰に?
引きこもりにです。
ああ、疲れた~泳ぐ前にすんげぇ疲れた~。
怒ってくれたら楽だったのに謝れたら余計に落ち込むっつうの。
「はぁ」
「何かあったのか?」
「何も」
着替えを終えたのか女子組が駆け足で砂浜まで下りてきた。
「女子組到着!」
「おお、似合ってるな千草」
さて、女子達も下りてきたし泳ぐとするか。
…個力で深いとこまで潜って貝でも採取してこようかな?
「ありがと。で、龍は何か言うことないの?」
「何が?」
「『何が』って五人に『可愛いぜ』とか『似合ってる』とか『太陽より眩しい』とかさ!」
…そういうの言わなきゃなんないの?
別にお前らは彼氏彼女の関係だから当たり前だけどさ。
俺達は友達同士だから言わないのでは?
まあ、そういうことなら言うけど。
「…似合ってるぞ五人共」
「ロマンがないねぇ~。じゃあ!泳ごう!」
「私とヘイスが護衛をしていますのでレン様は皆様と泳ぎに行ってください」
「ではお言葉に甘えて」
皆が楽しげな表情を浮かべて海へと走っていく中、ビーチパラソルの下に一人だけ誰かが座っていた。
ドラゴニュートのシエラである。
シエラは何年も屋敷に籠っていたので感覚ではわかる。
しかし、泳ぎ方がわからないのだ。
それに気づいた龍が戻ってきてシエラに手を差し出す。
「教えてやる」
「いや、大丈夫」
「良いから来い」
龍はシエラの手を握って海まで連れて行く。
シエラは励まされながら海に足を入れる。
「まずは海水に慣れるとこからな」
「初めて浸かるけどそこは大丈夫」
「じゃあ、さっそく泳ぐか?」
「…やってみる」
そして二人は腰が浸かる場所まで歩いて行く。
浮き輪に乗りながらそれを見ていた千草は笑みを浮かべる。
もちろん、陸斗がその浮き輪を押している。
まるで何処かの国の女王様だ。
龍はいきなりシエラの腰に腕を回す。
「ちょっと腰失礼」
「いきなり何!?」
「創造。この方が創りやすいんだよ」
そしてちょうどいいサイズの浮き輪を創った。
「ビート板いる?」
「怖いから龍の手がいい」
それもそうか。
初めて海で泳ぐんだし怖いよな。
誰しも未知のことに挑戦する時は内心ビクビクするものだ。
「了解。それじゃあ浮いてみようか」
「うん」
シエラは頬を赤く染めて龍の手を掴み浮かぶ。
実はかなづちだったことを少し喜んでる。
こうして龍と間近で触れ合うことができたからだ。
「おお、浮けるじゃん。次は交互に右足と左足を上下に動かしてみよっか」
「こうかな?」
「そうそう、その調子だ。引っ張るからそのままの感じで感覚を掴んでいけ」
「わかった」
龍はシエラを引っ張りながら後ろに下がっていく。
シエラは徐々に徐々に感覚を掴んでいき自信が満ちていき笑い出す。
さて、これが異性の友達同士ですることなのであろうか?
「龍の奴、教えるの上手いな。ところでレイは猫なのに水は大丈夫なのか?」
「そういえば俺様も気になってた」
「猫は綺麗好きなのよ。ところでエイジ、さっさと鼻血を止めなさい」
エイジは日差しにやられて体温が上がったのか女子の水着を見て興奮したのか鼻血を出していた。
後者だった場合、確実に陸斗に締め上げられる。
というかもうされてる。
「そのまま出血死するか!!」
「出血死の前に窒息死する!レイも見てないで助けろ!」
「少しは反省しなさ~い」
エイジの奴、またシバかれている。
シエラの泳ぎは成長していき浮き輪なしでも浮けるようになったな。
だが本人は楽しさのあまりか消したことに気づいてないがな。
さあ、ゴールはすぐそこだ!
次回!まだ泳ぎます。
そしてトラブル発生します。
それではまた次の話で!




