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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨の至上主義

2017.3.13 改行位置修正

「ファッ!?」


 擁護しようのない完全無欠の間抜けボイスをあげて、髑髏の頭がカラリと揺れる。


「ホネー?」


「ん? ああ……大丈夫。何でも無いぞ」


「……ホネー、ヨーヨー」


「ふふっ。本当に大丈夫だ。気にせず遊んできなさい」


「アー!」


 スカルなヘッドをぺしぺし叩いてから、元気な返事でケモ子が草原へと駆け戻っていく。今のブームは、チョウチョっぽい何かを追いかけることらしい。


 ……にしても、何だろう? 骨は眠ったりしないのだが、ぼーっとすることくらいは出来る。むしろ最近は日々の平穏っぷりがマジパネェ感じなので、何となく惚けていたというのはわかるのだが……夢? あるいは妄想か? そんな感じのものを見ていた気がする。具体的には、300話分くらい。


 何とも不思議な光景であった。いい具合に強くなってイケイケの骨男が、森で助けたエルフやら封印から開放した女神やらとイチャコラしつつ世界を巡る情景であった。骨のくせに生身の女性とか、一体どうしろというのであろうか。

 まあ、誰に見られるわけでもなく、あくまで私の妄想のみで終わってくれたのがせめてもの救いであろう。全身の骨が真っ黒になってもの凄く丈夫になる技とかは是非とも使ってみたいが、神になるとか絶対に面倒くさいので勘弁である。多少の権力など、それに付随する義務の重さに比べれば、丸めてポイが最良である。それに何より……


 髑髏の瞳が、ケモ子をとらえる。チョウチョブームは既に去り、今は自分の尻尾と絶賛追いかけっこ中である。


 妄想の中には、ケモ子がいなかった。多くの友や仲間、ハーレムメンバーまで勢揃いしていたのに、何故かケモ子だけがいなかった。それはとても寂しくて、そこにいる私は笑っているのに、それを見ている私は泣いていた。

 そんなものは認められない。骨はハッピーエンド至上主義なのだ。どんなにご都合主義だろうと、最後はみんなで幸せに、が最上なのだ。可愛いは正義なのだ。


 ……まあいいか。これ以上考えても仕方が無い。強い骨も魅力的ではあるが、そればかりが能では無い。竜退治にはもう飽きたのだ。俺ツエーな冒険活劇は飽和しすぎて、腐ってやがる、遅すぎたんだ! である。今求められているのは、癒しとアロマのゆるふわ骨ライフである。


 やはりぼーっとし過ぎは良くない。何かするか……何をするか? こんな妄想を見たあとで、自己鍛錬は何か違う。何かもっとこう、クリエイティブな……


「……畑か?」


「ホネー?」


 いつの間にかやってきていたケモ子が、骨のつぶやきに首を傾げる。そんなケモ子を一撫でしてから、遂に骨が立ち上がる。これが後に大きな悲劇を生むことになるのだが、それはまだ、誰も知らない。

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