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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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モコモコ先生の、良くわかる魔物講座

2017.3.13 改行位置修正

 骨より滴る白濁汁の、放つ光が宙を舞う。神秘的な光景なのだが、言葉として表現すると、もの凄くアレな感じである。


「これは……いえ、でもボーン様なら……」


「何だ? これの原因に、心当たりがあるのか?」


 もし万が一、今後骨が触る全ての液体がキラキラするようになったりしたら、とても困ったことになる。骨自体はいかなる水分も分泌してはいないが、他人が分泌した液体が付着することはあるであろう。言葉にしづらい微妙な箇所をきらきら光ってお知らせサインするとか、歩くわいせつ骨として不審者情報掲載待ったなしである。


 益体も無い阿呆な思考を巡らせていると、モコモコが指に汁をすくい取り、ぺろりと一舐め。白濁汁を舐める未亡人……と一瞬盛り上がりそうになるも、その真剣な表情に、何かもう申し訳ない気持ちがいっぱいになってくる。今なら焼けた鉄板の上で土下座ができる気分である。


「あの、ボーン様……もの凄く今更な確認なんですが、ボーン様って、日の光を浴びることを、どう思われていますか?」


「日の光? どう、とは?」


 脈絡の感じられないモコモコの問いに、私もまた問いで返す。テストなら0点だが、これは会話のキャッチボールなので問題ない。


「光を浴びて、痛いとか辛いとか……そういうのはないんですよね? 我慢してらっしゃるとか、あるいは何も感じない?」


「ふーむ。そういうことであれば、別に辛くも無いし我慢もしていないな。むしろ朝日を浴びながら体を動かすと、爽快な気分にすらなるぞ」


「あ、朝日で爽快……」


 私の言葉に、今度はモコモコが絶句する。その顔には、信じられないものを見たという驚愕と、こいつならやりかねないという達観の感情が絶妙にブレンドされている。


「あの、では順を追ってお話させていただきます。少し長くなるかも知れませんので、面倒であれば聞き流してくださっても構いません」


 ※※※


 この世界には、大きく分けて3種類の生命が存在します。まずは動物。これは兎とかネズミとか、ごく普通にその辺にいる生命ですね。彼らは、体内に魔力を持ちません。それ故見た目通りの身体能力しか持たず、基本的には家畜や獲物の認識です。この世界において、最も多い種類と個体数をもつ生命ですね。


 次が、人類種。一般的には人間……ヒュマニアを指す言葉ですが、私たちフォクシールの様な獣人、エルフやドワーフの様な亜人、あとは伝説でしかありませんが、巨人なども実在すれば人類種だと思われます。これらは体内に魔力を宿し、その強さや特性に応じて、見た目とはかけ離れた能力を発揮します。もの凄く遠くを見通したり、体は小さいのにとんでもない怪力だったり、フォクシールの魔力操作技術も、『魔力の持つ干渉能力に干渉する能力』となり、それらの1つです。


 そして、最後が魔種。魔獣、魔人など、細かい分類はありますが、大抵は魔物というひとくくりで扱われ、不死族もここに含まれます。

 彼らは体内に魔力ではなく魔素を宿し、それを用いて強大な力を発揮します。基本的に凶暴な存在であるのと共に、他者を襲って魔力や魔素を奪うことで、それを自らの力として取り込むことができます。それ故に命を見ると襲いかかるというのがほとんどで、高い知性や理性を持つ存在であっても、殺し奪うことに抵抗を感じるものはほとんどいないそうです。


 そして、今回問題とするのが、この魔力と魔素の違いです。

 魔力は、陽の力です。物質的には、明るかったり温かかったりするもの。精神的には幸せとか喜びとか、そういうものを力に変換します。大がかりな狩りや魔物の討伐などをする際には、その初めと終わりに宴会をすることが多いのは、そういう明るい空気や、温かい食事を取り込むことで、陽の力を増すという意味があるからですね。


 逆に、魔素は陰の力です。暗いところ、冷たいものを好み、悲しみとか恐怖と言った負の感情を力に変えるものです。魔物がわざと残忍な殺し方をしたりするのは、そうすることで魔素が高まり、効率よく強くなれるからだと言われています。


 魔力と魔素は、同じでありながら違うものです。力としての本質は同じなのですが、右回りか左回りか、みたいな感じですね。なので、そのままぶつかると互いの力が打ち消しあってしまうため、人類種はそれを上手いこと変換して自身の力とするための「祝福」という技術を持っていますし、魔物は取り込んだ魔力を力業で魔素に変換する基幹である「魔石」を持っています。


 ただ、例外として不死族……ゾンビやゴースト、スケルトンと言われる種は、生命活動そのものがほぼ魔素によって成り立っているので、魔石を持ちません。むき出しの魔素が形を作っているだけのようなものなので、陰陽の影響を苛烈なほどに受けやすく、普通は日の光……とりわけ生誕を意味する朝日を浴びたりすると、それなりに強い個体でもかなりの苦痛を、弱い個体であれば、ただそれだけで消滅したりします……


 ※※※


「という感じですが、おわかりいただけましたか?」


「うむ。実にわかりやすい説明だったぞ。ありがとうモコモコよ」


「あ、本当にちゃんと聞いてくれていたんですね。こういう時は、ぼーっとして聞き流してしまう方が多いので、嬉しいです」


 笑うモコモコ、うなずく骨。無知であることの苦悩をここ数日嫌と言うほど味わっている私としては、せっかく教えてくれるという知識を、聞き流すなどあり得ない。幸いにして頭蓋骨の空き容量には自信があるので、長い説明でもスッと頭に入ってくる。要はこういうことであろう。


・世界には大枠で3種類の種族がある。

・人間は魔力で、魔物は魔素。混ぜるな危険。

・魔素は幸せに弱い。ハッピーライフは魔物の敵。

・クソ雑魚であるスケルトンは、朝日を浴びると消滅するよ


 あれ?

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