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双星のクリエイティス  作者: 透坂雨音


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第10話 星衛士就任、断固阻止、断固拒否



 部屋の中には、大事な大事な巫女が二名。

 そして、不審者然とした名前も分からない男が一名。

 この状況、改めてよく考えなくても結構まずいのではないだろうか。


 そんな人間の侵入をたやすく許した聖樹ヒースの危機管理はいったいどうなっているのか。

 旅に出る前の不穏因子が多すぎる。

 幸先の悪さに、気が滅入りそうだった。


 ともあれ、話は未だに続いている。


 何で友達を巫女付きにしたくないのか、そう思っていれば、男の口から続きが語られていく。


「巫女の存在意義は、世界をより良くするための願いを叶えるというもの。だから巫女が本心からそれを望んでいる場合、組織としてもそれを蔑ろにはできない。そのカードだけは切るな。ナナキを巫女付きの星衛士ライツにするな。絶対だ。いいな?」


 今までの軽そうな雰囲気がなくなって真剣な表情で、難しい言葉を並べてきたと思ったら……。

 ご丁寧に説明までして何度も念を押してくる。


「な、何なんだよ、何でそんな事言うんだよ。ナナキってやつとお前、友達なんじゃないのか?」

「友達だからこそ、だ。ほっぺ叩かれた御嬢さんは分かるだろ? あいつは巫女に対してお綺麗な幻想を抱いてるんだよ。理想通りの巫女様じゃなかったら、幻滅してどんなとんでもない事をやらかすか分かりゃしない。そんな事になったら一大事だ」


 友達だと言うなら、普通応援してやったりかばってやったりするのが普通だろう。

 だが、友達だからこそ、止めねばならないものもあるのかもしれない。


 しかし、一方的に表面的な事しか知らない俺達では、それだけの言葉でちゃんとした答えを出せるはずがなかった。


 モカの方を窺ってみるが、そっちはそっちの方で目を閉じて何やら考え込んでるようだ。


「モカはナナキの事嫌じゃないよ。良い人みたいだし。ルオンちゃんは嫌いみたいだけど、私はナナキさんが星衛士さんになっても良いって思う。ううん、なってほしいと思う」

「本気か? モカ」


 信じられないがそれはモカは至って真面目だった。それが正直な意見のようだ。

 俺にはさっぱりだが、モカなりに考えて判断した事なのだろう。


 それを聞いてて、来訪者の男から返ってくるのはため息だ。


「お前達は知らないからそんなこと言えるんだよ。あいつ怖いぞ。ちょとネジ外れてるぞ。鳥肌たまに立つぞ、信じられないくらい。これと決めた事に対しては理想高いからな」


 しみじみと言われた言葉には、実感がこもっていた。

 それは巫女に対しての事を言っているんだろうか。

 なぜか別の事について言われているような気がしてならない。

 

 でも、はっきり言ってそいつの心配は杞憂だろう。


 あんな事があったのに、俺が巫女付きになんてするわけがない。

 うまくやっていける自信がないのに、一緒に来てほしいだなんて言えるはずがないだろう。


 確かに可哀そうだっていう気持ちもある。俺なんかのせいで、とも。

 クビとか大げさだとはっきりそう思っている。


 けど、そんな理由で巫女付きにしたりなんかしたら、他の真面目に頑張ってきた者達に申し訳なくなる。


「その様子なら、大丈夫そうだな。まあ、あいつの実力は本物なんだけどな」


 惜しむような言葉に被さる様に部屋の外から複数の足音が聞こえてくる。

 もう、そんなに時間はないようだった。


 扉が開け放たれる。

 部屋の中に入って来た星衛士達に捕まって、来訪者は連行されて行ってしまう。

 

 残された俺達は、聞かされた話について顔を見合わせて考え込むしかない。


「変な奴だったな、言ってる事はいまいちよく分からんとこもあったけど」

「面白い人だったね。名前聞いておけばよかったな」


 訂正、ちゃんと考えて気にしてるのは俺一人だけだったようだ。

 あと、今更だが名前聞いてなかった。




 連行されて友人と仲良く一緒に牢屋に放り込まれた、フラトはため息交じりに愚痴をこぼす。


「やれやれ、エアリ特士長が巫女付き引き受けてくれたら良かったんだけどな。今回はたぶん、他の奴じゃ駄目だわ。聖樹ヒースにスパイが入りこんでるわ、逆にこっちはそれを見抜けてないわ。はっきり言ってお前以外じゃ、荷が重すぎるだろ。上の連中は伝統を重んじるとか何とかいって、巫女が二人なのに今まで通り護衛士は一人とか言ってるし……、おいおいこんなんで大丈夫かよ。なあ、まったく」


 フラトがそう長々と喋ったにも関わらず、牢屋にいるもう一人からの返答は帰ってこない。

 室内には静寂が満ちるのみだった


「……ったく、ほんとお前って機嫌悪いと愛想ないよな」 


 会話のキャッチボールを諦めたフラトは牢屋に備え付けられている、背中がたくなる様な硬さのベッドに寝転がった。


「はー、やれやれ。これからどうなるんだかね」


 やるべき事はやったとばかりに、目を閉じるフラトにナナキは口を開いた。


「怪我は?」

「ん?」

「巫女様の状態は、俺が叩いた怪我はどうだった」

「あれからどれだけ経ったと思ってるんだよ。もうとっくに治ってる。ぴんぴんしてた」

「そうか、聞けて良かった。女の人に手を上げるのはさすがに悪いと思ったからな」

「ま、時期に関係なくなるさ。式さえ過ぎればな」


 その日さえ終わってしまえば、もう何をしても無駄なのだから、と。

 フラトはナナキへそう言った。



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