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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨の諦念

2017.3.13 改行位置修正

速報:骨 マジヤバイ


 ……等とふざけている場合ではない。いかに心の中で「次回へ続く!」とか思ってみても、現実は状況を固定したまま一週間の猶予を与えてくれたりはしない。現在進行形で、状況は刻一刻と悪くなっていく。そう、マジヤバイのである。


 とはいえ、阿呆の様に焦りまくった結果、頭の片隅に冷静な自分というものが存在できるようになった。これで、例え意識の7割がひたすら「ヤバイ」と繰り返すだけの骨粗鬆症野郎に成り果てていたとしても、冷静な思考と判断を下せる余地が出来た。これならいける。ディフェンスに定評のある骨である私なら、まだまだ十分巻き返せるはずだ。一発逆転逆転スリーポイントシュートである。


 ということで、まずは現状の把握だ。流れ出ているという感覚からすると、この謎物質は液体に近い性質があるのかも知れない。となると、有効な対処法としては強く押さえるというのがあるが……


「……変わらないか」


 左手で、右の上腕骨を強く握ってみるが、流れ出すものに変化は無い。ならばと上腕骨の下部分、要は橈骨や尺骨と繋がっていた部分を押さえてみるも、やっぱり変化は感じられない。

 まあ、そもそも物理的な物では無いだろうとは思っていたので、それ自体は予想の範囲内ではある。あるが……


「……ど、どうすれば……?」


 思わず声が漏れる。そう。物理的なものではなく、視覚で確認することもできず、ちょっと前まで感覚で認識することすらできなかったモノ。そんなものをどうすれば制御できるかなど、皆目見当も付かないのだ。しかも、状況は割と一刻を争う感じで、のんびりと検証している暇も無い。


 これは……本気でヤバイ……か……?


 有効な対処方法が全く思いつかない。本当の本当に、思考に余裕が無くなっていく。今まで常に心の片隅にあった「まあ、それでも何とかなるだろう」という気持ちが、少しずつ削れていく。


 いや、それでもあがこう。最後まで、みっともなくとも動き続けよう。例えどれだけ避けようとも、終わりは誰にも等しく訪れるものだ。なら、それが押しつけられるまでは、私の魂は自由であり続けるのだ。


 ふらつく体を起こし、骨の体が立ち上がる。仮にバラバラになるとしても、分かれて散らばるよりは良いだろうと、取れた右腕を左手で掴み、そっと胸にかき抱く。分かたれて尚、それは私の一部だと。


 と、その時。不意に、左手に引っ張られるような手応えを感じた。同時に、右腕もまた引かれている。左手に握られた右腕と、体に付いているままの右腕。

 引かれ合うそれを引かれ合うままに、そっと有るべき形へと近づける。その接合面が今まさに触れ合わんとしたその時、それは起こった。


きゅぽっ

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