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25 炎の鍛冶屋と防具作成

 

 おっす、おらソウジ! 今日はアリアに連れられて防具を造りに来てっぞ!

 ……駄目だ、このテンションは疲れる。


「あーここだ、ここ! 久しぶりに来たなぁ」


 食事をした後、俺たちはアーゼの先導に従って鍛冶屋まで来ていた。

 シンプルに「鍛冶屋」と書かれただけの看板、こちらまで来る熱気、奥から聞こえる大きな声。

 日本にいては感じることがなかったであろう光景に圧倒されてしまう。


「すみませーん! イグネスさんいますか?」


 アリアが中に向かって大きな声で呼びかける。

 この鍛冶屋の親方、イグネスさんを呼んだようだ。

 しかし、中の音がうるさく、聞こえていないのか返事がない。

 ここはあれだな、アーゼの声に頼るか。あの声の大きさなら届くだろう。


「じゃ、そういうことだ。アーゼ」

「はいです。......イグネスさぁぁぁん!!」


 ......相変わらずの爆音だな。

 どうやら聞こえたようで中から人が近づいてくる気配がする。


「うるっさいのぉ! ......おぉ? お前は」

「お久しぶりです。アリアです」


 何かに気づいたようにこちらに近づいてくる。おそらくアリアに気付いたのだろう。

 アリアもそう思ったのか、挨拶をするが......イグネスさん?はアリアをスルーしてそのまま俺の前まで来て立ち止まった。



「なるほど、お前がのぅ......ふむぅ」


 スルーされたアリアは固まり、俺は戸惑うしかない。

 いま、俺の前にいる人は、イメージ通りというかこれぞ鍛冶屋という容姿をしていた。

 所々に金髪の混じった赤黒い髪を後ろに流し、額には飛行士がつけるようなゴーグル。鋭い眼光に立派な顎鬚を蓄えている。ここまでに述べたところでも十分なのだが、やはり特筆すべきは芸術品のごとき筋肉に、その背の低さだろう。ドワーフと言われて想像する通りの姿なのだった。


「あ、あの......」

「ん?」

「イグネスさん......でいいですか?」

「おぉ、紹介がまだじゃったな。儂はイグネス。イグネス・バートンじゃ。この工房の親方をしておる」


 しげしげと俺を眺めていたが、耐えきれずイグネスさんかどうかの確認をしてしまう。

 彼は、思い出したというように紹介してくれた。イグネス・バートン......かっこいい名前だな。


「......ちょ、ちょっと無視しないでくださいよー」

「おぅ、なんじゃ。アリア、帰ってきておったのか」


 固まっていたアリアも復活し、イグネスさんに抗議している。

 しかし、彼は気付いてすらいなかったようで驚いた顔をしている。


「ということはなんじゃ、この坊主はアリアの連れじゃったのか」

「紹介が遅れました。つい先日、冒険者となったソウジです。あの、なぜさっき俺のとこに来たんですか?」

「それは私も聞きたいよ。初対面だよね?」


 俺は自己紹介と共に先ほどから気になっていたことを聞くことにした。


「おう、初対面じゃよ?」

「じゃあ、なんで......」

「それはの、うちの製錬炉の中や工房におる精霊どもが騒いでおるからじゃ」

「精霊が......ですか?」


 精霊がなんで......というか、精霊ってそんな身近にいるのか。


「おそらくおぬしは、炎の適正持ちじゃろ? それもかなりの高さの、のぅ」

「!!......どうしてわかったんです?」

「わからないでかっ!! これだけ精霊が騒ぎよる、しかも良い方向にな。近くに火の属性や炎の属性に良い質の魔力があると考えるのが普通じゃろう」


 そういうものなのか......しかし、精霊が見えるというのはドワーフ特有なものなのだろうか。元の世界の知識で言えば、ドワーフはエルフと並んで精霊に近い種族だというし......。

 気になるな。......見てしまうか。


――――――鑑定Lv.5



名前:イグネス・バートン

年齢:136歳

種族:ドワーフ

称号:炎の鍛冶屋、鍛冶の鉄人、頑固者

職業:鍛冶屋

筋力:450

敏捷:250

知力:241

魔力:460

器用:301

運:120


エクストラスキル:鍛冶神の加護、火精霊の寵愛



「ひゃっ......!?」


 その年齢に思わず、叫びそうになるが何とかこらえる。


(称号......頑固者って。そんなものも称号になるのか。それにエクストラスキルに鍛冶神の加護、火精霊の寵愛......か。あと、人に対しての時はスキルは見えないんだな、けどエクストラだけ......これには何か理由が?)


