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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨、大地に立つ

2017.3.13 改行位置修正

 あの恐ろしい事件から、早幾星霜。私は遂に、そこに至った。骨を知り、骨を動かし、骨を操る究極の技。その頂に今、骨は両の足でしっかと立ったのである。


「漸く……いや、遂に、と言うべきか。遂に私は、ここまで来たのか……」


 感慨深く、言葉を紡ぐ。修行の日々が、頭を過ぎる。それは長く苦しいものであったはずだが、今思えば一瞬のことのようにも感じる。もっとも、そのどちらであったとしても、不死にして不老、食事も睡眠も必要なく、疲労すらしない永劫の存在を前にすれば、たいした違いでは無いのかも知れない。


 そして骨は歩き出す。過ごした時を、真に過去とすべく、あの時止めてしまった歩みを再開する。今度こそ、悲願を達成するために。


「待っているがいい森よ! この私が、偉大なる骨が、その全てを征服してくれよう!」


 要は初めてのお使いである。





 遡ること数日にして、あの日の翌朝。ずっと正座していて動かなかったのが功を奏したのか、骨の内に満ちる謎パワーは満タンであり、その気分もまた爽快であった。日課の体操をこなしつつ、体を流れるミステリー粒子の流れを追う。一度しっかり認識したおかげか、はっきりと力の流れが理解できる。

 これによれば、仮説1としてあげた「骨の中を太い糸のようなものが通っていて、それによって骨が繋がっている」というのが正しかったのだとわかる。もっとも、仮説2の皮膚っぽくまとっているというのも、感知出来ないほど薄い膜である可能性が否定できないのと、腕が取れて力が漏れ出たときの流れ方は、むしろこっちの膜理論の方が近かったということもあり、完全に違うとは言い切れない。

 とはいえ、事ここに至れば急いで調べるよりもじっくりと時間をかけるべき案件であろうという判断の下、とりあえずその辺は棚上げすることにする。


 で、パワー糸であるが、これに関する実験結果は、次のようなものであった。


・糸に流す力の量は、ある程度自分でコントロールでき、一カ所に集中させるような使い方もできる。

・糸が切れた場合は、その切断面同士に引かれ合う力が働き、一定以上に近づけると元通りにくっつく。

・集められるパワーには上限があり、それを超えて集めても溢れて漏れ出してしまう。


 等々。他にも細かい発見はいくつかあるが、大きなところとしてはこのような感じになった。それを踏まえた上でどのように活かせるかと言うと、


・足や腕などにパワーを集中することで、その箇所の身体能力を1.1倍ほど引き上げることができる。


 これである。うむ。来たな。時代が。骨の時代の到来である。1.1倍と言えば、1割増し、10%アップである。大型スーパーで弁当を狙う際、3割まで粘るのは選択肢が狭まりすぎるが、1割ならいけるのではという、世知辛い世の中でそっと背を押すには十分なお得具合である。これを喜ばすじて、なにを喜ぶというのか!


 ……わかっている。わかっているのだ。基礎能力が高いならともかく、平凡かつ平均的なパワーしか持たぬ骨の力が1割増したところで、大したことはないと。 だが、局所に1割以上の力を集中させると、それ以外の場所が弱くなりすぎるのだ。具体的には、微動だにせず直立不動している状態での最大倍率が3割ほどで、その状態で動くと、体の形が維持できずばらけてしまうのだ。


 ……あれは本気で焦った。腕で試したから良かったが、足で試して垂直跳びでもしていたなら、辺り一面に骨が散らばり、バラバラ殺人死体を嗅ぎ付けて名探偵と言う名の死に神が現れるところであった。口の動きで地面を這いずり、必死の思いで散らばった骨を拾い集めていた時は、世の不条理さにちょっぴり泣きそうだった。


 ……なお、それ以外の部分の説明としては、外れたパーツは外れた箇所にしかくっつかないため、左腕を外して右腕の先に接続し、2倍の長さの腕として使う、みたいな運用方法はできなかったことと、これらの力に気づくきっかけとなったキラキラ流出事件に関しては、体操に驚きの効果があったからだということを記載しておくこととする。

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