表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
曲直瀬道三小伝  作者: 柳瀬じゃこう
9/18

9.道三と戦国武将4 「織田信長」

 正倉院に納められている香木「蘭奢待らんじゃたい」は日本最大の香木ですが、時の権力者たちはこの香木をちまちまと削り取っては配下の者への報償として与えていました。

 それは足利義昭あしかがよしあきを奉戴して上洛した織田信長おだのぶながも同じで、茶器などと同じく、武勲や手柄を立てた武将に国や城を与える代わりに名香「蘭奢待」をさらに細かく切り分けて与えるようになりました。それが時の権力者としての象徴的な行為でもあったのです。

 信長を始め織田家諸将の診察も行った道三も、また蘭奢待を下賜された者の1人です。それは天正3年(1575)、右府将軍となった信長が道三の居宅を訪れた際のことであったといいます。

 道三が右府将軍である織田信長に最初に謁見したときの様子は、『醒睡笑せいすいしょう』という本に記載されています。


「織田信長に、当時の著名な医者、曲直瀬道三が謁見した時のこと。道三は進物として扇子を二本、持って行った。信長の家来達は、何て粗末な物を持ってくるヤツか、と呆れ返った。道三は「めでたく、二本を手の内になさるように」と言上したという……」


 ところが『信長記』になると、こんな記述になります。


「永禄11年(1568)9月、初めて入洛した織田信長は京都東福寺に入った。このとき連歌師の紹巴や医師の曲直瀬道三ら京都の名士たちが続々と献上物を携えて伺候してきたが、その際に紹巴は末広(扇)二本を台に乗せ御前に出て「二本手に入る……」の句を詠んだところ、信長が上の句を付句したという。」


 そのときの歌として伝わっているのが、


「舞い遊ぶ千代万代の扇にて 二本手に入る今日のよろこび」


 もちろん「二本」は「日本」にかけられています。『醒睡笑』は笑話集ですから、こちらの方がもともとの話であったようですが、とにかく「戦国時代の名医」の代名詞として道三は、講談から実録体小説まで名前を使われ、真偽入り交じったエピソードで日本史を賑わせています。その数の多さに、平成20年(2008)オレゴン大学で開催されたワークショップにおいても、虚実入り交じる逸話の数々から事実だけを抜き出そうとする試みは放棄されています。


 さて、茶人としての道三は、「珠光流じゅこうりゅう茶湯」の秘伝書を相伝されるなど、茶の湯にも秀でていたとされています。また、足利義輝からは名器「富士」を与えられていますが、この「富士」は道三から京都の祐乗坊に伝わり、さらには永禄12年(1569)に織田信長が京都で行なった名物狩りで信長に買い上げられ、そこから再び道三にあたえられたと伝えられています。道三はこれを今度は豊臣秀吉に献上し、さらに秀吉から前田利家へ、最後には加賀前田家にまで伝来しています。本当にぐるぐる回ってます。茶器ロンダリング。


 ところで、道三は室町時代末期には針灸の研究にも手を着けておりましたが、その一方で、織田信長によって伊吹山に百草園が設置されて材料の百草もぐさが栽培され始めます。

 ここで信長と道三の間に何らかの話があったかどうかは判りませんが、この相乗効果で灸術が急速に進歩することとなり、道三は灸の発展普及にも尽力したとして知られることとなりました。

永禄11年(1568) 入洛した織田信長に召し出される。

天正3年(1575) 10月、信長を私邸に迎える。「蘭奢待」を賜り、野洲井茶碗「鶉壺」を献上。

天正9年(1581) 12月、秀吉が信長を招いた茶席に相伴。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