13話 始まった猛特訓
猛特訓開始!
そして龍の個力、創造が発動します!
フィアナとの決闘を控えた俺は学園長とシアン先輩に手伝ってもらい猛特訓をしている。
初めは俺がどれだけ剣を扱えるか調べる事になった。
猛特訓に付き合ってくれているのは学園長である。
今更ながら親父に朝っぱらから剣の稽古をされていたのはこのためだったのかもしれない。
それにしても学園長は強い。
実際、学園長は盾を使って戦うと言っていたが剣だけでもなかなかのものだ。
つける隙がなく攻撃と防御のバランスが取れている。
これも経験の差ってものかね?
「休憩しようか」
「はい」
とりあえず休憩に入った。
「そういえばフィアナには俺が魔王ルシフェルの孫って伝えていないんですか?」
「伝えていない。君が魔王ルシフェル様の孫だと知るとフィアナはおそらく嫌々、君と接するだろう。そのためにあえて何も伝えずここまで事を運ばせた。決闘をして君の事情を知ればフィアナも納得するだろう」
ほう、この猛特訓も決闘め全て学園長の予定通りの計画なのか。
だから快く猛特訓に付き合ってくれてるのね。
…是非とも学園長とも決闘したい!
まあ、この猛特訓が学園長との決闘みたいなものか。
「あの子は悪事を決して許さない。何が何でも自分の嫌なモノは否定する。そんな性格なの」
龍は思わず息を吹き出す。
そしてお腹を押さえて必死に堪えながら笑った。
何故ならシアンが言うフィアナの説明が自分の知る女の子の特徴によく似ていたからだ。
「そんなにおかしいか?」
「いえ、幼馴染みとよく似ていたものでつい…。確かにその性格の持ち主はこの方が手っ取り早いですね」
その幼馴染みとは恋のことだ。
確かにフィアナと恋の性格はよく似ている。
龍が思わず笑い出してしまうのも無理はない。
「そうだろ。さあ、再開しようか!」
「お願いします!」
「お父さん、そろそろ個力で」
「それもそうだな。龍君、先制攻撃をしてきなさい。私の個力正義を見せてやる」
個力、この世界に来てから何回も聞いた単語、そして最も引っかかり気になっている単語だ。
無論、先ほど知った俺の個力創造の事も。
名前からして何かを創り出す個力だというのはわかる。
「わかりました。行きます!」
龍はジェイスに先制攻撃をした。
ジェイスは盾でその攻撃を防ぎ、そのまま龍を押した。
何も変化がない?
「はっ!」
ジェイスは龍が眼帯を付けている方、つまり左を狙い剣を振るった。
龍は右に飛んで避ける。
さっきより威力が上がってる!?
「さすがに眼帯の方は対策済みか」
「いえ、見えてますよ。外すと痛いので」
龍は眼帯を外して自身の目が見えていることを確認させた。
小学校の頃より痛みだしたこの左目はある意味では変わった特徴の一つでもある。
だがジェイスはその目に対して予想外の返答をする。
「おお、綺麗な紫色をしているなぁ」
何故か『綺麗な紫色』と答えたのである。
龍の目は紫眼ではなく白眼、十六年間も鏡で見てきた龍が間違える筈がない。
「え?俺の目は白眼ですよ」
「ん?紫だよ。シアン、鏡で見せてやりなさい」
「了解。ね、紫色でしょ?」
「え?え!?はぁ?色が変わってる!どうなってんだ!」
驚くべきことに龍の目は白眼から紫眼になっていた。
紫眼といっても普通の紫ではないまるで宇宙のような黒に近い紫色で少しだけ明るい。
まるで小規模の宇宙が目の中にあるようだ。
俺の体にファンタジー現象が起きてる!?
魔族だっただけでも衝撃的なのにこの仕打ちはないだろ!
変わるなら金色にしてくれや!
両目統一できるのによ!
「恐らく魔素の影響だろ。それかもう一つの新種の個力のせいかそのどちらだ」
「他に変わったところないですよね」
「心配するな。残念なことにない!」
それは良かったけど『残念なことに』って言ったか?
俺としてはこれ以上、面白現象が起きてほしくないんですけど!
「まあ、とにかく今のがお父さんの個力正義です。受けた攻撃を二倍にして跳ね返します。ダメージを受けるたびに防御上昇し、初めは攻撃、後半になると防御に徹する。まさに攻防一体の個力」
「要するに一撃で仕留めなければいけないと」
「そういう事だ。さぁ遠慮なくかかってきなさい!」
それから適度に休憩を挟みながら約二時間ほど続いた。
「全く…攻撃が通らなく…なってる」
「今の私はダイヤモンド並みの硬さだぞ!」
それ人間じゃねぇ~。
倍以上に打ち込んだから疲れた~。
「それじゃあ個力の訓練をしようか」
「お願いします」
「創造は無生物以外の物を何でも創り出す事ができる個力。そして魔王ルシフェル様が云うには『この個力はまだまだ進化する』と伝わっている」
進化?個力って進化するのか?
体の成長と同様に個力も成長するものなのか?
「まあ、とにかく目を閉じなさい」
「目を?」
「そうだ。そして自身の体を駆け巡る魔力を感じるんだ」
「…駆け巡る魔力?」
『体を駆け巡る』ってことは血液みたいな感じなのか?
とは言っても脈に手を当てなければ血液なんて感じられないからなぁ。
いや、『駆け巡る』のならば『満たされている』のかもしれない。
川を探すのではなく湖を探した方が手っ取り早い。
確かに深呼吸をしながら段々と集中していくと体に何が纏わり付いてる感じがする。
けど別に不愉快な感じはなくて、それが当たり前みたいな感じだ。
それに外部ではなく内部にも存在して、そこから溢れ出ているようだ。
「ありました」
「それが魔力だ。そこから別の流れを要するに個力を探しなさい。その流れの奥に個力がある」
えっと今度はこの流れから個力を見つけ出すと。
…限りなく一つに近い枝分かれした川を探す感覚かな?
言われてみると魔力の流れが重複している気がする。
…後はこれを手繰って目的地を目指すだけ。
「多分、掴めました。どうすれば使えますか?」
「腕を前に出し、個力の名前を叫ぶ!それで個力は発動する!」
「…創造発動!!」
何か起こったのか?
龍はそっと目を開けた。
そこには先ほどまでなかった大きな壁があった。
正真正銘、創造が成功した瞬間である。
「これが創造…スゲェ!」
「試しにもう一度、やってみなさい。一度、発動させると解除するまで名前は呼ばなくていい」
さっきは壁を作るイメージでやったから今度は…これだ!
個力を発動させると爆発音が聞こえた。
次も成功した!
俺が作ったのは炎である。
「これはスゴい。四大元素の一つ、炎すら作り出すとは。今から感覚を掴むがてら様々なことを試してみなさい」
何度も物を創ってみて、だいたいのことは理解した。
大きさの制限は大きくて五十メートルぐらい範囲の制限も半径五十メートル辺りだ。
おそらく大きさと半径は同じなのだろう。
そしてイメージさえすれば無生物以外なんでも出せる。
威力もイメージ次第で変わり、出せる数は…今から調べるとしてこれさえ使えば家も作れるんじゃね?
とにかく便利な個力だとわかった。
まあ、言いたいことは、
「これ、どうやって消せばいいですか?」
「解除したら消えるだろう」
学園長の言う通りにしたら一瞬で創った物が目の前から消えた。
さてと決闘まであと三日、頑張るとしますか!
決闘は後少し先です。
それではまた次の話で!




