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24 苦労人で気さくな雑貨屋さん

 

 お礼をして早速着替え、ネーナさんと別れる。

 ずいぶんと個性的な人だった、というのが印象だ。あの鬼気迫る感じは一種のトラウマにもなりそうなものだが。


「次は雑貨だったか?」

「はいです! ポーションを一緒に売っている雑貨屋さんがありますので、そこに行きましょう!」

「もしかして、ヴェルディのお店?」

「知っているのです? そうですよ!」

「彼とは顔見知りなんだ。昔からずっとお世話になっていたよ」


 アリアの知り合いか……普通なやつである可能性は低いな。

 いや、別にいいんだが疲れるからな……。


「むっ? ソウジ君、今何か失礼なこと考えてなかった」

「い、いや?」


 (だから、なんでわかるんだ……怖い)


「では、いくのです!」

「ほ、ほら。アリアもいくぞ」

「んー、まぁいいや」


 結論から言うと、俺の考えはいい意味で裏切られた。


「わかります、わかります……!」

「だよなぁ……!」

「「同志よっ!」」


 雑貨屋の店主――――ヴェルディは至って普通の人間で、おっとりした性格だった。うっすらと緑がかった黒髪を短く切りそろえ、柔和な笑みの目立つ人だ。

 なんでも昔、アリアに色々と無茶ぶりなどされたり、振り回されたりしたことがあるらしい。

 その話でお互いに盛り上がってすぐ仲良くなることができた。

 話のダシにされていたアリアだが、自分でもところどころ思うことがあるらしく、ふくれっ面をするだけで珍しく何も言ってはこなかった。


「では、何を準備をいたしましょう?」

「……アラクネの糸とロバストウッドの樹皮で組んだロープが二つ。それと各種ポーションを三つずつ。空き瓶と内臓保管容器もいくつか頂戴」


 ひとしきり話したあと、購入へと移る。

 いまだにふてくされた顔のアリアが次々と注文をしていき、それをヴェルディが書き留めていく。


「アリア、これ持ち帰れるの……っていう心配はいらないんだったね」


 顔をあげ、持ち帰るのが可能なのか質問しようとしたヴェルディだったが、アリアがすっと空間に手を入れるのを見て撤回する。


「本当に便利だね。時空魔法というのは……その分、適正者も少ないんだろうけどさ」

「あ、ちなみにソウジ君も時空魔法の適正持ちだからね?」

「......えぇ? じゃあ何かい? おそらく君たちはパーティを組むのだろう?」


 パーティか。アリアのほうをちらりと見ると軽く頷く。


「まぁ、そうなるんだと思うけど?」

「なら、一つのパーティに時空が二人もいる。後にも先にも聞いたことないよ……」

 

 うーむ? どれくらいすごいのかよくわからない……。サポートでしか使ってるの見たことないからなぁ。


「あんまりわかってないみたいだね。考えてもみなよ、冒険者はどんな状況にでも対応するためにある程度の装備を持ち歩く。けど、それは疲れるし、運べる量にも限度があるよね?」


 うむ、確かにそうだ。


「それにいざ戦うという時に荷物が邪魔になることがあるかもしれない。でも、時空属性持ちはそんなリスクを一切背負う必要がないんだ。それがどんなに生き残ることにアドバンテージになるかわかるかい?」


 ……たしかに。そう考えれば、かなり有用だ。これはひょっとして俺強い? いや、グランさんにも負けたし、経験不足な面が目立つ。甘い考えはよそう。


「わかったかい? つまり君たちは二手に分かれての捜索とかもできちゃうわけだ。……っと商品が全部そろったよ。ほら」


 いつの間にか準備したのか、ふと見れば注文した品がすべて用意されていた。

 アリアがそれをするするとディメンションバッグの中に詰めていくのをみて、ヴェルディがうらやましそうな眼で見つめている。商業人にとって喉から手が出るほど欲しいものだろうことは俺にもわかった。


「……これで全部だね」


 アリアが全ての荷物を入れ終わったので、そろそろお暇しようとおもう。


「じゃあ、そろそろいこうか」

「そうだね」

「お買い上げありがとう! 今後とも贔屓にしてくれるとうれしいな」

「ああ、覚えておくよ」


 そうして俺たちは、ヴェルディの雑貨屋を後にした。


 ◇


「じゃあ、次はイグネスさんの鍛冶屋です?」

「そうかな?」


 といった会話が前で行われているが、その前に。


「いや、その前に行きたい所があるんだけどいいか?」


 俺の言葉にきょとんとした顔をする二人。……なんだか、ほんとの姉妹みたいだな。


「どうしたの?」

「どうしたのです?」

「まぁまぁ、ついてこいよ」


 そう言って俺は先導して歩いて行く。二人も疑問符を浮かべながらも付いてくる。


「あ、なんかいい匂いがするです!」


 歩き始めて数分後、アーゼが反応を示す。

 

「あー、そういうことかぁ」


 アリアも何かに気づいたようだ。流石というべきか。


「さぁ、着いた!」

「屋台がいっぱいです!」


 そう、俺が連れてきたかった場所は屋台が集まる街の一角だ。

 あまり公にやっているのではなく、知る人ぞ知るスポットとしてひそかに人気なのだそう。


「というか、よくこんな場所知ってたね?」


 そして、当然抱くであろう質問をアリアが投げかけてくる。

 それはそうだ。俺は案内される側だったのだから。


「アリアが荷物を収納しているときに、コソッとヴェルディに聞いておいたんだよ。ほら、そろそろお腹が空く頃合だろ?」

「ふぅん……ほんとにそれだけ? 誰かのためとか……?」


 ニヤッと笑いながら俺に尋ねてきて、思わずびくっとしてしまった。


「な、何の話だ? 俺はただお腹が空いたからだな……ア、アーゼは関係ないぞ」

「……まぁ、そういうことにしておいてあげるよ」


 どうも見透かされている気がしてやまない。

 それでも、ひとまず追求を逃れ安堵していた時、


「あ、あと誰もアーゼちゃんとは言ってないよ~」

「あ……」


 バレバレじゃないか……って俺が悪かったな、これは。

 そう、俺がこういうことを企画したのは俺たちにつきあわさせてばっかりだったから、彼女も何か楽しめることを、と考えて内緒で行動したのだが、見透かされていた。

 ものすごく恥ずかしい、というか居心地がわるい。

 悶々としていると、突然腕をグッと引っ張られる。


「おっ?」

「ソウジお兄さん! あれ、なんですか?! 私見たことないです!」


 犯人は、先ほどまでの大人ぶった雰囲気ではなく、年相応の顔ではしゃぐアーゼだった。

 思わず、クスリ、と笑ってしまう。


「さぁな、俺にもわからない。だから、食べにいこう」

「やったぁ、いこういこうです!」


 こうして、俺たちは屋台のほうに向かっていくのだった。

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