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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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魂に刻まれた動き

2017.3.13 改行位置修正

 森である。目の前には広大な森が広がっている。だが、それを目にした私に、驚きはさほど無い。私は知っていたからだ。ここに森が広がっていることを。


 ……まあ、深い意味も思わせぶりな伏線も何も無く、単純に洞窟の出入り口から普通に外が見えていたというだけのことではあるが。


 ちなみに、洞窟の形はVに近いL字形であった。私が生まれたのは奥まったところであり、なおかつ袋小路側に顔を向けていたので真っ暗闇に見えただけであって、洞窟自体の広さは大したことが無かった……というか、むしろ狭かった。格好つけて歩いた時間など、正味3分とかである。


 だが、そんなことは関係ない。何故ならこの洞窟から出た瞬間が、私がこの世界に真に生まれ落ちた時なのだ。今この時をもって、私は誕生したのだ!

 つまり、洞窟内でのあれやこれは、この世界の歴史には存在していないのだ。ここ、テストに出るので忘れないように。


 ともあれ、私は外に出た。見上げると太陽は中天にあり、であれば今は昼頃なのだろう。暖かい日差しが燦々と降り注ぎ、私の体を心地よく包んでくれる。


 そう、心地よいのだ。私の中にある知識では、アンデッドと言えば暗くじめじめしたところを好み、生者を憎んで日々鬱々としている感じだと思ったのだが、この骨ボディはそんな常識なんて非常識だぜと言わんばかりに、太陽の光を満喫している。さわやかに吹き抜ける風も非常に爽快だし、遠くにちらほら見える小動物っぽいもの、明らかに命ある者を見ても、別に不快に思ったりはしない。むしろ、濃い緑の葉を茂らせ、生き生きとしている木々を見て、自然って素晴らしいとか思ったりさえする。


 ふーむ。これは嬉しい誤算という奴だろうか。少なくとも、陰々滅々としているよりずっといい。これなら思っていたよりもよほど快適な骨ライフを送れそうである。うむ。何か体がむずむずしてくる。何となく、運動がしたくなる。こういう時にする運動と言えば、アレしか無いであろう。


「腕を前から上に上げて、大きく背伸びの運動から~♪」


 曲は無いので、せめて台詞だけでもと口にして、体を動かす。いきなり聞こえた声に驚いた動物でもいたのか、近くの草むらがわさわさ動いたりしたが、今はそれを気にする必要はない。


 動かす。体を動かす。まさしくそれが本能で知る行動であるかの如く、躊躇いなく迷いなく、滑らかに体が動いていく。ああ、凄く気分がいい……


 とりあえず最初ということで、第一だけで体操を終えると、私の中には清々しい充実感が満たされていた。


 これはいい。これはいいものだ。何となく動きも合理的っぽいし、何より気分がすこぶるいい。これは是非とも毎日……いや、毎朝かな? とにかく、朝にやることにしよう。


 骨に生まれてその日のうちに、私のなかで、毎朝の日課が決定した。

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