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東方朧観簿  作者: 庶民
第一章
3/59

其の三、人間の里

 大正浪漫風味。

 塀の上から里の町並みを覗いた感想はそれだった。

 建造物の殆どは平屋だが、二階建てや三階建てもそれなり。全体的に和風だが、洋風や大陸風もちらほら見受けられた。

 生活水準は現代の外の世界と比べたら低いようだが、決して悪くない。家屋の近くに平積みされた薪や井戸があるのでガスや水道は普及していないのだろう。電線も見当たらないので電気も無いと思われる。

 道は舗装されておらず、剥き出しの土だ。その上に轍が幾つか。全体を見渡せないこの位置では断定出来ないが、馬車か人力車でもあるらしい。

 私は塀の上に座り込んだ。

 幸いにも、里の外れである此処は特別目立つ場所ではなかった。家々は疎らで、人間は仕事か学校に出ているのか、近くを通り過ぎる者も居ない。

 しかし、もう夕暮れだ。家路に就く人間でこの周辺にも直ぐに何人か来るだろう。

 それでも今はこうしていたい気分だった。


「生きてるな……」


 溜め息は深い。

 何度も生命の危機に触れた事がある私だが、鈍くなる事は無かった。死ぬ覚悟は常々持つようにしていたが、死んでもいいと思って生きる事は結局無理だった。

 何度か深呼吸を繰り返して気持ちの整理を付けると、私は塀から飛び降りて人間達の往来に混じった。服装が周りとそぐわないので少し目立つが、何とか人間達の中に身を浸し、彼らの動向を観察する。

 しかし、数分も経たない内に私はそこから抜け出し、人目に付きにくい家屋の陰に居た。

 人間である証拠は発見出来なかったが、私は彼らと異なるのだと直感的に認識した。整然とした説明が出来ないのにも拘わらず、そう確信してしまっていた。


「情けない」


 思い込みが激しい気性では無いつもりだった。それなのに、妄想同然の情報に反論が出来ないとは、情けないとしか言い様が無い。

 そんな自分に呆れて空を見上げると、一番星。

 食糧の確保も寝床の確保もまだだ。

 しかし、誰かに乞う気にもならない。

 今夜も何時ものように野宿となりそうだった。





 廃屋でもあればその中で寝ようかと思っていた私だったが、都合良く見付かる事は無かった。途中で自警団らしき連中が近付いてきたので、彼らを適当に撒いた後、私は捨てられていた莚を身を隠す道具としてくるまり、民家の裏手の壁に凭れ掛かって眠っていた。

