10話 理不尽な大人の事情
遂にこの章のメインヒロイン登場!
赤髪のお転婆娘その名はフィアナ!
ちなみにツンデレ設定です。
「重大な話って何ですか…」
「それはだな」
もうこれとんでもない事を言う雰囲気だ~。
「男学園のクラスが満席だから女学園に転校してくれ」
ああ、なるほどそういう事ね。
…へ?女学園に転校って言ったか?
いやいや、それはない!絶対にない!
「もう一度、お願いします」
念のためにもう一度、聞くことにした。
「女学園に転校してくれ」
「ちょっと待てえぇぇぇぇ!」
予想を遥かに裏切った!
何で女学園に転校なんだ!
「気持ちはわかるが満席でな」
「だからって何で女学園に!」
「一席だけ空いてるんだよ」
「何で男女わかれているんですか!」
「その方が色々と都合が良いし、何より大樹が幹別れしてるからな。それにどちらかというと女子はあんましこの学園には入らん。たいていは普通の学園に入る。だから席が空くことがあるんだ」
あかん…精神が保たんかもしれん。
「事情はわかりましたが俺は男ですよ。女装でもさせるんですか」
「心配はいらん。陛下の遠い親戚、という事にして才能があり特別入学させた設定になっている」
王族の遠い親戚って貴族みたいなもんだな。
それよりも何かやらかしたら王家の迷惑になる!
「ちなみに一部の人は龍の正体を知っている。例えば担任教師と王国中枢の関係者とかがな」
馴染めるか…無理だな!
あり得ることは一つある!
女子の誰かに殺される…。
マジでそれだけ勘弁だ!
「何か困ったことがあれば風紀委員長の私に連絡してください。風紀委員会室か二年の教室に居ます」
「現在進行形で困ってます」
「そう。…慣れれば大丈夫。ファイト」
あかん、早々に見捨てられた。
それでも今んとこ頼りになるのはシアン先輩ぐらいか。
二年で風紀委員長を務めているんだ。
「シアン、龍を寮に案内しなさい。その後で教室に戻れ」
「了解。さあ、私の手を握ってください」
…またもや嫌な予感。
「先に訊いておきます。こっから飛び降りるであってますか?」
「その方が速いので」
マジかよ。
高所恐怖症になりそうだ。
俺は怖がりながらもシアン先輩の手を握った。
シアン先輩はそれを確認すると俺を引っ張ってバルコニーから飛び降りる。
とりあえず感想を言おう。
「滞空時間、長っげ!」
「そのまま玄関まで行きます」
龍とシアンは徐々に地面に近づきながら寮に向かった。
そして寮に着いた途端に龍は立て札を見て青ざめる。
まるで命に関わるような状況に陥ったかのように。
「どうかした?」
寮は中世ヨーロッパ風の洋館をかなり縦に伸ばした感じの作りだ。
十階建ての寮が六つ、おそらく男子寮と女子寮、そして学年ごとに別れているのだろう。
そんな事はどうでもいい俺が言いたいのは、
「何で寮まで女子の方なんだ!」
「席が無いと寮の部屋もないのです」
「そういう作りなの?」
「ええ、そうなります」
ああ、何かすげぇ理不尽。
自室に居ても安心できねぇよ。
「龍君の部屋は七階の右端の部屋です。この通信機が鍵になっています。それと明日の朝、迎えにきますので生徒が全員、登校し終えた頃、玄関で待っていてください」
「わかりました。それではまた明日」
「良い学園生活を」
しかし、鍵にまでなってるとかスゴいな。
紛失しないよう気をつけよっと。
「そういえばあの事を伝えるの忘れてた。…まあ、良いや。それにあの子に言えば良いし」
シアンは何かを龍に伝えないまま授業に戻った。
「ここか」
この出っ張っている台の上に置けば良いのか。
「開いた」
龍はドアノブを握ったが回さなかった。
何故ならこんな事を考えているからだ。
こういった学園モノってドアを開けた瞬間、だいたいは一緒にこの部屋で暮らす女子が着替えてたり、開けた瞬間にハプニングが起こるよな…。
そもそもこの部屋って俺専用だよな?
いや、俺専用の筈だと思う。
…考えても仕方がない勇気出して開けろ!
龍は勇気を出してドアを開けた。
だが、その部屋には誰も居なかった。
「心配してた俺がバカだった。…さて、明日まで何するかな。‥あいつらの存在忘れてた」
龍は慌ててリュックから魚を取り出した。
そう翔龍がふざけて入れた太刀魚と秋刀魚である。
「腐ってない夏なのに」
そういえばこの国って何か涼しいよな。
北にあるのか?
「とりあえず…冷蔵庫にぶち込んでおくか」
…やっぱりリュックが魚臭い。
水が染み込んでないが臭いがなぁ。
これは洗うしかないか。
マジで厄介な事をやってくれたな。
「そういえば三日間、風呂に入っていないんだったな」
洗うついでに風呂に入るか。
…良かった普通に風呂場がある。
洗濯機も…使えそうだ。
龍はリュックを洗濯機に入れて、その間に風呂に入ることにした。
一方その頃、残り一限だけだった授業は終わりシアンは風紀委員会室で資料を整理していた。
「お姉ちゃーん!」
ドアが勢い良く開いてピンクよりの赤毛の少女が飛び込んできた。
「もう少し静かに入ってくれない?」
ジェイスのもう一人の養子、フィアナである。
シアンとは血が繋がっている。
「あたしの部屋、もう用意できたってホント?」
「できたわ。これで部屋を壊すの何回目よ」
フィアナは部屋を良く壊す。
故に修復するまで何度も部屋を移動しているが今回は修復できないぐらいまで壊れたので移動する形になった。
なので部屋を壊す可能性があるとして保護者兼学園長のジェイスがあらかじめ相部屋にしなかった。
「しょうがないじゃん!私の個力、扱いにくいんだから」
「だったらお姉ちゃんの部屋に来る?」
「それはマジ勘弁!お姉ちゃん、うるさいもん!」
「それ本人の前で言う?」
そしてフィアナは良く部屋を散らかす。
それに対してシアンは整理整頓を良くするため学園に入る前はフィアナをよく叱って部屋を片付けさせていた。
「ごめんごめん」
「七階の右端の部屋よ」
「了解!それじゃあまったねー!」
フィアナは窓から飛び降りて寮に向かった。
「全く何で窓から出てくかな…。しまったフィアナにも伝えるの忘れていた」
また、そんな整理整頓をするシアンは何かと良く忘れやすい性格をしている。
なので常にメモ帳を持っている。
そう龍の予想はある意味、当たっていたのだ。
次回、龍にハプニング発生!
そしてフィアナが部屋をよく壊す理由もわかります!
それではまた次の話で!




