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39 フロストベア討伐戦・終

暫く空いてしまい申し訳ありません。

今日からは毎日投稿を続けていきたいと思います。

「ここからは俺たちの反撃だ」

「ウガァァァッッ!!」


 俺の言うことを理解したわけでもないだろうが、激高したように吠えるフロストベア。

 焼け爛れた右腕を氷漬けにして巨大化。そしてそのまま攻撃してくる。


「ちっ」


 相当な威力を持っていることが見ただけで分かる。

 避けるのでは間に合わないと判断し、刀を添えて攻撃の軌道を逸らす。

そうしてそのまま、身体を捻り首元を狙う。


「ガァッ」


 だが、いつまでもやられているフロストベアではない。刀を健在な方の腕で叩き落とし、瞬時に俺から距離を取りながら幾本もの氷の矢を放ってくる。


「紅炎」

『おう』


──────精霊魔法・"穢れなき炎壁"


 小さく呟き、紅炎へと魔力を送る。その瞬間、俺の前に炎の壁が生まれる。

 飛来してきた氷の矢はそのまま呑み込まれ、音を立てて蒸発してしまう。 

 

「ふっ!」


 そしてそのまま炎壁を壁として利用し、その脇から飛び出す。


――――――強化魔法Lv.8 脚部強化

――――――縮地


 今まで以上に膨らんだ魔力のおかげで強化系の魔法も段違いの効果を見せる。

 一瞬のうちに相手の懐へと肉薄することが出来た。


「グァッ!?」


 フロストベアは突然目の前に現れた俺に困惑した様子を見せるが構う必要はない。

 

――――――刀術Lv.6 炎華


 刀へと魔力を溜め、一閃する。

 腹、腕、脚......一瞬のうちに三か所を斬り伏せる。

 大きく怯んだところを狙って飛び上がり、どうしようもない急所、首を狙い一閃。


「咲け......炎の華よ」


 刀を鞘に納めた瞬間、フロストベアの傷口から炎が噴き出す。


「グォォォォォッ!」


 これこそこの刀の特性だ、魔力を込めて斬ることで攻撃対象を時間差で燃やすことが出来る。

 紅炎と契約したことにより俺たちの魂はつながった状態になった。

 故に、俺の魂の一部である霊魂器『無銘』にも紅炎の魔力が混じり、刀が進化したんだろう。

 振り返るとフロストベアは炎に包まれ、大きく悶え苦しんでいる。

 後はもうその命を絶つだけだ。


「すぅぅぅ......」


 深く腰を落とし、左手でゆっくりと鍔を押し出す。右手は軽く柄に触れている状態。

 足の指一本一本で掴むようにして地を踏みしめて地面を蹴って飛び出す。


――――――刀術Lv.6 居合・渦潮


 腰の捻りを利用して鞘から引き抜き、そのまま勢いを乗せて一回転。

 その瞬間、意識は何十倍にも引き伸ばされ、世界がゆっくりとしたように知覚される。その世界の中で、俺は刀が肉を捕らえ、引き裂いていく感触を生々しく感じ取った。

 急激に世界が戻ったかと思えば、俺の体は横を通り過ぎていた。そして気付いた時にはフロストベアには首から上が存在していなかった。

 

「終わった、か」

『ああ、終わっただろう。取り込まれておったあやつの子(・・・・)が解放されておるからな』

「え? それってどういう......」


 何やら意味深なことをいう紅炎だが、最後まで問うことが出来なかった。


「そーうーじーくぅーんっ!」

「ガフゥッ!?」


 横から思いっきり何かが飛びついてくる。

 疲労していたところにこれだ、やっぱりというかなんというか俺はそのまま倒れ伏してしまう。

 

「いてて......」


 体を起こしてみればアリアが俺の腹に顔を埋めていた。


「何するんだ――」

「――ひぐっ......うう、えぐ......」

「!」


 どうやら泣いているようで、慌ててしまう。


「あ、アリア? どうした? 俺なんかしてしまったか?」

「ひぐっ......ち、ちが......ぐすっ。違うの、ソウジくんが無事だったから安心しちゃって......。あの時、ほんとにダメかと思ったの」

「俺は......」


 心配、かけてしまってたんだな。あの時とはおそらく俺がリリルに助けられたときのことだろう。あの時は流石に死んだと思った。悔しい話だがリリルがいなければここにこうして立っていることもなかっただろう。紅炎と契約することもなく、アリアが倒され、リリルも村の人たちも死んでしまっていたのだろう。