 しかし、一匹の猫によって、その眠りを妨げられる。

 足音も立てずに懐に忍び込み、私の衣服に爪を立てながら、その猫は鳴いた。


「……なんだ、お前の住処だったのか?」


 私の問い掛けに応じる事は当然ながら無い。妖怪でも何でも無い猫は、また鳴いた。


「静かにしてくれ。悪いけどね」


 そっと頭を撫でる。猫は手に顔を寄せると、体を丸めて静かになった。これで眠れるだろうと思って、私は目を閉ざす。

 しかし、今度は人間の足音が近付いてくる。間も無く、灯火が優しく私の顔に当てられ、女性の戸惑ったような声が最後に続いた。


「君は一体、そこで何をしているんだ?」

「……何も」


 再び開いた目に映る女性。青いワンピースに銀の髪。人間のようだが、神獣である白沢の血が混じった人間であるらしい。そのように私は把握した。

 彼女は手にしていた提灯を地面に置いて屈み込んだ。勇敢にも莚を除け、真摯な眼差しで私の顔を覗く。


「歩けるか?」


 私は首を縦に動かすだけで返事はしなかった。億劫だった。

 そんな私の手を彼女は握り、体を引き起こす。猫が不機嫌そうに威嚇したが、私が宥めて大人しくさせた。


「付いてきなさい」


 他の誰かを呼ばれても困るので私は逆らわなかった。面倒に思いながらも、先導する彼女の後を追う。

 猫が鳴いて、私に付いて来ようとするが、手で追い払う。諦めた猫は私の体温が微かに残る莚へ戻ると、それに何度も爪を引っ掛けながら、寂しそうに足踏みを続けていた。





 着いた先は女性の自宅だった。私が寝ていた場所がこの裏手だったらしい。恐らく、猫に話しかけていた私の声が聞こえて見に来たのだろう。

 何らかの作業中だったのか、墨の匂いが残る書斎へと私は通される。女性は「少し待っていなさい」と言いながら座布団を指差し、台所へと向かっていった。

 言い付け通りに私は座布団の上に正座し、少しでも彼女の素性を探ろうと、書棚にある書物の表紙を流し読みした。それらから察するに、彼女は歴史学者のようだった。そのような本がずらりと並んでいる。


「待たせたな」


 緑茶を淹れた湯飲みを盆に載せ、彼女が書斎に戻った。

 その湯飲みを差し出されたが、私は両手を腿に載せ、威儀を正し、目を僅かに伏せて彼女の動きを待った。


「毒は入ってないぞ」


 安心させるように微笑みながら、彼女は真正面に正座する。


「緑茶は嫌いなのか? それとも食事が欲しいのか?」

「……上白沢慧音、先生」


 先程の書物に筆者として書き記されていた名前を読む。それが目の前に居る女性の名前らしく、彼女は息を詰まらせた。読み方も間違っていなかったようだ。

 私は思い切って、訊ねる。


「先生には神獣の血が混じっていますか?」

「……如何にも。私は後天性の半獣だ」

「そうですか」


 そこで漸く、私は湯飲みに手を付けた。

 最も有り得なさそうな情報が的中したのだ。この才能は一種の特殊能力と見ていいのかもしれない。


「里の人間から聞いたのか?」

「名前から推し量ったまでです」

「名前は……」


 喉を潤しながら、私は書棚を指し示す。


「ああ、書いていたな。それだけで色々と分かってしまうものか」


 納得したのか先生は何度も頷いた。

 私は空になった湯飲みを盆に戻して、一息入れる。

 機会を見計らい、今度は先生が訊ねる。


「色々と君には訊きたい事があるが、まずはあんな場所で眠っていた理由からだな。どうしてだ?」

「宿の用意が出来なかったので」

「外来人なのか?」

「おおよそ、その通りです。ちなみに博麗神社には既に行きましたし、僕は幻想郷に残るつもりで居ます」

「いきなり出鼻を挫いた訳か」

「返す言葉もありません。野宿に慣れすぎ、余所様に迷惑を掛けるよりはと思っていたようです」

「結果的に迷惑になるから今度からは……、いや、私は迷惑だとは全く思っていないぞ。顔を上げてくれ。あと、君の礼は何だか堂が入っていて却って威圧的だ。少し緩めたまえ」

「失礼しました」


 背筋を伸ばし、先生を見詰め返す。


「それで、僕の身柄はどうなるのでしょう? 自警団に引き渡されるのでしょうか?」

「どうして、そう思うんだ?」

「外の世界での一般論です。不審者を自宅に置きたがる人間は居ません」

「君は不審者か?」

「全くの間違いではないと思います」

「そうか」


 先生は一瞬笑ったが、直ぐに真面目な顔に戻った。


「だとしてもだ。私のやる事は変わらない。君。泊まる場所が無いなら家に泊まりなさい。少ないかもしれないが、食事も用意しよう」

「……何故ですか」

「困った人間を助けるのに理由が要るか?」

「助けない理由なら沢山あります」

「そうかもしれないな。でも、私には助けない理由なんて一つも思い付かなかったぞ?」


 私は閉口した。何を言っても無駄だという諦めの気持ちが半分。身に染みる親切心への感謝の気持ちが半分。


「親切はきちんと受け取りなさい」


 それが止めの一言だった。

 元々、私は野宿に拘っていた訳では無い。ただ、好意を利用しているようで引け目を感じていただけだ。


「分かりました。お願いします」


 手を膝の前に置き、浅く頭を下げる。

 嬉しいやら情けないやらで、今の私は恐らく複雑な表情をしているのだろう。先生に悟られないように顔を伏せている間に唇を噛み、感情を押し殺した。普段と同じ無表情である事を祈りながら、顔を上げる。

