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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨の反省

2017.3.13 改行位置修正

 反省中である。骨は今、猛烈に反省している。どのくらい反省しているかというと、誰がいるわけでもないのに自主的に正座をしてしまうくらい反省している。

 ちなみに、痛覚も無ければ血流もないので、別に正座は辛くも何ともない。が、反省という気持ちを示すには、見た目にわかる形式というのは必要不可欠なのだ。


 時刻は既に、夜半をまわっている。場所は、洞窟の中。かつて骨が土よりまろび出た、昼なお暗く夜なら真っ暗なトラブル御用達のダークネススポット。その地において、骨は反省しているのである。


 理由は、当然アレである。関節をコキコキ鳴らすのを辞められない奴と同じように、指をきゅぽきゅぽやり過ぎた後遺症が、日暮れとともにやってきたのだ。


 全身を襲う、えも言われぬ虚脱感。思わずその場にうずくまり、図らずも土下座のポーズをとってしまう骨。何故こんなことに、何が原因だというのか? 考えてみて、すぐにわかる。いつもなら色々考えて思考の堂々巡りなどをしてしまうのに、今回は2秒でわかる。2秒のうち、1.9秒は現実逃避である。

 そう、私はきゅぽきゅぽしすぎたのだ。砂糖に群がる蟻の如く、麻薬中毒者の様なくぼんだ目で、きゅぽきゅぽし続けてしまったのだ。


 どうしてそんなことを、と問われたら、何となく、としか答えられないであろう。まるで転落していく学生のごとき無思慮な解答だが、本当にそれしかない。


 だって、自分の体からきゅぽきゅぽ音がしたら、何か愉快じゃないですか!


 力説したところで、それを聞く人も、そもそも咎める人もいない。ここにいるのは骨一人。全ては骨の一人芝居である。簡単に外せるからと、3分の1くらいの骨を外して疑似スケルトンを組み立て、軽く寂しさを紛らわせてみようという試みを実行しなくて本当に良かった。それをやったら、おそらく本当に自分は死んでいただろう。


 そう、骨をつけたり外したりするのは、思ったよりも謎物質を消耗していたのだ。


 最初、なかなか体調が回復しきれないのは、腕が外れてパニックになるという大きな事件があったからだと思っていた。だが、一度地に伏した後に冷静な目できゅぽる時の力の流れを感じてみると、腕をつけたり外したりするのと、指を同じようにするのとで、消耗する力は同じくらいだったのである。

 部位の大きさとか重要度とかではなく、単純につけたり外したりすることには、同じだけの力を必要としたのだ!


 発見の大きさに比例して、失うものもまた大きかった。知ってしまったからには、最早気軽にきゅぽることは叶わない。出来ないとなると、無性に寂しい。

 かといって、命をかけてきゅぽりたいかと言われたら、それは明確にノーである。流石にそこまでではない。きゅぽりの誘惑はそんなに強くない。ああ、それでもせめて、最後にもう1度くらいはきゅぽりたかった……





 ちなみに、夜が明けて朝を迎える頃には、骨の中でのきゅぽりブームは過ぎ去っており、以後特に気にすることは無かった。流行はまさに諸行無常である。

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