みぬもの
思い出せないことがたくさんある。
たとえば誰かとの約束。たとえば物を置いたけれどどこにおいたか。古い友人との思い出。話そうとしたことの内容。タイトルだけは覚えてる作品のストーリー。
人は忘れる生き物、そういったのは誰なんだろう。
幼いころのアルバムとか見ると、たまにその頃を思い出す。けれど、どうしてかそれは映画やドラマのように遠くから自分を見てるようで、親からその時の事を聞いているからか、写真に写ってるのを見て思い出すからか、はたまたその両方かはわからないけれど。
神社の前?七五三かな?泣いてる写真あったよなー。
「犬が怖かったんでしょ?」
犬?いたかな?あんま覚えてないや。
「ていうか起きろよババア」
は!?だーれがババアよ!!まだ26なのに。
「充分ババアじゃん、なぁアングレ?」
なに?なんかのゲームのキャラみたいな名前…変なの。
「にぃさん、馬鹿にされてるよ?」
「いや、馬鹿にされたのはお前の名前だと思うけど」
「あ、そうなの?」
なんか似たような声だなぁ、兄弟って声似てるものだっけ?ていうか、アングレって中二びょu…。
「終焉の堕天使ていうのよりは…」
「なぁぁぁぁ!!ちがっ、それは適当に入れちゃっただけで名前変えれないってわかってたらもっと!!」
終焉の堕天使は私が、今密かにハマってるゲームでの名前だ。
黒歴史となりつつある名前を出された私は、勢いよく起き上がった…。あれ?なんか頭がんがんする。てか耳鳴りうるさい、起き上がったはずなのに感覚的には倒れてる。んー?どういうことだ?
「にぃさん、痛そうな音したね」「これは死んだかな」「死んだら凄いね!!初めてじゃない?」
遠くで会話が聞こえる。いや、実際遠くないのだろうけど耳鳴りがするからそう感じる。てか、勝手に殺すな!!私が死んだら初めてってどういうことよ、あぁ、確かに私死ぬの初めてだけど、いや普通に考えて人は一度しか死なないけれど!!なんだろ、おかしいね私何言ってるんだろ、いや言ってないけどね、頭の中でしか言ってないけど。
使うはずもない言い訳をひたすら考える。癖じゃないよ、なんとなくね?使うかもしれないじゃん?
あ、頭痛い。
その後も何か考えたのかもしれないけれど、その後起きて最後に覚えてたのは、ひたすら頭が痛かったと思っていたことだ。