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42 後日談とギルドマスターからの呼び出し


「はい、こちらがギルドカードになります」

「ありがとうございます!」


 そう言ってミライアさんは俺の時のように銀色のカードを手渡す。

 大きな声で感謝を述べてそれを受け取るのは一人の少女。

 その頭には黄金色の耳がピコピコと揺れている。

 

「よかったな、リリル」

「はい、これでボクも冒険者の仲間入りですね!」


 そう、今回冒険者登録を行ったのは俺たちが救ったゼオドーフ村の少女。俺たちに着いてくると言って聞かなかった狐人族の女の子、リリルだ。

 初めて手にしたであろう、ギルドカードに感動が隠せないようでそれを手にクルクルと回って、周囲の人間に嬉しそうに見せて回っている。

 冒険者たちも微笑まし気に彼女のことを見ている。


「えっと、リリルは一番下からになるのか」

「はい、通常の登録となりますので、Hランクからとなります」


 リリルは優れた格闘家だった母親から、格闘術を学んでいただけあって中々の強さを持っている。

 しかし、それでも幼く経験の少ない彼女は特別試験に合格できるほどではない。よって普通に冒険者となることになった。

 まぁそれでも彼女は納得、というより気にもしていないようだし、一からでも俺たちに追いつくと息巻居ているくらいだ。それに俺たちの依頼についてくるわけだし、すぐに成長していくだろう。


「お! 嬢ちゃん、冒険者になったか!」

「はい! 頑張っていきたいと思います!」

「がっはっはっ! ええ心意気だ! その調子で坊主を追い越してけ!」


 大きな笑い声が響く。

 見れば、俺の背丈ほどもありそうな大剣を背負った壮年の男がリリルに話しかけていた。


「あれは......ちょっと行ってくるわ」

「はいはい、わかりました」


 ミライアさんに一言断りを入れると、その場を離れ彼らの元へと向かう。

 ――――その時、彼の後ろでは二人の少女が談笑していた。


「ったく、甘いんだから。あれぐらい問題ないのに......」

「ふふっ、嫉妬ですか、アリア?」

「ばっ! そ、そんなのじゃないよ!」

「ふーん? そうですか?」

「何さ......?」

「いいえ、何でもありませんよ」


 受付に凭れ掛かるミライアが、カウンター傍で不満げな顔をする少女――アリアを揶揄う。

 嫉妬しているのかと聞かれ、アリアは顔を赤くし、言い返すがその態度でモロバレである。

 一方、相対するミライアは余裕の表情でニヤニヤと彼女の顔を覗き込んでいる。


「っ! もういい!」

「あらあら......」


 そんなミライアにアリアは不貞腐れた顔でそっぽを向く。

 それを見て、ミライアは向こうで話しているソウジたちを見ながら苦笑を漏らす。

 

「でも、まぁ、初めての妹分みたいなものなのでしょう。いいのではないですか?」

「年下なら私がいるじゃない!」

「だって、アリアはソウジ君のお師匠なんでしょう? それなら妹分は違うと思うけど......」

「むぅ......」

「なに? リリルちゃんのこと嫌いな――」

「――そんなわけない! むしろ可愛いから好きだよ!」

「そ、そう......」


 嫌いなのかと尋ねられ、アリアは食い気味に否定する。

 これにはミライアも面食らったようで少したじろいでいたが、苦笑すると一言アリアへと返す。


「なら、仲良くやりなさいな」

「はぁい......」


 渋々といった様子でアリアが頷く。

 そしてそのまま彼らのところに向かう。

 ――――少し、時間は遡る。


「ボクがお兄ちゃんを!? 無理ですよぉ!」

「ん? そぉーか......お前さん、ソウジにホの字だな?」

「な、ななななっ!?」


 男に何事かを呟かれ、リリルは顔を赤く染めて泡を食ったように慌てる。

 俺は、そんなリリルたちの元へ辿り着き、今も笑う壮年の男へと声を掛ける。


「おいおい、あんまり絡むなよ? ただでさえあんたは強面なんだから......」

「お、来たかソウジ!」

「お兄ちゃん!」

「ああ、来たぞ。ところで、怪我は大丈夫なのか、ナザース(・・・・)?」

「問題ないさ、俺はAランクだぞ!」


 そう鼻息荒く、理由になりえないことを言うのは『剛剣』の二つ名を持つ男、ナザース。

 年齢不相応な肉体とその大剣一つで戦い、未だに現役の歴戦の冒険者だ。

 彼は俺たちが戦ったフロストベアとは別の上位種、クリムゾンベアの討伐に実質一人で赴いていた。そしてあっさりとはいかないまでも、大した手傷を負うことはなく倒してしまったらしい。

 俺たちが街に戻った時、ギルド前に紅い巨熊の死体が転がっていたびっくりしたものだ。しかも、聞けば時空魔法を持つものがいなかったからか、ナザースはこれを引き摺って街まで帰ってきたというではないか。どれだけ規格外なのかと呆れざるを得なかった......。

 

「そういや、ソウジ、お前一気に有名になったみたいだな」

「ああ......まぁな」

「俺ももう一体いるとは思わなかったんで戻ってきたとき焦ったが、お前らが行ったと聞いて安心したよ」


 そうなのだ。

 俺たちがあのフロストベアを倒して戻ってきてからというもの、瞬く間にそのことが街中に広がってしまった。なぜか「新人の冒険者がAランクのモンスターを倒した」という形でだ。

 いや、事実そうなので間違ってはいないのだが、問題は何故同行していたBランク冒険者ではなく、新人が倒したということを知っているのか、ということだ。このせいで俺はどこへ行っても声を掛けられるようになってしまった。


「なんだよ、その妙な信頼は?」

「俺は人を見る目はあるつもりでな、お前らなら大丈夫だと思ったから大丈夫というわけだ」

「はぁ......」


 ニヤリと笑って自信ありげに言うナザース。

 思わず呆れにより、ため息が漏れてしまう。

 横から軽く服を引っ張られ、何かと振り返るとそこには上目遣いでこちらを見つめるリリルの姿があった。


「じ、実際倒したんですから! ボクもお兄ちゃんは凄いと思います!」

「うっ......でもお前を死にかけさせたし、倒せたのは紅炎のお陰みたいなところあるし......」

「はっ! 自信持てばいいじゃあねぇか! 精霊と契約したのだって誰でもできることじゃあねぇ。お前の実力だろう」

「そ、そうだな!」


 ナザースには、精霊と契約したことは伝えてある。

 最初は驚かれたがこんな感じで祝福してくれていた。

 そんな彼の励ましを受けて、立ち直ったところで後ろから声を掛けられる。


「ソウジ君、そろそろ時間だよ?」

「あ、ああ」


 見ればアリアが立っており、ミライアさんもいるようだ。

 実は依頼を終えた後、ギルドマスターに報告に行ったのだが、ことの詳細を聞くや否や、少し席外すといって調べ物を始めてしまった。

 俺たちは報告の途中ではあったがその時は退室し、宿へと戻ったのだ。

 そして、今朝、宿のほうにギルドからの呼び出しが来ており、俺たちはその要件で来たというのだが、ついでにリリルの冒険者登録を済ませておいたというわけだ。

 時間だというのは、ギルドマスターの準備ができたということだろう。


「じゃあ、行きましょうか」

「はい、じゃあまたな、ナザース」

「ああ、嬢ちゃんもアリアもまたな」

「はい!」

「うん、また後でね!」


 軽くナザースに挨拶をして、立ち去る。

 一体、なんの要件で呼んだのだろうか......。

 

 

 

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