承-03
「……あの。私の話、聞いてました?」
一通り話し終え、私は思わずそう声を掛けた。
だって話してる最中、この人はずっとボケーッと外を眺めているだけだったから。
そして案の定、返ってきた答えは「あ、悪ぃ。途中までしか、まともに聞いてなかった」というものだった。
「えーっと……とりあえず、浦島太郎が山に柴刈りに行ったところまでは覚えてる」
「つまり何にも聞いてなかったってことですね!」
柴刈りに行くのはおじいさんだし、それは桃太郎の話だ。
まったく……ホントにこの人で大丈夫なんだろうか?
だけど、紹介してくれた先輩は一応信用できる人だし、やっぱりこの人以外に頼れないのも事実。
……その辺は、諦めるしかないか。
「いいですか。もう一回、話しますよ」
「いや、いらねぇよ。話の流れは大体分かったし、アンタが周りのバカに流されてバカなことをやらかすバカ女だってことも、よぉく分かったしな」
「ぅ……」
何も言い返せない。
これだけ再びバカ呼ばわりされても、心霊スポットに不用意に行った私が悪いのは、どうしようもない事実だ。遊び半分でそんな場所に行くから、バチが当たったのかもしれない。まあ、言い方にはやっぱり問題があると思うけれど。
だけどそんな私を見て、自称専門家は初めて笑った。
もちろん、人を小馬鹿にした笑いだけど。
「へぇ、自分にも責任があるって自覚はあるみてぇだな。バカはバカなりに」
――ま、合格ってことにしといてやるよ。
そう言って残りのコーヒーをグイッと飲み干し、自称専門家は立ち上がった。
「ついてこい。場所を変える」
私の返事も待たず、スタスタと出口に向かおうとする自称専門家。
だけど、その背中を私は止めた。
「――あの! 名前、聞いてもいいですか? 今さらですけど」
これまで話の主導権を握られていて、ずっと聞きそびれていたことだ。
これからどれだけの時間、一緒に行動するかは分からないけど、互いに自己紹介しておくに越したことはない。こっちだって自称専門家なんて呼びづらいし、まして実際に口に出してそう呼ぶわけにもいかないし。
すると、チッと舌打ちしながらも(舌打ちしやがった!)、自称専門家はこう答えた。
「統堂。統一された堂々巡り、と書いて統堂だ」
「統堂さん……。あ、私は――」
「麻北千花、だろ。アイツから昨日電話で聞いてる。ほら、分かったならさっさと行くぞ、バカ女」
……うん、どうやら自己紹介の意味はなかったようだ。
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