「おい、どうした。急に黙りよってからに」

「あっ! いえ、何でもないです」

「ふん......まぁいい。とにかくおぬしは炎の精霊に気にかけられておるよ」

「そうなんでしょうか......?」

「うむ、間違いない」


 おそらく、精霊が見えるというのは彼の種族特性か、「火精霊の寵愛」が関係しているのだろう。

 

 

「で、今日は何しに来たんじゃ。ただ挨拶にくるとかいう殊勝なタマじゃないだろう、アリアは」

「いやぁ、あはは......。ソウジ君の防具を作りにね」

「なるほどの......」


 先ほどとはまた、違った視線で俺を見据えるイグネスさん。何かを見定めているような顔だ。


「材料はなにがあるんじゃ」

「おろ、これはソウジ君を気に入ったかな?」

「......ええから、さっさと教えるんじゃ」


 アリアとイグネスさんが話し合って防具について決めてるようだ。


「おい、坊主」

「は、はい。俺ですか?」

「おぬし以外に誰がおる。普段使ってる武器はなんじゃ」

「えっと、刀です」

「......ほう見せてみろ」


 アリアのディメンションバッグから使用しているほうの刀を出してもらう。


「ふむ、なかなか使いこんでるようじゃの。坊主、ほかに刀はあるのか?」

「ありますけど......」

「なら、これはいったん預かる。おそらく霊魂器なんじゃろうが、自身とつながっておる半身であること以外はただの武器と変わらん。防具の調節に使うが、その時にメンテもしておいてやろう」

「ありがとうございます」


 半身のメンテ......そういうとなにかものすごい嫌な絵面になりそうだ。

 

「ほかに注文はあるか」

「そうですね......」


 思い出すのは最初のリザードマン戦のとき、少しでも身軽になるように、動きやすいように服を脱いだことだ。

 とにかく、動きが阻害されるのはいやだな。


「なるべく動きが阻害されないようにしたいです。動き回る戦い方なので」

「ふむ、なら......いや、あの素材が......」


 なにかブツブツと考え始めていくイグネスさん。防具の構想を練っているのだろう。


「うむ。では、作業に取り掛かる。アリア、リザードマンの皮に一角狼の毛皮、それからラッシュボアの牙をよこせ。他に、必要なものが出てくればこっちでそろえる」

「はいはーい、あとそれができるまでの間使うレザーアーマーが欲しいんだけど」

「そこの奥にあるものから好きに選べ。借用扱いにしておいてやる、防具を取りに来るときに返せ」

「了解」


 言われて俺たちは革防具を取りにいく。


「これでいいな」

「うん」


 選んだのは、胸当てに上腕部を覆う革籠手、そして脚甲だ。これなら動きを阻害することもなく、それなりの防御力を期待できるだろう。ちなみにこれはダッシュボアの皮を重ねて作られているそうだ。


「イグネスさん!」

「どうした、坊主」

「いろいろとありがとうございました! あの、防具よろしくお願いします!」

「......3日後までに仕上げる。遅れずに取りに来るんじゃ」


 こっちを見ずに、そのまま奥に消えていってしまう背中をしばらく見ていた。

 全然違うのだが......父親の面影を見た気がした。不器用そうなところが、特に。


「じゃあ、帰ろうか」

「帰るです!」

「そうだね、明日は初依頼に行くよ!」

「おお、楽しみだ」


 そうして俺たちは、イグネスさんの鍛冶屋を後にするのだった。


 

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