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曲直瀬道三小伝  作者: 柳瀬じゃこう
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4.道三時代のはじまり

 等皓とうこうが医学者として京都へと帰還したのは、天文14年(1545)のことです。帰洛の翌年には還俗して、曲直瀬道三を名乗るようになりました。

 この「曲直瀬まなせ」という姓は、どこから来たのでしょうか?


 「マナセ」という呼び方が独特で、イスラエルの失われた10支族にも「マナセ族」という支族があるものですから、ペルシャの捕囚となったマナセ族の一部が中国の開封に逃れ、さらには日本に渡ったのですか?と壮大な物語を考えられる方もたまにおられますが、そんな話ではないようです。

 彼の父の姓は「堀部」です。「曲直瀬」という姓は、どうやら京で医業を始めるにあたって、彼が考え出した名前のようです。


 二代目道三となった曲直瀬玄朔の言葉を集めたとされる『東井御釈談』という文書には、北宋時代の官僚にして詩人の蘇東坡(トンポーローの名前のもとになった人)の文章をもとに、「医学の流れが時代が下るにつれ曲がりくねって不浄となったのを、往古の直にして清らかな流れに戻そう」とする使命感で決めたと書かれているそうです。

 また一説では、「五行」に言及した最古の書物である『洪範篇』という書にも元ネタがあるのではと指摘されています。この『洪範篇』は中国古代の文献を収拾し編纂した『書経』の一篇で、道三が好んで使った「啓迪(教え導くこと)」という言葉もここから取られたものです。「水は潤下、火は炎上、木は曲直、金は従革、土は稼穡」というのが五行の考え方の基本で、木は柔らかで暖かく、曲がりくねったり真っ直ぐ伸びたりしながらも大きく広がっていくことに本質があるというのです。

 いずれにせよ、いろいろ考えて(厨二病的に)ネタを詰め込んだ名前といえるでしょう。


 一方で、道三の語源についても諸説あります。

 師である導道錬師の「道」と三喜の「三」から採ったとも、京の人間である道三が関東へ留学し、また帰ってくるまでの間に、東海・東山・北陸の三道を通り禅門を訪ねたので、その三道にちなみ「一道に偏しない医学」を志したためもいわれていますが定説はありません。名字が二重三重に意味がとれるのと同じようにわざと複数の意味を持たせているのかも知れません。


 ともあれ等皓は、曲直瀬道三となり、京の都にて李朱医学を高唱する医師として活動を始めました。その医方は、患者の容体の変化を観察し類推し、これに対応した処置を行っていくというもので、彼は自らの方法を察証弁治と呼びました。

 医聖・田代三喜に学んだ知識の深さはたちまち評判を呼び、その噂は幕府の耳にまで入りました。名もない家柄の出身であったにもかかわらず、まだ幕府将軍職を継いだばかりの若き足利義輝に召し出された道三は、噂に違わぬ診療手腕を披露して面目を施したということです。

天文15年(1546) 足利から娘を京に呼び、浦野言清に娶らせる。

天文16年(1547) 姉・乗水の婿である河崎乗三の養女を妻に迎える。

天文18年(1549) 乗水に息子が生まれる(太刀之助)。

天文21年(1592) 河崎乗三、死去。

永禄元年(1558) 一色治部太輔の母の治療のため、美濃を訪問。

         乗水、死去。太刀之助を引き取る。

永禄8年(1565) 一柳氏に正琳が生まれる。幼名、又五郎。

永禄9年(1566) 出雲白方の陣中に赴き、毛利元就の治療にあたる。

永禄10年(1567) 上洛した元就の求めに応じて「九規」を記して授ける。

         足利義昭の治療に近江矢橋まで赴き、7月15日帰京。

         多聞城にて松永久秀の妾を治療。久秀の求めに応じて「養生」1冊、

        「黄女妙論」1巻を著して講授。

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