 そして、先生から名前を訊ねられる。

 まだ名乗っていない事を思い出して、私は偽名を告げた。


「川上龍泉と申します」

「……名前はどの漢字だ?」

「龍に泉ですが……」

「川上君は大陸の出なのか? そのような地区があると記憶しているが」

「違いますし、初耳です」


 意趣返しのつもりか、先生は私が全く知らない情報を持ち出してまで推理する。しかし、この名前は即興で本名と故郷の名前を組み合わせた物だ。これ自体には特に意味を含ませていない。


「ふむ……、難しいものだな」

「信用出来ませんか。何なら、両手を縛って納屋に放り込んでくれても構いませんよ」

「すまん。そういう訳では無いんだ」

「気にしてません。寧ろ、独り暮らしの女性が男を泊めるのに警戒してくれたほうが自然で気楽です」

「そう言えば幾つなんだ? 十五、六か?」

「……二十代です」

「え!?」


 年齢を強調するように、私は口回りの無精髭を擦る。山歩きの最中は剃っていなかったので、思っていたよりも髭は伸びていた。

 私の印象は千差万別だが、年齢は若く見られやすい。小柄である事と、無機質な表情が言葉の鋭さを感じにくくさせているからだと私は考えているが、どうにも不服だ。


「幼く見えましたか」

「すまない」

「慣れてます。四捨五入すれば正解になるだけ、まだマシです」


 酷い時は中学生扱いだ。私には経験から溢れる威厳というものが全く無いのだろう。つまらん。


「……お茶のお代わり、いるか?」


 ばつが悪い顔をして、先生が言う。

 喉は渇いていなかったが、頼んでおいた。

 そそくさと退室する先生を見送り、私は書棚に近付く。空いている部分に何冊か寄せると、書物に隠れていた場所に小さな空間の裂け目を発見した。

 何か苛々しやすいと思えば、酒の臭いがそこから漏れているのだ。


「紫さんですか?」


 返答は無い。耳を澄ませば裂け目の向こう側が何やら騒がしい。宴会でもしているのか。


「酒臭いので閉じて下さい」


 声が届いたらしく、私が言った途端にその裂け目は閉じた。微かな酒精の臭いだけが残る。それを手で払いつつ、私は書物を元の位置に戻して、先生が戻ってくるのを待ち構えた。

 盗聴されていた事は先生に告げなくても良いだろう。都合の悪い話はお互いしていないし、今後もしないつもりである。

 暫くして先生が戻ってきた。湯飲みは二つ。先生自身の分も淹れてきたのなら丁度良い。

 先生が座るのと殆ど同時に私から話し掛けた。


「上白沢先生は幻想郷の歴史にお詳しいとお見受けしました。良ければ、幾つかお教え願います」

「長くなるが」

「僕は物覚えが悪いので、適当に端折ってくれると助かります」

「なら発祥からだな」

「それ、絶対に長いですよね?」

「大丈夫だ。明日も予定があるからな。ある程度したら区切る」

「はあ……」


 幻想郷を知る為に都合が良いと考えての行動だったのだが、相手が悪かったかもしれない。


「具体的な始まりは不明だが、今から千年近くも昔にはこの周辺には妖怪が集まり始め、その時はまだ幻想郷という名前は無く――」


 私は後悔と覚悟を携え、長くなりそうな先生の講義に集中する事にした。





 今宵の博麗神社は騒がしい。

 呑めや歌えや踊れや撃ち合えや、と幻想郷の宴としては見慣れた光景が広がっており、種族の垣根を越えた輪が出来上がっている。

 その輪の外に、八雲紫は居た。

 視線は楽しそうな輪に向けつつも、意識は手にしている扇子に残したままだ。

 その扇子の陰には先程まで、スキマと呼ばれる通路のようなものが上白沢宅の書斎に密かに繋がっていた。紫の周囲にも、勿論、盗聴先にも気付かれないように隠していたのだが、川上龍泉に看破されてからは閉じている。

