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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨の結末(終わるとは言っていない)

2017.3.13 改行位置修正

「んぅ……アー……」


 可愛らしい声をあげて、ケモ子の顔がむっくりとあがる。見覚えが無いであろう地形に、小首をかしげて周囲を見回し……


「目が覚めたか」


 その視界に飛び込んできたのは、ドクロフェイスの骨男である。


「……………………」


「……………………」


 見つめ合って、時が止まる。残念ながら、多分恋は始まらない。


「ホネーッ!?」


 飛んだ。もの凄い飛んだ。見ているこっちがびっくりするくらいの勢いで背後にジャンプすると、毛を逆立てて威嚇してくる。


「ウー……ウー?」


 だが、すぐに首をかしげると、四つ足で腰を上げた威嚇ポーズから、スッと二足で立ち上がる。そうだ。ベッドで丸くなってる時とかは全然気にならなかったが、ケモ子は安定して二足歩行できる体つきなのだ。四つ足も直立二足もいける、ハイブリッドアニマルなのである。

 両手を軽く前に出し、プロレスラーのような動きで、ケモ子がこっちによってくる。胡座で床に座り込む骨男の臭いをフンフンと嗅ぎ、おっかなびっくり手を伸ばし、ぺちぺちと膝骨を叩く。その様子を、ただじっと見つめる骨。

 私が何もしないとわかると、ケモ子は身を乗り出すようにして両手を大腿骨に付き、私の顔を見上げながら、再び声を出す。


「……ホネー?」


「ん? あー、まあ、うん。骨であるな」


 ケモ子の言葉の意図を、完璧にくみ取ることはできない。だが、ケモ子が私を見つめて「ホネー?」と言うなら、私の答えは「イエス、骨!」である。

 私の言葉に、ケモ子は手を離して真っ直ぐに立つと、私の周囲をクルクルと周りながら、全身の臭いを嗅ぎ始める。すぴすぴ当たる鼻息が、ちょっとこそばゆい。

 ひとしきり臭いを嗅ぎ終わると、私の正面に戻ってきたケモ子が、顔をあげ、両手を上げ、元気いっぱいの声で言った。


「ホネー!」


 笑っていた。笑顔だった。鼻がツヤツヤであった。ただそれだけであったが、それ以上に求めたものなど何一つ無かった。

 立ち上がり、歩み寄る。ケモ子は逃げなかった。手を上げたポーズのまま立っていた。骨の姿が映り込んだその目は、キラキラと輝いて見えた。

 膝を折り、目線の高さを合わせる。そっと手を回し、優しく優しく抱きしめる。骨の空虚な眼窩から、流れるものなど何も無い。骨に出来る表現など、顎を鳴らすか言葉のみ。なのでここは、言葉を選ぶ。


「ありがとう……助かってくれて、ありがとう……」


「ホネー? ヨー! ヨー!」


 きょとんとした顔のケモ子が、私の頭をぺしぺし叩く。ああ、きっと、きっとこのために私はここに生まれ落ちたのだ。この瞬間を持ってして、私が私として完成したのだ。私の目的は、運命は……今ここに達成されたのだ。


 こうして二人は、その後も幸せに洞窟で暮らしましたとさ……続く

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「最終回じゃないぞよ もうちっとだけ続くんじゃ」
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