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20 寄り道


「じゃあ、ありがとうございました!」

「はい、これからもぜひ頑張ってくださいね」

「はい!」


 あれから、興奮した女性二人が過去の資料を漁りだし、ここ「クォーツリク」では記録がないことを確認して喜んだりと色々と語るに語れないことがあったが何とか落ち着き、今に至る。

 その時に少しギルドカードについても教えて貰った。俺からすれば使用属性を知られるというのは、不利でしかないと思っていたのだが、どうやらその心配は要らないようだ。

 このギルドカード、本人の魔力しか反応しない上、ギルドや街の門での身分証明も所属と名前、ランクしか確認できないらしい。よってギルドカードでの属性バレは心配しなくていいのだ。

 しかもこれは、古代遺産(アーティファクト)の類らしく、現代の魔法技術ではその設定をいじるどころか複製すらできないのだという。


「何か、わからないことがあればすぐに聞きに来てくださいね」

「ええ、是非来させていただきます」

「アリアも頼んだわよ」

「言われなくても分かってるよぉ」

「ならよかったわ」


 にこりと笑うミライアさんに、深く頭を下げ俺たちはギルドを後にした。


 ◇


「じゃあ、ソウジ君。属性も分かったことだし、これからは魔法の練習もしないといけないね」

「ああ、そうだな。まずは火からやってみるか」

「そうしようか、でもまずは腹ごしらえと寝床の確保だね」

「まってました!」


 試験が終わった後からお腹がすいて仕方なかったのだ。美味しいものがたくさん食べたい。


「そうだねー……。あそこなんてどう?」


 アリアが指さした先にあったのは、路上脇にある小さな屋台だ。すぐ脇には、”クォーツリザードの丸焼き”とのぼり旗が上がっていた。

 リザードって……リザードマンとかと同じリザード? 蜥蜴だよな?

 反射的に顔が嫌悪的なものに変わってしまう。


「えぇ……あそこか?」

「まぁまぁ、行こう行こう」


 そんな俺を宥めるアリアに連れられ、屋台の中に入る。


「おう、いらっしゃい」


 中にいたのは、冒険者だと言われても信じてしまいそうな髭を蓄えた偉丈夫だった。


「おじさん、ここは何を売ってるの?」

「おい、のぼり旗が上がってただろ!」


 アリアは遠慮することなく、ずかずかと入っていき店主に話しかける。

 屋台脇ののぼり旗を見ていなかっただろう、アリアは何を売っているのか尋ねる。


「え、ほんと?」


 恥ずかしそうに、俺の方を見るアリアにため息がこぼれる。

 というか、こいつは見てもいないのにここにしようとしていたのか……道理で嫌悪感も何もないはずだ。


「ここは――」

「――俺はこの街の名産の一つ、クォーツリザードの丸焼きを売っている」


 俺が説明しようとすると、見かねてか店主が答えてくれた。

 アリアはそれを聞いても嫌な顔をすることなく、むしろ目を輝かせる。

 

「じゃ、じゃあ、それを二つください!」

「あいよ、一つ銅貨二枚だ」


 アリアがポケットから銅貨四枚を出して手渡す。


「確かに受け取った。これが商品だ、冷めねぇうちに食えよ」

「「ありがとう(ございます)」」


 渡されたのは、鱗一枚一枚が水晶のように透き通ったトカゲの丸焼きだった。

 食欲を強く刺激する香ばしい香りが漂ってくる。

 想像していたものと大きく違い、嫌悪感が薄れる。


「じゃあ、食べようか」

「あ、ああ」

「「いただきます」」


 その声と共に、思い切ってトカゲへと齧り付く。

 瞬間、俺は大きく目を見開く。


「んんーー!」

「う、美味い!」


 硬そうに見えた鱗はぱりぱりとした食感をもたらし、その奥から溢れんばかりの肉汁があふれ出る。

 それでいて味はしつこくなく、鶏むね肉のようにあっさりと食べられる。

 お腹が空いていた俺たちは、無言で次へから次へと口に運び、すぐに完食してしまった。


「「ごちそうさまでした!!」」


 この食前、食後の挨拶も俺がアリアに教えて以来毎回するようになっていた。


「はー、美味しかった!」

「うん、美味かった」


 名産と言っていたな。自分で採りに行けるのだろうか。後で、アリアに色々と教えて貰おう。

 あの不思議な食感とあまりの美味しさに、俺はどうにかして大量に入手することを密かに決意した。


「じゃあ、次は寝床の確保かな」


 俺たちは、ミライアさんに教えて貰った宿屋「猫の水晶亭」に向かって歩き出した。


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