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3/4

彼女

3

昨日、あの橘 悠と名乗った男が来た後から、私らの主、紺野 椿の様子がおかしい。

「椿、顔色が悪いぞ。今日、行けるのか?」

シンが心配そうな顔で横たわる椿に言う。

「行くわよ。今日じゃないと、間に合わないもの。」

「じゃあ、せめてもう少し寝よう。今無理したら、いくら椿でも向こうで何もできなくなるわ。」

私はそう言って椿を包む。

「そうね、そうしましょう。」

椿は眠たそうな瞳を閉じて、すぐに寝息を立て始めた。その寝顔は

「まだまだ子供の顔だな。椿は本当に可愛らしい。」

シンも同じことを思っていたようだ。いつも強面な顔は緩みきっている。

「守ってあげたいわね。寝ている時くらいは。」

「あぁ。俺たちも寝よう。」

「えぇ。」

そう言って3人、ではなく1人と2匹は再び眠りについた。




4

私たちは今日、この街を出る。名残惜しいとは思わない。この街に何の思い入れもない。

「行きましょう、シン。ロン。」

「はいよ。」

「はーい。」

私たちは今日、この街を出る。そして向かうのは今や世界の中心都市とされる、全て最新の科学で出来上がっている場所。科学が進歩しているとはいえ、あそこまで科学の進化が目覚ましい場所はないと思う。そんな場所に黒が現れたらしいとの情報が入った。

「今回はどんな獣に会えるかしら。」

獣の中には、シンやロンのように、"善"の獣もいる。黒が現れたらしいと言われ出向いた土地に、"善"の獣しかいなかった、なんていうこともザラにある。もちろん"悪"の獣もいるのだが。この間もそれで契約したテルは情報運び係として働いてくれている。普段は人間の情報屋に頼む。だが、契約で結ばれていて、且つ"悪"を持たないものの方が信用できる。

「今日も椿は楽しそうね。」

ロンがシンの毛づくろいをしながら言う。

「科学が発達してるってことはさ、そこから作られる獣も賢いかもしれないじゃない?もしそんな獣と契約できたら素敵だと思わない?」

「私たちはどうなるわけ?」

「ロンとシンは違う。賢い上、パワーもスピードもある。優しいし、何よりも私をわかってくれてる。前に進ませてくれる。そんな子は他に現れない。」

「それ言われると、毎回嬉しくなるわ。『他に現れない』って。」

「ロン、それを言ってほしいだけだろ?」

シンは前を向いてるから、顔が見えるわけではないけれど、絶対に意地の悪い顔してる。

「シン!それを椿の前で言わないで!恥ずかしいじゃないの!」

ロンはさっきまで優しく毛づくろいしていた爪で乱暴に引っかき回した。

「ロン!悪かったって。やめろよ、真っ直ぐ飛べないだろ?」

シンは楽しそうに笑っている。一方でロンは拗ねている。

あぁ、こんな時間がずっと続けばいいのにと、思った。

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