起-02
二日前――正確には昨日の深夜、私はこの辺りでも有名な心霊スポットへ行った。
といっても、別に私一人でというわけではないし、それどころか乗り気でもなかった。だけど、入ったばかりの大学で初めて出来た友達の中、ノリが悪いと思われたくもない。だから私は流されるように、車に乗り込んだ。
結果から言えば、ただの肝試しだった。
午前二時近くの山の中。今は使われていない古いトンネルに、懐中電灯片手に全員で突入。壁の気味の悪い落書きに驚いたり、お調子者の男友達に驚かされたりと、まあ本当にありふれた楽しい肝試しでその場は終わった。
だが、問題はその帰り道。
街灯もなく真っ暗な狭い山道で、それは起こった。
ヘッドライトの光の中に、フッと、女性の人影が見えた。
私は思わず声を上げた。だって、ヘッドライトはすぐ目の前しか照らしていなくて、そこにいるということはもう轢かれる直前だということだから。
だけど、私の声で急停止した車の周りには、誰もいなかった。すぐ脇は崖で、所々ガードレールも壊れているような道だから、もしかしたら落ちてしまったのかもしれないとも思ったけれど、そもそも車に何かがぶつかったような衝撃はなかったし、それに何より、私以外誰も女性の姿を見ていないと言う。
ちょっと驚かせないでよ、と女友達が笑った。
それ俺の役目なんですけど、と男友達がおどけた。
だけど、愛想笑いすら返せない私を見て、みんな気づいた。これは嘘や冗談じゃない、と。
そのあとはもう、一刻も早くその場を離れるためにただただ車を走らせた。車内は誰も一言も話さず、ただ沈黙と恐怖だけ。
そしてなんとか何事もなく下山し、煌々と光る麓のコンビニを見て、私たちはようやく一息つくことができた。
これでもう大丈夫。みんな、何故かそんな気がした。
だけど、やっぱりそれで終わりではなかった。
疲れのせいでいつもよりぐっすり眠った翌朝、鏡を見て私は驚いた。
一気に血の気が引いていくのを感じた。
一部がうっ血して、赤く染まった私の肩。
そこには誰かが強く握りしめた跡が、くっきりと残っていた。
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