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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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モコモコ

2017.3.13 改行位置修正

 語るべきことは全て語ったと、ケモ子母は口をつぐみ、静かに顔を下に向けた。予想を遙かに上回る重い話に、ライトウェイトな骨の口も、重く重く閉ざされる。


 適当な慰めなど、侮辱でしかない。生後数日の骨ごときが、わかった風な同情などできるはずもない。ならばどうするか? 簡単である。スッカラカンの頭にすら、すぐにそれが思い浮かぶ。


「ふむ。どうするか……キツネ、フォックス、ケモコモコモコ……うん? モコモコ?」


「あの……?」


「うむ。良い感じではないか? どうだ? モコモコはどうであろうか?」


「えっと、な、何がでしょうか?」


 戸惑うケモ子母に、軽やかに、当たり前のように骨がつげる。


「名前だ。ケモ子の母であるし、やはり響きに繋がりがある方が良いだろう?」


「名前!? 私の!?」


「そうだ。貴方の名は、モコモコだ」


「モコモコ……名前……私の名前……」


 ケモ子母……モコモコは、顔を伏せて動かない。いや、正確には小刻みに体が震えているが。


「……駄目だったか?」


 ちょっと不安になって、思わず聞いてしまう。この流れでバッサリ断られたら頭蓋骨を地面に埋めるエクストリーム土下座くらいしか謝罪方法が思いつかないのだが、骨のネーミングセンス的にも、このくらいが限界なのである。


「モコモコ……モコモコ…………私はっ!」


 モコモコが、顔をあげる。真っ直ぐに骨を見つめ、フラットな胸を張り詰める。


「私は、ケモコの母、モコモコです! どうか……どうか宜しくお願い致します」


 そう言って、モコモコは泣いた。鳴きながら泣いていた。

 さて、こんな立派な自己紹介をされたら、当然私も答えねばなるまい。


「うむ。モコモコよ。私は……私は……」


 気づく。気づいてしまう。うっかりここに極まれり。格好悪いことこの上なし。


「すまぬ……すまぬ……人に名付けておいて何だが、私もまた、名が無いのだ……」


 ああ、穴があったら埋まりたい。埋葬的な意味で。

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