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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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20/89

それはきっと酷く単純な、世界と運命の分岐点

2017.3.13 改行位置修正

「おおぅ……」


 思わず声が漏れてしまう。そう、出会ってしまった。見つけてしまったのだ。何に? あのでかイノシシに? そうであったなら、もっと話は単純だっただろう。全力ダッシュで逃げ出して、面白おかしくその様子を回想すれば良いだけなのだから。


 目の前にいたのは、小さなキツネだった。


 正確には、出所不明の自分の記憶にあるキツネとは、ちょっと違う。顔つきはやや違う程度だが、手や足の先の形、体が毛皮に覆われていることなど、そのほとんどは記憶と大きく違いは無い。違うのはたった一つ。たった一つの大きな違い……手や足の付き方。もっと具体的に言うなら、骨格である。

 四足歩行をする形ではない。明らかに二足歩行をする、そういう形なのだ。


 そんなキツネが、地に伏している。背中にはひっかいたような大きな傷、左足にも牙のある動物に噛まれたような、小さいが深めの丸い傷がある。傷口からは今も血が流れ続けており、放っておけば、程なくして死を迎えるであろう。


「ウ……ウァ……」


 キツネの小さな口から、声のような物が漏れる。閉じられていた目が開かれ、その瞳に、自分の顔が映り込んだのが見える。


「ア……アー……」


 キツネの手が、動く。骨の自分の姿を見て、恐れたのかも知れない。あるいは、ちょうど目の前にあった、この肉厚の草を取ろうとしていたのかも知れない。わからない。わからないが……でも、もし。もし万が一。あの行動が、あの声が、自分に助けを求めていたなら……


 ドクンッと、無いはずの心臓がはねた気がした。これがただの野生動物であったなら、きっとこんな気持ちにはならなかった。あるいは、他の動物がこのキツネを狩っているのであれば、それも自然の摂理だと納得したかも知れない。

 だが、この場に私とキツネ以外の存在は無く、私はこのキツネの目に、知性を感じてしまった。その声に、心を感じてしまった。


 ならば、どうする? 違う。私は……どうしたい?


 決まっている……そんなこと決まっているじゃないか。助ける……そう、助けるんだ。


 必ず私が、助けてみせる。今度こそ、絶対に!!!!!!

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