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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨体のふしぎ(魂編)

2017.3.13 改行位置修正

 思い返してみれば、気にかかることがいくつもある。例えば、最初に洞窟の距離を考えた時、私はメートルという単位を使った。岩の重さを表すときにはキログラムを、時間を意識した時は、時・分・秒という単位が頭に浮かんだ。


 これらは、いったい何処から来たのか?


 鳥は誰に教えられずとも空を飛べる。それは本能であり、遺伝子に刻まれた知識だからだ。それに該当するものは、自分にもある。それは即ち、この骨の体を違和感無く扱えることだ。紐で結んであるわけでもない骨の体が、人の形を保って動くことができる。丸く穴が開いているだけなのに、目で見て、耳で聞くことが出来る。こういうものが、スケルトンの本能にすり込まれたものであろう。


 だが、距離の単位やら何やらは、どう考えてもそれとは違う。生まれた後に自ら学ぶ、外側の知識だ。自分は何故それを持っているのか? 分からない。見当も付かない。だが、それを持っているからこそ、私はこうして考えているのだ。それを持っているからこそ、スケルトンの本能に流されることなく、「そうであること」に疑問を持っているのだ。


 分からない。分からない。どれだけ考えても思考が巡るだけで、答えにはたどり着けない。


 回る。廻る。ぐるぐるまわる。分からなくて、分からなくて……そして、とうとうたどり着く。私が出した、その答えは……





「うん。まあ、おいおい考えていこう」


 分からないものは分からないのだ。とりあえず分かってないと理解しておきさえすれば、当面はそれでいいのだ。おそらく生まれたばかりであろう私が、こんな狭っ苦しい洞窟の中でウダウダ考えた程度で理解できるなら、世界は神で溢れていることだろう。

 だからこれでいい。考えることを辞めないと心に決めた時点で、もう大丈夫だと何となく感じたのだ。自分の中で揺らぐモノが、安定して揺らいでいることを。


「さて。じゃあ骨のデリケートなメンタルがセーフティな感じになったところで、そろそろライト……ブライト? えー、アウトオブ……あー、いいやもう」


 何となく上がったテンションに任せて出所不明な知識からイカす言語を羅列しようとするも、今ひとつ出が悪くて結局途中で辞めるという、誰かがいたら格好悪いことこの上ないつぶやきを残して、私は洞窟の出入り口に向かって歩く。

 ……いいのだ。この場には私しかいないのだ。別に恥ずかしいとかそういうのはないし、将来的に今日のことを思い出してのたうち回ったりもしないのだ。

 なら言葉にしないで考えるだけにしておけばとか、そんなことを後から考えたりもしていないし、必死になって脳内で自分に言い訳とかもしていないのだ。


 ……無心。無心になって外に向かって歩く。光に向かって、まだ見ぬ世界に向かって歩く。一歩、また一歩と進んでいく足が、遂に光と闇の境界を踏み越え、そこには……無限の世界が広がっていた。

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