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12 街へ向けて


「へぇ……ラッシュボアが出たんだ。中々大変だったでしょ?」

「まぁ……大変というか驚きましたね」

「あぁ、それはそうだね」


 あれから数時間後、解体も終えた俺は拠点としている洞窟へと戻ってきていた。そして、師匠に戦利品と現状の報告をしている。

 ラッシュボアについて話すと彼女はやはり、驚いた様子を見せる。半ば愚痴のように話していると少し考えるような表情を見せ、何かに納得したように頷く。


「でもまぁ......そこまで出来るようになったのなら街に向かってもいいかな?」

「あ、ようやくですか」


 そう、助けられてから既に一週間半ほど経っている。どうせなら出来るところまで修行しようと、彼女が言うので残っていたが、そろそろ街に出てみたいと思うのも仕方ないだろう。


「うん。言うならもっと前から、行っても大丈夫な状態ではあったんだよね」

「そうなんですか?」

「そうだよ。今のソウジ君の実力は、初心者どころじゃないし、狩れたのなら一人前と言われるラッシュボアも倒しているんだから」


 そうなのか……。自分ではどれくらい成長したのかなんて、分からないからな。


「でも、ソウジ君はまだ弱い」

「……ですよねー」

「だから、弱いってことを意識して心に留めておけば、まだまだ強くなれるよ。君には才能がある」

「……はい」


 本当、この人には敵わないと思う。年下に見えるけど、実はもっと歳を食っていてもおかしくない。

 そんなことをつらつらと考えていると、ジトっとした目で此方を見つめ、呆れた声で呟く。


「私はまだ16歳だよ」


(何故バレたっ!)


「すぐ顔に出るもの、ソウジ君」

「はい……ていうか、同い年だったんですね」

「それはまぁ……年齢合わせたし」

「え?」

「あ! い、いやなんでもないよ」

「??」


 どうしたのだろうか……? 何かボソッと呟いていたような気がしたのだが。

 まぁ聞かれたいことでもないだろうから、追求する気もない。


「ま、まぁそれはいいから、街に行くことについて話そうか」

「あ、はい」


 街、という言葉に想像が止まらない。こちらに来てこの方文明どころか、師匠以外の人と関わってこなかったからな。

 ようやく、異世界の街を見れるのかと思うと口角が自然と上がる。本当に楽しみだ。


「まず必要なのは、街に入るための通行料。これは私が立て替えるよ」

「え? いいんですか?」

「もちろん、タダじゃないよ。冒険者にとってタダにするのは相手に舐められる要因になるからね」

「じゃあどうするんです? 俺、お金ないですよ?」

「そこでこれがあるんだよ」


 そう言って師匠は、ディメンションバッグからかなりの素材を取り出した。

 一角狼、ゴブリン、コボルト……エトセトラetc。

 それら全て、俺には見覚えのあるものだった。


「それは……」

「そう、これはソウジ君がこの数日で集めた魔物の素材などだよ。私は街に入ったあと、ここから通行料分を貰って売るから」

「なるほど」


 それならば理にかなっている。別にお金でなくともそれと同価値のもので補えば良いのだ。


「次に、街に入ったらまずしなければいけないのは、身分証取得だね。冒険者になるのなら冒険者ギルド、商人になるなら商人ギルド、各ギルドでギルドカードを発行してもらえるよ」


「おおっ! ついに冒険者か!」


 ある意味で憧れの職業であった冒険者。それに自分がなれるとなれば相当に嬉しい。

 ん、あれ? でも普通に考えれば、これもお金がいるよな……。


「それにはもちろん、お金が必要だよ。けど、さっき私が素材をお金に変えるって言ったよね。その換金をしてくれるのが、ギルド内にある買取所」


 なるほど、すごくちゃんとしている……というかよく考えられているな。

 つまり、俺はそこに行って換金してもらってからギルドカードを作ればいいのか。


「あ、あと冒険者になるなら、試験があるから」

「試験?」

「そう。簡単に言うと模擬試合かな? 向こうの職員か、依頼を受けたCランク以上の冒険者が試験官に立つ」

「つまり……勝てばいいんですね?」

「そうだね。単純明快、わかりやすくていいんだよ。冒険者なんてのは実力で勝負するものだからね」


 本当にわかりやすくていい。細かいことを考える必要が無いってのは助かるな。


「そして、最後、これが一番大事」

「ふむ?」

「決して相手に屈しないこと。こんな職業だからね、当然マナーのなってない下品な連中がいるんだ。もし、そんなやつに声をかけられたり、脅されたりしても簡単にはい、そうですかって引き下がると今後も舐められっぱなしでろくな仕事が来ないよ」


 ……あぁ、いわゆる初心者狩り(テンプレ)か。


「夢を壊すみたいで、悪いんだ「わかりました。」けど……って」

「それぐらい覚悟の上です。分かりきってた事ですし」


 自惚れる訳では無いし、自分がまだまだ初心者で全然機微を分かってないことも分かっている。

 でも、それができなきゃ駄目なら、出来るようになるしかない。


「……忠告の必要はなかったみたいだね」


 俺の顔を見て、苦笑するアリア師匠。


「ならコレはお願い(・・・)だよ。私のことはアリアと呼んで、対等に扱ってくれないかな?」


 そんなこと……。


「断る理由がない。宜しく頼む、アリア」

「……うん、宜しく頼むね、ソウジ君」


 彼女は――アリアは満面の笑みで頷いた。



 ◇◇◇



「此処が……」

「ようやく辿り着いたね……」


 ここまで来るのに、かなりの時間を取ってしまった。大した距離じゃないはずなのに、やたら大きな魔物と遭遇して、その度に戦闘になってしまい本来の二倍ほどの時間が掛かってしまった。


「「水晶の街『クォーツリク』!」」


 眼前にそびえる大きな門を前に、ようやく、俺は冒険者になる為の一歩を踏み出したのだった。


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