 だいぶ収まってきたもののいまだに涙を浮かべるアリアの頭をそっと撫でる。


「ふぇ......?」

「心配かけてすまなかったな」


 できる限りの笑顔を意識して微笑みかける、彼女のことを安心させられるように。

 その瞬間、アリアの顔がどんどん赤くなっていく。


「......不意打ちなんて卑怯だよ」

「え?」

「なんでもないっ!」


 何事かを呟いたように思えたのだが尋ねると何故か怒られてしまった。

 また何かしてしまったのだろうか。


『......主、流石にそれはないぞ』


 頭の中に心底呆れたような声音で紅炎が呟く。

 

「紅炎、何がだよ?」

『言ってもわからんだろうさ』

「むぅ......」 


 やれやれと首を振る紅虎の様子が目に浮かぶようだ。

 とりあえずさっさとここの始末をしてしまうか。リリルのこともほったらかしだからな。


「ほら、アリア、離れてくれ。片づけるから」

「じゃあ私はリリルちゃんのこと見てくるね」

「ああ、頼む」

 

 ステテっと音が聞こえそうな調子で走っていくアリアを見送って、俺はフロストベアの元へ行く。


「改めてみるとやっぱデカイな」


 それもそうだろう、3m近くもあるのだ。今でもよく、こんなものを倒せたものだと思う。


「血抜きは……今はいいか、とりあえずディメンションバッグにしまっておこう」


 軽く水魔法で血を洗い流し、風魔法と紅炎の制御する炎魔法で温風を起こし、乾燥させる。

 泥や血で塗れた体毛が元の綺麗な青さを取り戻していくのは中々壮観だ。

 ある程度乾燥したところで、手を触れディメンションバッグへと格納する。魔力量が増えたおかげでかなり余裕があるように思える。


「さて、と」


 周囲を見渡し、片付いたことを確認するとリリルのもとへと向かう。

 どうやらリリルはもう目を覚ましているようだ。


「あ、お兄ちゃんっ!」

「おう、リリル。もう大丈夫なのか?」

「うん! 何処もおかしくないよ!」


 良かった、これで何か後遺症があるようだったら村の人たちに顔向けできやしない。

 見た限り、血色もかなり良く、元気そうだ。

 そばにいるアリアにも声を掛け、片付けが終わったことを伝える。アリアは大きくため息をつくと、顔を上げ笑顔を見せる。彼女なりに気を張っていたのだろう。


「じゃあ、村の人たちに教えてあげなきゃね」

「ああ、今も不安だろうからな。早く安心させてやりたい」

「うん、それはそうと......」

「ん?」


 あれ、何か雲行きが怪しくなってきたぞ。

 背筋に悪寒が走り、本能が今すぐ逃げろと警鐘を鳴らす。これはミライアさんの時と同等、いやそれ以上の圧力......!

 振り返らないようにしつつ、その場からの脱出を試みるが後ろから肩を鷲掴みにされる。どうやら、逃げらないようだ。


「お兄ちゃんって何かな?」


 鬼神だ......まぎれもなく良くない気配だ。

 当の本人から弁明があればアリアも勘違いしようがないだろう。

 そう思い、きょとんとした様子のリリルに助けを求める。

 

「いや、なぁ、特に深い意味はないよな、リリル?」

 

 急に話を振られた様子のアリアは困惑した様子を見せる。

 それでもなお助けを求めて、懇願した目で彼女を見つめると何かを思いついたようでニヤリと笑った。

 

「リリル、さん?」

「んーとねー、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ? ボクの大切な、ね?」

「ぐっ......!」


 頬に手を当て、思案気な様子を見せたかと思えば一転、満開の笑みを見せて火に油を注ぐ発言を宣った。

 しかも、最後に頬を上気させつつ、流し目のオマケつきだ。

 それを見たアリアはわなわなと震えていたかと思うと猫のように髪を逆立てて、飛び掛かってきた。


「やっぱりっ! 幼気なこんな娘に手を出したのかぁぁっ!」

「誤解だぁ!」

「あはははっ!」


 俺たちの様子を見て笑い声をあげるリリル。

 どうやら俺の可愛い妹分は小悪魔属性を持っているようだ。

 だが、まぁ、こうして三人揃って笑っていられてよかった。アリアに追いかけられながら、そうしみじみと思うのだった。



 


 



 

 


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