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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨の狂乱

2017.3.13 改行位置修正

「えっ!? マジで? え……え!? マジで!?」


 あまりの焦りと錯乱に、魂より先に語彙力が死を迎えているなか、私の視線は肘までしか無くなった右腕と、やや先に転がっている肘から先の右腕の間を、恐ろしい程の速度で行ったり来たりしていた。その勢いたるや、視線でやすりがかけられるなら、どんな錆でもツルピカになっていたであろう。


「お、落ち着け……大丈夫。大丈夫だ……何の問題も無い。大丈夫だ……」


 言葉として「大丈夫」と連呼することで、必死に心を落ち着けようと努力する。もしもここに骨の先輩でもいたなら「おいおい大丈夫か? 間抜けな奴だなぁ」と苦笑しつつ、私の腕を持ってきてくれただろう。そうであれば、取り乱した私の姿など、後の笑い話だ。

 あるいはちょっと勝ち気な妹とか、近所の美人で優しいお姉さんとか、ポニテの似合う幼なじみなどがいたりしたら、むしろこれをきっかけに仲を深めようなどと画策できたかも知れない。

 いっそカーチャンがここにいたなら、それだけで全ての問題は解決していたであろうとすら思う。カーチャンの愛は偉大なのだ。


 だが、ここには私しかいない。いや、ひょっとして自分から外れた骨に、新たな魂が宿ったりしていたら腕だけの人がもう一人いるという可能性も微粒子レベルで存在するが、とにもかくにもここにあるのは一対二つ、取れた骨と取れてない骨である。


 あれだ。それだ。ピンチはチャンス、だ。今この時ほど、不思議パワーの検証に向いた瞬間はないだろう。何しろ、極限とも言える状況に、私の五感……いや、味覚が無かったから四感だったか? とにかくそんな感じのものが、これ以上無いほど研ぎ澄まされているのを感じる。


 目を閉じる。意識を集中する。深く、深く、時の流れさえ押しとどめる程に。


 ……わかる。今まで見えなかったものが見え、聞こえなかったものが聞こえる。10メートル近く離れているはずの、木の葉が擦れる音が聞こえる。ずっと遠くにあった、花のほのかな香りを感じる。この数日間の出来事が頭の中を駆け巡り、その先には大きな川と、対岸で手を振る髭の人が……違う、それは見えたら駄目な奴だ。ええい、雑念を払え。雑念を払え。集中集中……


 ……わかる。今度こそわかる。この骨の体から、何だか良くわからない、だが大切だとわかるナニカが、結構な勢いで流れ出している。どこかに起点があるわけではなく、全身からまんべんなく右腕の方へと流れ、収束し、外れた右肘からどんどん外へと漏れ出して……あれ、これヤバくないか? 思ったより勢い凄いぞ? このペースで減ったら、割とすぐ無くなるんじゃないか? 何が? 謎物質・不思議パワーが? え、それが無くなったらスケルトンから人骨にクラスチェンジすると思われるわけで……


「ヤバイ、ヤバイ、マジヤバイ」


 漏れ出るパワーに、漏れ出る語彙力。ただひたすらに「ヤバイ」の三文字が骨の頭を駆け巡る。果たして私は、へんじのない、ただのしかばねに変わってしまうのか? 風雲急を告げる次回へ続く!

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