 無関心でいようとした紫が龍泉に興味を持ったのには訳があった。

 幻想郷は博麗大結界によって外の世界から論理的に切り離されており、陸続きとは言えど、自らの意思で往来する事は力ある者でなければ難しい。その為、龍泉は結界が弱くなった部分に偶然にも紛れ込んだ無力な外来人だと紫は予想していた。実際に対面しても龍泉からは霊力や妖力と言ったものを感じなかった事が正体不明でも弱者と決めつける充分な理由になった。

 しかし、紫が気紛れで今日一日で何人の外来人が幻想郷に迷い込んだのかを調べてみると、不思議な事が分かった。

 そもそも、一日を通じて結界は殆ど弱まっていなかった。

 にも拘らず、外来人の数は普段よりも多い。大半が妖怪の餌となった為に大きな影響は無いのだが、気になる現象ではあった。

 紫は元凶が何かと考えた際、龍泉が真っ先に思い付いた。

 しかし、紫はその考えを浅はかだとして直ぐに捨てた。根拠も無しに直感で動いてはいけない立場なのだと、酒の席ではあるが、自らを戒める。

 

 意識を輪に向ける。宴会が始まって直ぐの頃、霧雨魔理沙が龍泉について話していたのを紫は思い出していた。

 酒の肴として、人間が妖怪と戦う話は都合が良かったのだろう。あっという間に川上龍泉の名は広まった。但し、英雄のようなきらびやかな物ではなく、奇跡的に生き残った強運の持ち主としてだが。

 この話に珍しく食い付いた人物、もとい亡霊が居た。

 西行寺幽々子。冥界で霊魂の管理をしている亡霊だ。紫の長年の親友でもある。


「妖怪を食べようだなんてとんでもない人ね」


 魔理沙から話を聞き、健啖家である幽々子がそう茶化すと、その場にいた何名かが「お前が言うな」と返した。冗談めかして幽々子が妖怪を食べようとしたのは決して少なくないからだ。

 だが、龍泉が妖怪を食べるかはどうでも良いのだろう。龍泉には多数の幽霊が憑いている。幽々子もその性質上、何体かの幽霊が周囲に浮かんでいる事があるが、龍泉が連れている霊魂の数は幽々子のそれよりも多い。その事実が幽々子には気になって仕方がなかった。

 幽霊と一概に言っても、種類は様々だ。

 幽々子のように肉体を持った亡霊も居れば、漂うだけの幽霊や、人妖問わずに害を為す悪霊も居る。

 龍泉に憑いているのは漂うだけの無害で非力な幽霊達だが、彼らにも薄弱ながら意思はある。大した力を持たない龍泉一人に大勢が群がっているのには何かしらの理由があるのだろうと幽々子は踏んでいた。


 宴も酣となり、酔い潰れる者や帰る者が現れ始める。その時になって、幽々子は離れた場所に座っている紫に近付いた。二人共、考えを巡らせていたからか酔いは浅い。顔を少し赤らめている程度だ。


「どうぞ」


 徳利を向ける幽々子に、紫は意外に思いながらも盃を出し、酌を受ける。

 和の要素が微塵も無いドレスが波打つ飴色の水面に映る。この時になって初めて、紫は龍泉以外の事を考えた。

 幽々子は紫の顔を見て、彼女が悩んでいる事を悟る。紫への酌を終え、自らの盃にも酒を注ぐと、幽々子は目の高さまでそれを持ち上げて「乾杯」と言った。それに紫が続き、遅れを取り戻すように盃を傾けると、彼女よりも先に空にする。

