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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨休み

2017.3.13 改行位置修正

 そう、続くである。続くのである。めでたしめでたしで終わるのは、おとぎ話と視聴率の下がった連ドラだけなのである。人生というのは、そんなきりのいい感じで終わったりはしないのである。


 そんなわけで、今日もケモ子は私の膝に載っている。その右手にはネコジャラシっぽい草が握られており、それを楽しそうに振り回すケモ子姫は、本日も極上にご機嫌である。


 ああ、今更言うまでも無いかも知れないが、ケモ子はメス……というか、女の子である。怪我を治療する際に、しっかりと見ている。幼い少女の全裸をじっくりと見聞する骨の男……事案である。コールピーポーにより数十年は臭い飯が確定的に明らかである。いや、しかしこの場合生後数日である骨男の方が圧倒的に年下なのだから、許されるのではないだろうか?


「ンッ!」


 益体もないことをぼーっと考えつつ、膝の上にある幸せを堪能していた私から、突如としてその幸せの源泉が飛び出していく。それはあっという間に森まで駆け抜け、しばらくして……


「ター!」


 まるで優勝トロフィーのごとく、仕留めた兎を手に持って、満面の笑みのケモ子が凱旋してくる。流石は野生。言動は幼児っぽいが、狩りの腕前は骨とは比べものにならない。リトルプロフェッサーである。


「ター! ホネ、ター!」


「うむ。素晴らしいぞケモ子よ」


 小走りで寄ってきたケモ子の頭を、思うさまに撫でまくる。さらに両手で頬をわしゃわしゃとやると、嬉しそうに目を細める。


「アー! ホネ、アー!」


「ん? くれるのか? そうかそうか。ありがとうケモ子よ」


 差し出された兎を、私は受け取り背後に置く。

 野生において、食料のプレゼントというのは、まさに最上級の贈り物であろう。ケモ子からのそれに、嬉しくないはずもない。ただ……非常に残念なことに、骨は食べない。食べられない。なので時々受け取る贈り物は、ケモ子が寝静まった夜に、こっそり地面に穴を掘って埋めることにしている。心苦しくはあるが、流石に生ものをその辺に放置して腐らせたり、あまつさえそこから病気が発生したりする可能性を考えれば、例え良心が痛もうとも、これが最善の処置であると納得せざるを得

ない。受け取らないという選択肢を選ぼうとした時の、ケモ子の悲しそうな顔を見てしまったら、これ以外は無いのだ。

 ちなみに、干し肉などの保存食を作れないかと一瞬考えたが、塩すらないのではどうしようもないと、やる前から断念させられた。


 とはいえ、勿体ないのは事実。何かこれを活かせるような方法があれば良いのだが……


 穏やかな日差し。のんびりとした午後。元気に外を駆け回るケモ子の姿にカタカタと骨を鳴らしながら、骨の思考は、ゆっくりと空をまわっていた。

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