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43 ランクアップの条件




「はぇー......おっきいですね」

「そうだな」


 そう言ってリリルが見上げるのは、ギルドマスターの部屋の扉だ。

 ギルドマスターの性格を考えればこんな華美に装飾を付けないと思うのだが、以前気になって聞いたところ『俺も嫌なんだが、せめて扉だけでも体裁上は整えなきゃならん......らしい』だそうだ。らしいってなんだって感じだが、ミライアさんに押し切られたそうだ。

 ここも冒険者ギルドである以上、貴族からの依頼なども受けることがあり、その応対は場合によればギルドマスター自身が行うそうだ。当然それはこの部屋でだ。そういう時、適当なものだとなめられてしまうそうだ。


「ギルドマスター、ソウジさんたちをお連れしました」

「通してくれ」


 扉を開けて中に入ると以前と同じ、ではないか。前は座っていなかったんだし。いきなり襲われたし。

 今回は椅子に座り、こちらを見ていた。


「前はすぐに退室して申し訳ない、今日はソウジについて話したいことがあってな......」


 ? 俺に? 一体何のことだろうか?


「たしかお前、精霊と契約したって言ってたな?」

「ああ、そのことですか。運良く、なのか分からないですけど、気が付けば契約することになってました」

「気が付けばってお前な......」


 実際、そうなのだから仕方ないではないか。

 俺自身まさか精霊と契約することになるとも思ってもいなかったし、実質今でも実感が湧かない。


『なんだ、(オレ)ならここにいるぞ?』


 ......実感湧いたわ。いきなり脳内に声が響くことほど怖いものはない。

 突如として、声を掛けてきた紅炎に頭の中で止めてもらえるように頼む。

 

(いきなり声を出すのは、止めてくれないか?)

『ほう、ならどうすればいいのだ。常に姿を見せていろということか?』


 その揶揄うような口調に、俺は牙を剥き出して笑う紅い大虎の姿を幻視した。

 常に姿を見せるというのは、トラブルのもとにも成り得るし、何より魔力を食うのでしたくない。


(そういうことじゃないけど......。少し声のボリュームを落とすだけでも違うだろ)

『ふっ、まぁ善処することにしよう』

(ったく......)


 いきなり、顔を顰めた俺を見て、ギルドマスターが不思議そうな顔をしたのだが、たいして気にすることでもないと思ったのか気を取り直したように訪ねてきた。


「それでなんだが、ここのギルド、というよりかはだな、冒険者ギルドという組織全体で精霊と契約しているような冒険者というのは少ない。それこそ、A級でも一握りだ」

「......それで?」

「要するに、俺たちはお前のような優秀な人材を遊ばせておく余裕はないというわけだ」

「えと、それはつまり......どういうことですか?」


 要領を得ないな。何を言いたいのかいまいち理解できない。

 ギルドマスターはそんな俺の様子を見てか、頭をガシガシと掻き回して大きくため息を吐いた。


「要するにだ、お前のランクアップをしたい」

「ランクアップ、ですか?」


 冒険者登録してからそれほどたっていないハズだが......。

 そんなに早く昇級できるものなのか?


「そうだ、たしか今はEランクだったか? そのランクだとな、出来ることが限られてんだよ。上の依頼が受けられないのもそうだ、そして重要なのが"指名依頼"だ」

「指名依頼? それはこの前のフロストベアのやつじゃ......」


 あれはギルドマスターから指名されているんだから指名依頼だろう。

 でも、今のランクじゃ指名依頼は受けられなくて......あれ?

 俺が困惑した様子をみせているとギルドマスターが首振って否定し、アリアに水を向ける。


「違う違う、あれは俺からのもので非公式だったし、名義上はアリア向けだ。なぁ?」

「ん? ああ、そうだよ。依頼としては私に向けてになってるからギルドカード確認してなかったの?」

「ああ、そんな機能もあったな......すっかり忘れていた」

 

 前回の時は、ドタバタしていたこともあってその辺を何も確認していなかった。

 仕方ないだろう、忙しかったんだし。と、誰にいうでもなく言い訳をする。


『......我が聞いてるがな』

(うるせぇ)


 紅炎がちょっかいを掛けてくるが、意識的に彼奴の声をシャットアウトする。これはわりとウザイときがある為その対策として編み出した、聞こえてはいても頭の中に入れない方法だ。