 奇妙な親友の動きに幽々子は率直な疑問を口にした。


「恋煩い?」

「……そんなのとは違うわ。そう見えた?」

「いいえ、全然。恋する乙女にしては平然としすぎていたもの。でも、似たような事をしているみたいね」

「かもしれないわね」

「お代わりは?」

「要らないわ。この姿に日本酒は似合わないでしょうし、それに、そこまで酔いたい気分じゃない」

「あら、そう……」


 幽々子もまた自らの盃に入った日本酒を飲み干すと、それを近くのテーブルの上に載せ、本題に入る。


「話は変わるけど、紫は川上龍泉という外来人に会ったのよね。どんな人間だったか教えてくれないかしら?」

「霊夢や魔理沙が話していたでしょう」

「掴み所が無くて他人を苛立たせる天才と変わった性格をしている聞き上手。この二つを結び付けるのは難しいわ」

「……一言で言うなら、胡散臭い」


 意外な表現に幽々子は耳を疑った。

 神出鬼没で本心を中々見せようとしない紫は周囲から胡散臭いと言われる事が多く、幽々子も親友として信頼しているものの、紫がどんな妖怪かを誰かに教える時には同じように胡散臭い妖怪だと言ってきた。

 その紫が龍泉の事を胡散臭いと言うのは、とても似つかわしくない。


「自分の事を言っているのでは無くて?」


 純粋な疑問だが、やや皮肉っぽくなる。しかし、紫は気にしなかった。そう言われる事は予想していた。


「幽々子は龍泉に共通点があったから、それが気になって私に話を聞きにきたんでしょう。私も同じ。霊夢も魔理沙も何らかの形で龍泉と重なる部分があったと思うわよ」

「どういう意味かしら?」


 幽々子の問いに紫は素直に答えた。

 龍泉は当てはまらない種族が殆ど無い、人間の形をした何かだと。


「一人一種族である私のように独自の性質を持った存在とは真逆。彼は人間でも妖怪でもある。実際に、それらの役割を果たせるかは別だけど」

「実質的には人間なのね?」

「それもどうだか……。

 退魔の札を受けて平然としたり、援護があったとは言え妖怪を撃退したりするくらいだから、只の人間とは言いにくいわね。

 外の世界から来たのは確かだから修行で精神を鍛えてるとか、何かの訓練――体つきは細いから、肉体的ではなくて生理的なものを受けていたのかもしれないわ。生まれつきの可能性もある」

「ねぇ、紫? もしかして私を混乱させたくて色々と言ってるんじゃないわよね?」

「まさか。会えば分かるわ。私では彼を上手く言い表せない」


 紫は今日だけで少なくとも三つの龍泉を知った。

 ふざけた餓鬼。無慈悲な退治屋。実直な青年。

 どれか一つくらいは演技なのだろうが、全てが正しいようにも間違っているようにも思えてくる。

 紫が確信出来ているのは、龍泉は胡散臭いという事だけだった。


「……それなら仕方ないわね」


 幽々子は紫から龍泉について聞く事を諦めた。もともと興味も薄かったのだ。ややこしくなる前に手を引くほうが利口だと判断した。


「まあ、難しい事は置いといて。折角の宴会なんだから紫も楽しみましょうよ」


 幽々子は立ち上がり、紫に手を差し伸べる。

 断る言葉は無い。だが、手を取る事も無い。

 紫はこのまま参加しても心から楽しむ事は出来ないだろうと考えていた。

 結界に異常は見当たらないが、それでも外来人が大勢訪れた。この結果がある以上、絶対に原因はある筈なのだ。

 紫は顔を伏せて謝ると、調べ物があるからと言って、スキマの中へ消えた。


「苦労好きね、ほんと」


 そうでもなければ幻想郷という新たな世界を創る事も無いかと、残された幽々子は一人で納得する。

 相変わらずの親友の性格に呆れながら、幽々子は輪の中へ戻っていった。

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