123話 少年の咆哮
なぜか知らんがこの話だけ一番、試行錯誤してたなぁ(´-ω-`)
一応、フラグ回収の話に直接つながりますからねぇ。
さて今回は龍がガチギレする話です!
血が頭に上ると目の前の光景がよく見えなくなり標的のみが鮮明に映る。
誰もが経験するであろう生物の純粋な怒り。
他者の声は聞こえず標的を倒すことだけに全神経を捧げる。
『怒る』を『キレる』とはよく言ったものだ。
本当に何かが切れたように己の身を省みずに暴れる。
要するに全ての生き物は猛獣だ。
動物も鳥も虫も魚も爬虫類も人も魔族もエルフもありとあらゆる全てが粉うことなき猛獣である。
それが生物の性なり。
「…もう、大丈夫だ。後は任せろ」
(奴隷!?いつの間にリーダーを!…そんなこと考えてる暇じゃない!)
「捕らえろ!捕らえてサンドバックにしろ!」
「サンドバックになるのはテメェらだ」
龍は一番後ろに待機していた不良の目の前に現れた。
他者から見たら一瞬の出来事だが龍達にとっては普通のこと。
しかし、彼らにとっては何が起こったのかすらわからない。
そして龍は不良を三人、無力化させる。
「残り十六人」
不良は二十人の徒党を組んで境内にいる。
しかし、龍が無力化させた不良を抜くと十六人だ。
それでも一対十六、人力では負けているが武力ならば遥かに龍の方が上である。
(こいついつの間にこんな力を!?)
「次!」
スタンガンを持った不良が龍に襲いかかり命中させる。
だが龍は気絶したふりをして両脇に腕を通される形で拘束させる。
そして別の不良が殴ろうとした瞬間にすり抜けて拘束していた不良にその攻撃を浴びせる。
更に殴ってきた不良に頭突きを喰らわせてこれもまた無力化させた。
残り十四人!
無駄な時間は使いたくないから個力で吹き飛ばす!
「吹き飛べ!!」
「何で宙に浮いてんだ!?」
龍は創造で竜巻を起こして不良四人を宙に浮かす。
また、死なない程度の高さで落として鎖で拘束する。
続いて氷柱を複数本出現させた。
(どうなってんだこれ!?俺は夢を見ているのか!?そうだ!夢に違いない!夢だ!夢だからあいつはあんなことができるんだよ!)
氷柱は不良に当たる瞬間、砕け散る。
散らばった氷の欠片は不良達に付着して凍結した。
通常では起きる筈のない出来事に不良達は困惑するが冷静な不良の二人はまだ動けないシエラとアリスを人質に取る。
「来るならこいつらを殺すぞ!」
「そうだ!来てみろ!」
「あっそ」
それも無駄なこと。
その行為は龍にとっては二人に絡まった蔦を取るのと同義だ。
二名の不良は遠距離から電流を浴びせられた。
なお、人質にされていた二人には分厚い絶縁体の壁で守られているので無傷である。
そして電流は逃げ惑う残った不良達も巻き添えにした。
残るは一人、龍を虐めていたガキ大将だけ。
「…残り一匹。あの時と同じ立場だと思うなよ。今回は俺も全力で相手をする。遠慮なくかかってこい」
「舐めてんじゃねぇ!這いつくばって死ねや!」
「正面からの殴りは隙が大きい。普通に対処できる」
呆気なくガキ大将は攻撃を避けられて鳩尾に攻撃を喰らう。
そして腹を押さえてその場に崩れ落ちる。
「さあ!あの時の威勢はどうした!口だけか!?テメェの言った通りに殺してみろよ!殺したいんだろ!?だったら全力で殺してみせろ!できねぇのか!?さあ!言ったからにはやってみろ!立て!俺がテメェに受けてきた仕打ちはまだこんなもんじゃねぇぞ!」
ガキ大将は立ち上がりゆっくりと拳を振るう。
赤ん坊のように腕を振るうだけの抵抗だ。
対して龍は防御もせずに顔面を押さえつけて固定した。
ガキ大将は泣きながら両腕を垂らす。
「頼む…謝るから…許してくれ…」
「謝るなら最初からすんな。被害者からすれば謝罪は無価値なんだよ」
「頼むから…」
「イヤだね」
龍はもう一度、殴ろうとするが誰かに止められた。
不良ではない捕らわれていたアリスとシエラだ。
「龍それ以上はダメ!」
「そうだよ!それ以上やったら貪狼騎士団と同じになっちゃうよ!」
「…けど!」
「シエラ達は無事!それで終わり!」
「次に拳を握ったらボクは龍を殴るよ!」
怒りの行き場を失い龍はガキ大将の顔から手を離す。
フラフラとよろめきながら下がり石畳の上に座り込む。
そして行きすぎた暴力を撒き散らした事を後悔して泣き出した。
「何やってんだ俺…。あれほど言いながら自分が失うなんて…」
仮に二人に止められてなかったら何をやっていた?
電流の時も下手したら死人が出ていた。
もっと冷静に解決できなかったのか…。
「大丈夫大丈夫だから落ち着いて」
「龍は何も失ってない。シエラ達がいるから」
「ああ…ああ…」
今宵、自分が犯した事を後悔しながら少年は涙を流す。
それを二人の少女は泣き止むまで傍らで支えていた。
一方、龍が最初に倒した不良達のリーダーは物静かに起き上がっていた。
彼は逃走をせずに何故か境内の最奥に向かっている。
そして注連縄が付けられた鉄扉の前で止まった。
「この扉を開かれたらあの野郎もも終わりだ。村の爺と婆が言うにはこの奥には化け物が封印されているらしいしな」
ガキ大将がこのグループに所属していた理由の一つとして、このグループのリーダーが谷山村の出身だったから。
そのため彼も古くから村に伝わる伝承を聞いている。
一般人ならばただの伝承として切り捨てるが彼は熱狂のオカルト好きだ。
要するにこの伝承を本気で信じていたのだ。
また、運が悪いことにこの伝承は実際の出来事を題材としてる。
この神社には江戸時代初期の谷山村を壊滅に追いやった怪物が封印されている。
そして此度の饗宴の締め括りとして目覚めた。
「…翔龍!!」
次回!まあ、悪い妖怪と戦います。
相手は九尾です。
それではまた次の話で!