「理解しました、それで俺はどうすれば?」

「お、話が早くて助かる。お前さんには指名が受けられるランク、つまりCランクまで昇級してもらいたい」

「Cランクですか......ってCランク!?」

「あん? 何をそんなに驚いてんだ」


 いやいや、驚くだろうよ。普通にDランクに上げてから刻んでいくものだと思っていた。

 というより、これじゃますます目立ってしまう。


「目立ちたくないです......」

「はっ! 今更だろうよ、初めの試験でグランから認められてEランクになった時点で手遅れだし、いまや

Aランクのモンスターを倒した期待の新人様だぜ? 諦めろ」

「ぐ......はい」

「てなわけで、ただでお前さんのランクを上げる訳にはいかない」


 何が〝てなわけで〝だ......。何も話が伝わっていないではないか。

 まぁ、言ってることは理解できるのだけど。


「普通にあげてやりたいとこなんだがな、それじゃギルドの上のやつが納得しやがらねぇ」

「はぁ......」

「そこで臨時作としてお前さんにはある依頼を受けてもらう」

「依頼......何かの討伐系ですか?」

「いや、全くの別物だ。"ある貴族の護衛"をしてもらいたい」

「え゛......」

「そう嫌そうな顔するな、これも上位冒険者には必須のことだ。我慢してくれ」


 貴族の護衛って......一番出来る気がしない。

 嫌味なやつとか、その辺の対応は本気で嫌だぞ。我慢しないと行けないなら断りたいぐらいだ。

 断る......? その手があったじゃないか!


「あの、ちなみに断ることって......?」

「出来ん。精霊持ちのお前さんを野放しにすることがダメなんだ。失礼な話だが、俺もそういう立場なんでな......悪意あることはしないってのは痛いほど分かってる」


 はい、そうですよネわかってたわかってたよ。

 ......ま、そりゃそうだわな。俺だって生前(死んでないけど)、いきなり常に銃を持っていることを許可されているやつが出てきたら恐怖を感じるだろう。少し違うかもしれないが、言いたいことはわかるだろう。


「分かりました、その依頼受けます」

「おお、そうか! ......すまないな」


 目を伏せて。申し訳なさそうに頭を下げるギルドマスターに俺は笑って答える。


「いえ、大丈夫です。むしろ望むところですよ!」

「そうか、ならこの依頼の後にも難易度の高いやつを......」

「いえ、それは遠慮しておきます」


 恐ろしいことを提案されるが、即座に首を振って拒否する。

 そんな俺にギルドマスターは苦笑して話を続ける。


「ま、それはさておきだ。そんなに心配することはない、差別をしているような貴族じゃないからな」

「そうですか、ひとまず安心です。てっきり〝俺の言うことを聞け!" って感じのかと」

「おいおい......たしかにどうしようもないやつもいるが一部だけだ、安心しろ」


 む、俺の価値観だと貴族なんてものはそういうイメージなんだが。

 まぁ実際に貴族なんてものを見たこともあったこともない。イメージだけで決めつけるのも良くない......か。

 ここで、ふと思い出して隣に座って静観しているアリアとこちらを気にしつつも卓上の焼き菓子を頬張るリリルのことを見る。

 ぼろぼろと溢しまくりだ......。


「あの、ギルドマスター」

「おう、どうした」

「アリアたちはどうするのですか?」

「「ん? ボク?」」


 いきなり話題に挙げられたからか、少し驚いた様子で首を傾げる二人。まるで姉妹のようにも見える。

 そう、俺の依頼に彼女たちは連れて行ってもいいのか、それともひとりで行かなければならないのか、そこが気になる。

 アリアはまぁ、Bランクだから問題ないとして問題はリリルだが......。


「ん? いいぜ? アリアはもちろん狐の嬢ちゃんもな」

「え、いいんですか?」


 ギルドマスターは考える様子すらなく、即答する。

 その軽い様子に少し気が抜ける。


「おう、まぁ一応依頼主には話しておくが問題ないはずだ」


 それでいいのか、ギルドマスター......。


「まぁ、分かりました」

「おう、よろしく頼むぜ」


 そうして、俺たちは息つく暇もなく次の依頼に向けて動き始めるのだった。


「あ、もちろんしばらく後の話だ。流石に休憩したいだろうし、その時になればまた連絡させてもらう。

「......」

「なんだよ、その目は......」


 はい、なんでもないですよ。いい感じに纏めたのになんて思ってません。


『動き始めるのだった......キリッ。くくく......!』


 頭の中に遠慮のない紅炎の笑い声が響いていた。

 


 

 


これにて第一章は終わりとなります。あと、いくつかヒロイン視点などの幕間話を投稿したのち二章が始まります。どうか皆さん、これからもどうかよろしくお願いいたします。

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