僕は宇宙人とであった。
僕が幼稚園か、もしかしたらそれよりもう少し小さい時。
記憶もおぼろげで、友人関係もはっきりとは記憶にない、そんな小さい頃。
そこには『世界の中心』と呼ばれる場所があった。
緑の柵で覆われて、入り口という入り口は見当たらず、中に何があるかもわからない。
そして、どこの家でも大人達は子供にこう言って聞かせた。
「世界の中心には決して近づいてはいけないよ」
僕の両親も、そう言った。
不思議なことに僕も、そして僕の周りの子も、大人たちのその言葉に素直に従った。
近づいてはいけない。見てはいけない。入ってはいけない。
それが『世界の中心』で、世界の理であるのだと。それが当たり前なのだと。
子供なのに、むしろ、子供だから。大人達の言葉はすんなりと僕の"あたりまえ"になった。
はず、だった。
さっきの話は、僕がまだ小さい子供の時の話。
今の僕は中学1年生。小学校も卒業して、野球をするよりむしろ読書が好きで。
毎日友人と遊ぶよりも、たまに遠くに引っ越していった幼馴染に会うことが楽しみで。
周りの人間から「大人びているね」と、そんなことを言われるようになったある日。
雨音が心地いいくらいの天気の日。僕は、呼ばれた。
何にって?それは、この話の流れでたった一つしかないじゃないか。
『世界の中心』に、呼ばれた。
呼ばれた、気が、した。
もしかしたらただの好奇心だったかもしれない。
本当は誰も僕を呼んでなんかなくて、テスト初日で徹夜明けの体が睡眠を欲してとうとう幻聴という新たな技まで発動してしまっただけかもしれない。そんなスキルは一生習得したくなかったが。
でも、それでも、僕は、呼ばれた。
子供の頃から遠くで眺めるだけだった緑の柵の目の前にやってきて、まるで案内されるように僕が通れるくらいの、雑草やら瓦礫やらでひっそりと隠れた抜け道を通って。
入ってしまった。
……………入っちゃった。
後悔した。入る前はあんなに当たり前に、呼ばれたとか言ってたけど。
どうしよう。今、僕は、さも普通に『世界の中心』の中にいる。
冒頭から僕の説明をしきりに聞いてくださった誰かへ。
僕は全然大人びていません。大人ならルールを守るでしょう。その点僕はなんだ。結局好奇心に負けてこうして『世界の中心』に入ってそして目の前に広がるよくわからない光景を見て、ただただ後悔をしている。
ああ、神様。いるのかどうかよくわかんないけど、神様。本当に、すみません。
もう二度とこんなことしません。テストの一夜漬け特攻もやめます。ビジュアルを気にして伊達眼鏡かけるのもやめます。幼馴染をいじめるなんてもっての他でした。本当にごめんなさい。
だから、だからね。
この現状を、なんとかしていただきたいんです。僕の神様。
どうして。誰も入ってはいけないと言われている『世界の中心』に。
女の子がいるんですか。
「ええと、君は誰かなー。なんでここにいるのかなー」
「!?”’!&#&!?(#”!!」
「………ここは宇宙人の住処か何かなのかなー」
神様、せめて、日本語を宇宙共通語にしていただきたい。