7 劇薬
「うーん……やっぱりだめかぁ」
アリア師匠に魔力について教えてもらうことになったのが、三日ほど前だ。あれから体調も回復し、ようやく問題なく歩き回れるようになってきた。
いま、俺が見ているのは自身のステータスである。そして何がダメかというと……魔力操作を取得することができていないのだ。
まぁあの戦闘後だけあり、ステータスに変化があったことはあったのだが。これが現在の俺のステータスだ。
名前:ソウジ・アカツキ
年齢:17歳
種族:ヒューマン
称号:異世界からの来訪者
職業:刀術家
筋力:245(+40)〔15△〕
敏捷:252(+40)〔42△〕
知力:174〔24△〕
魔力:300
器用:130
運:60
スキル:鑑定Lv.2(Up! )刀術Lv.3(Up!&New!)脱兎(New!)縮地(New!)
パッシブスキル:気配察知Lv.1(New!)
エクストラスキル:創造神の加護
筋力が少し、敏捷が大幅に上昇。他には知力が上がっている。敏捷が上がったのは、走り回ってたからだろうし、筋力が多少上がるのもわかる。
「知力か……実際これが変わるとどう影響があるのかわからないんだよな」
おそらく作戦を考えた影響で上がったのだろうが、そんなに簡単に上がって良いのかと思ってしまうところではある。
そしてそれ以外には鑑定のレベルが上がったり、縮地、脱兎などの新スキルが出てきている。
それらの注釈を見たところ移動系スキル……リザードマンとの戦闘時に感じた、空間を縮めたような移動が縮地で、逃げる時に使用した急加速こそが脱兎であるようだ。
次に一番気になるであろう刀術スキルについてだが、レベルが上がったのは見ればわかる。しかし、さらにNew!という文字が踊っていたのは、どういうことだろう。元々取得していた訳だし、新たにという訳では無い。そこで刀術スキルを注視してサブウィンドウを開いてみる。
「……なるほどね」
そこにはこう書かれていた。
「刀術」 Lv.3
極東の剣術。刀と呼ばれる特徴的な武器を使い、相手を断ち斬ることに特化している。西洋的な剣と違い、熟練させることで様々な技術を会得出来る。
派生スキル:〈骨断ち〉〈横一文字〉〈真月〉〈一刀両断〉〈牙突〉
「派生スキル……そういう意味でNewだったのか」
それぞれを注視して見る……のだがサブウィンドウは出ず、代わりにその技のイメージが伝わってくる。頭の中に三人称視点からみた自分?がその技を繰り出す様子が浮かび上がっていて……中々に気持ちが悪いものだ。
「というか……そもそもスキルってなんだ?」
スキル……つまり技術、技、そういったものであることはわかる。しかし、縮地にしろ、脱兎にしろ、刀術関連のスキルにしろ、意識せずとも使えたのだ。否、使えたのではなく、ほぼ同じことが出来たということだ。ならば、スキルの存在意義とは……?
「それはねー!」
「うぉ……!」
思考の海に潜り掛けた時、背後から聞こえた声に思わず硬直してしまう。
まぁそれが誰かというと、彼女しか有り得ないのだが……。
「驚かせないでくれと言ってるじゃないですか……アリア師匠」
「はっはー! こんな面白いことやめられるわけが無いでしょー?」
そう、声を掛けてきたのは魔法の師匠であるアリアだ。見た目的にもおそらく俺より年下だと思うのだが、師匠呼びだけでなく敬語まで強制されている。教えてもらえるのは有難いのだが……。
こんな感じで既に三日だ、どんなことに付き合わされて来たかは想像に難くないだろう。
「で? なんの話だったっけ?」
「はぁ……スキルのことですよ」
「あぁ、そうだったね」
因みに彼女には鑑定ができることは伝えてある。聞けば、日本のラノベで見たように鑑定が珍しいというか訳ではなく、程度の差こそあれ、一般に普及しているそうだ。しかし、暗黙の了解として鑑定持ちは無闇矢鱈に人の情報を見てはいけないとなっているそうだ。
……当たり前のことではあるのだが、あくまで暗黙の了解である。つまり、やろうと思えばやってもバレないのだ。事実、悪事に使用するのではなければ大抵見逃されるそう。
「スキルのことなんだけどね、意識して使うことで若干の威力上昇がある、程度の認識でいいよ。簡単に言うと補助がある……のかな?」
「なんで疑問系なんですか……」
「私自体もあまり詳しく分かってないから。まぁとにかく深く考える必要はないね」
「なるほど……」
今度使う時は、なるべく意識して使うようにしよう。というか、そうしないと使えないと思う。この前は無我夢中だったし……。
「納得したかな? じゃあ昼食にしようか」
「うっ……はい」
「あ、今露骨に嫌な顔したね?」
「い、いやしてないです……」
この三日でよくわかった事として、アリア師匠は料理が下手だと言うことが挙げられる。というか料理と呼べるのだろうか? という疑問が首をもたげる程である。
「今日は、ベルルの実とアケルトの実、それに数種類の薬草のジュースだよ!」
「よりによって、ジュース系ですか……」
彼女のメニューにはパターンがあり、何かしらの動物の素焼き、果実と薬草のジュース、虫系を焼いたものなどがある。素焼きはまだ大丈夫だ。肉の味がするだけだし、食べられないこともない。虫系も同様に見た目さえ気にしなければ不味くなく、食べられる。
しかし、ジュース系だけは駄目だ。少し……いや、はっきり言ってクソまずい。口に含むと同時に、口全体に強烈な苦味が広がり、時折、酸味や渋みが暴れ回るのだ。こんなものを美味しく飲める人間の気が知れない。
「はい、どーぞ!」
俺が如何にしてこのジュースを回避するかに脳をフル回転してる間に出来上がってしまったらしい。
満面の笑みでジュースを差し出してきている。
くっ……仕方ない。ここはこれしかない!
「あー! なんだかとってもお腹が痛いなぁ! これは食事を控えた方がいいかもなぁ!」
その場に蹲り、お腹を抑えて苦しみ出す。どうだ! あえて苦しんでいる様子を見せることで要求を通りやすくする。名付けて『風邪の時の母親作戦』だ! コレならいけるはずっ!
「ならちょうど良かった! 今回使った薬草には腹痛に効く効能を持つものもあるんだ!」
なん……だと!? 戦慄の思いと共に彼女を見れば、そこには先程以上の笑みとソレに反比例するように全く笑っていない瞳があった。
「飲めば良くなるよー」
「……はい」
その瞬間、俺は敗北を悟った。仕方ない……敗残兵は否応なく従うのだ……。
「さっさと……飲め!」
「うぼぁっ!?」
躊躇する時間すら与えられず、彼女に身体を抑えられ、口内にジュースを流し込まれる。
「……!! ……!!?」
口内を襲うあまりといえばあまりな味の暴力に、俺は声にならない叫び声をあげ、転げ回る。
意識が……とぶ……!





