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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨の閃き

2017.3.13 改行位置修正

「うーん……うーん……」


 唸る。考える。唸るように考える。が、当然どれだけ唸ろうが、答えなど出てくるはずもない。唸って唸って……その結果出た答えと言えば、


「……よし、体を動かそう」


 であった。下手の考え休むに似たり。体の悩みだというなら、体を動かしていた方が答えに近づきそうな気もするし、何より今朝はまだ体操をしていない。

 昨日決めた日課をいきなり破るとなれば、三日坊主ならぬ一日骨となってしまう。それは嫌だ。体裁も悪いし、何より語感が悪い。


「よっ! ほっ! はっ!」


 軽く外の様子をうかがってから外に出ると、脳内に響き渡る妙に耳に残るメロディに併せて、大きく体を動かしていく。昨日外に出たのは昼だったため、生まれて初めて浴びる朝日の元、一心不乱に体を動かす。前へ、後ろへ、伸びて縮んで、ぐるっと回ってマッスルポーズ。動けば動くほど体がぽかぽかと温まり、キラキラ輝く汗が周囲に飛び散る。


 幻と言われた第三まで終わると、骨の体には心地よい充実感が満たされていた。本来ならここにいい具合の疲労感なども加わるのだろうが、残念ながら骨は疲れない。疲労骨折はするかも知れないが、そっちは願い下げである。


「あー、いい汗かいた……汗?」


 汗をぬぐうように頭蓋骨に腕をこすりつけたが、当然そこに水分などない。当たり前だ。骨は汗などかかないし、そもそも新陳代謝そのものが無い。


「あれ? でもさっき、何かキラキラしたのが飛び散ってたような……?」


 そう、確かに見た。視界の端で、自分の骨体から何らかのキラキラしたものが飛び散っていたのを。だが、それは断じて汗ではない。汗ではないなら……?


「あれか!? あれが、この骨の体を動かしているナニカなのか!?」


 気づく。閃く。思いつく。というか、そうとしか思えない。多少激しかったとはいえ、あの程度の動きで骨が砕けて骨粉が舞い散ったとかでもない限り、あれこそが不思議パワーの正体だと確信する。

 ……万が一骨粉だった場合は、蓑虫の様にひっそりと生きることを余儀なくされるという事実は、今は頭の片隅にしまっておく。頭蓋骨の裏の方に、厳重に封をして。


 とにもかくにも新たな発見に、存在しない心臓が脈打つ気がして、全身の骨がカタカタと鳴る。別に日課の体操は1日1回などと決めているわけではないので、早速もう一度最初から始める。


 動く。動く。目をこらす……まだ何も出ていない。動く。動く。動いて動いて……出たっ!


「これか! これが不思議パワーかっ!?」


 道は長く、先は見えない。それでも一歩、確実に進んだと思える事実の前に、骨の体をカタカタと鳴らしながら、私は喜びの小躍りを舞っていた。

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