特筆することなど何も無い、いつもの朝の一風景
2017.3.13 改行位置修正
「朝か…………」
昇る朝日を眺めながら、疲労困憊の骨が呟く。
長い、永い夜であった。肉体的には何もほとばしりようが無いのに、精神的にはダダ漏れであった。もし生身であったなら、今頃ゾンビかミイラになっていたであろう。ならば骨で良かったのかと問われたら、そこは微妙なところである。
「くぁ……おはようございます。ボーン様」
「うむ。おはようモコモコ」
可愛らしいあくびをしつつ起きたモコモコと、朝の挨拶を交わす……生身である以上、絶対に私より疲れているはずなのに、鼻も毛並みもツヤツヤである。体液の介在する余地が無い以上、触れるだけでも生命力を吸い取れるのであろうか?
まあ少なくとも、彼女はエナジードレインの達人なのであろう。吸われた骨が言うのだから、間違いない。
「アー……ホネー?」
「ぬ? ケモ子も起きたか。おはよう」
「ホネー!…………?」
いつも通りに抱きついてきたケモ子が、しきりに首を傾げ、鼻をひくひくさせる。
あ、これはもうあの流れであろう。
「おはようケモコ……なぁに? 私にボーン様の匂いでも付いてる?」
「ブフォッ!?」
まさかのカウンターからの先制攻撃に、思わず吹き出す骨。
「ホネー?」
「そうね。私とボーン様は、昨日の夜とっても仲良くしたの。ひょっとしたら……貴方もそのうちそうなるかもね。頑張ってね、ケモコ」
「グファッ!? ゲフッ、ゲッホゲッホ!」
予想を遙かに上回る内角高めのデッドボールに、本来呼吸など必要無いはずの骨が、本日2度目の吹き出しである。
「お、おいモコモコよ。お前はそれでいいのか?」
「勿論です。というか、そちらの方が、本来の流れでしょうし……もっとも、この子はまだまだ幼いですから、実際にそうなるのは、当分先の話でしょうけど。
それでも……この子が自分でそれを考え、想い、そうすると決める時が来たのなら……それは私にとって、この上も無い幸せな日になるでしょうね」
「そ、そうか。ま、まあ、先の話だしな」
「ええ、先の話です」
「ホネー?」
「よしよし、ケモ子よ、骨であるぞ。まあ気にするな。先の話なのだ」
「ふふっ。まだまだ先の話ですから……それまでは、私がご奉仕いたしますね」
「お、お手柔らかに頼むのである……」




