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我が輩は骨である  作者: 日之浦 拓


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骨の考察

2017.3.13 改行位置修正

 新たな時代の幕開けに、喜び勇んで踊る骨。差し込んできた一筋の光明を、今一度しっかりと確認してみよう!


・体を動かすと、何かキラキラした感じのものがほとばしるよ!


 それだけである。うむ。言葉にしてしまうと若干の心細さを感じるが、謎が謎を呼ぶ骨ボディの仕組みを考える最初の足がかりなど、まあこんなものだろう。


 ということで、考察を始める。


 体を動かすと出る、ということは、この謎物質は体を動かすために必要なものであり、その余剰分、あるいは老廃物的なものが外に出ていると思われる。

 おお、ここに来て実は骨にも新陳代謝がある説が……まあそれは置いておこう。ここで重要なのは、「外に出ている」ということだ。

 外に出るということは、それが内側に満ちているということだ。カラカラのスポンジに水を一滴垂らしてから振り回しても、その水が外に飛び散ったりはしない。何もしなければ即座にバラけて崩れ落ちるであろう骨格標本を、骨ボディとして自在に動かせるようにする力は、間違いなく私の内に満ちているのだ。


 では、それはどんな感じで存在しているのか? 効率的に考えるなら、全ての骨の中心に、太い糸のような感じで流れていて、それがつなぎ合わさっている、という感じだろうか? であれば、ほんの僅かでも外気に触れる関節部分から謎物質がほとばしることに、違和感は感じない。

 あるいは、体全体をピッチリと包み込んでいるのか? 薄い膜のような物で全身が覆われているとなれば、やはり動くことで擦れるなり何なりして飛沫が飛び散るのもうなずける。

 いや、この際両方という考え方もある。その場合、骨を貫く糸は血管であり、体を覆う膜は皮膚ということになる。おお、何とも生物っぽい。うむ。とりあえずはそういうことだと仮定して、さらに検証してみることにしよう。


 ここで、もう一つの事実である「何かキラキラした感じ」の方にも着目する。キラキラした、ということは、その物質が目に見えるということである。が、どれほど目をこらしても、私の体は骨でしかない。磨けばツヤツヤくらいはするかも知れないが、キラキラはしていない。それは骨の継ぎ目でも同じであり、ぱっと見でもじっくり見でも、何一つ見えはしない。

 となると、この謎物質は、私の体から離れることによって可視化されるということになり、そのキラキラも一瞬で消えてしまうことから、目に見える状態であるのは極めて短時間であると思われる。

 であれば、これは何らかの技術、素養、あるいは薬品や機器などの助けを借りない限り、目で見て扱いを覚える、というのは難しいと言わざるを得ないだろう。


 目で見て存在がわかるなら、訓練の難易度は飛躍的に下がると思うのだが……まあ仕方ない。むしろ一瞬でも見えてくれたからこそ、それが存在していると確信できたのだから、ここは謙虚に受け入れるべきであろう。出来ないことを出来ないと切り分け、きちんと引くことはとても大切なのだ。


 そうなれば、あとは感覚に頼るしか無くなるわけだが……これがまた難しい。なにしろ、そんな不思議パワーが満ちあふれていることなどさっきまで分からなかったわけで、それは即ち、今この瞬間に至っても、そういう力の流れ的なものなど、これっぽっちも感じていないからだ。


 骨への飽くなき探究は、まだまだ始まったばかりである。

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