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今後の方向性会議


「おい」

「ねぇ」

 悪魔と天使が両側から攻めてくる。うん、責めを受けることはわかってるんだ。

「お前、編集ミスしたろ?」

「まさか短編集になってるとは思わなかったわ。書く以前の問題としておっちょこちょいすぎるんじゃないの? そんなんだから短絡的に『俺は文学王になる!』とか言っちゃうのよ」

「言ってねぇ!?」

「ま、それはさておき謝っとけよ」

「うぅ……投稿してすぐに気付いたとはいえ、編集しなおすために消去したことをここでお詫び申し上げます」

「大変遺憾だ。各所に迷惑がかかっていることは承知だろう?」

「しかし、わたくし天使、悪魔どもはこの実態を知る余地はなく、またその中身についても触ることができなかったため、今は問題の原因究明に全力を挙げている段階でございまして……ただ早期辞任をするということは現在、考えておりません」

 ものすごい責任逃れの発言が飛び交っている。最近、TVでよく聞く発言だらけだ。

 ……最近だけじゃないか。生まれてこの方聞き続けたセリフだから、空でモノマネできる。


 と、ここまで話をして思い出す。

「そういえば、俺もお前らに言いたいことがあるんだった」

「なんだね? 新設部署の大臣くん」

 く……完全に尻尾切りをさせる予定のポストじゃないか! 不用意な発言はメディアに叩かれるし……って話はそこじゃない!

「お前ら勝手にあらすじ書いたろ?」

「「………」」

 だんまりか。まぁいい。

「なんだよあのあらすじ! なーにが編集できないから責任がない、だ! 色んな煽り文句書きやがって! 途中から映画とかパチンコ屋みたいになってたじゃねぇか! 編集ミスした後に気づいたから注意書きを書けたからよかったものの……ともかく、そのせいでちゃっちゃと二話目をアップロードして、釈明会見しなくちゃならないハメになったろうが! あらすじにだまされた方々、大変申し訳ありませんでしたァ!」

「でも斬新だったでしょ?」

「斬新すぎて嘘だらけじゃねぇか! J○R○に訴えられたら勝てないレベルだぞ!? ただでさえパロディでギリギリのラインなのに、あれじゃ詐欺だ! 燃えもなければ、感動もない。ましてやエロなんて書けるわけないだろ!」

 エロってのはその辺に熟知した人が、様々な表現力を得て、ようやく書けるものだ。俺のように経験の浅い、表現力のないヤツが書けるわけがない。……それに、恥ずかしいし。

「それじゃ実行してしまおうぜ。幸い、これはフィクションだ。好きなようにお互いが書けるだろ? まずは俺がお手本として燃え展開ってのを書いてやるぜ」

 そう言って、PCに向かう悪魔。こいつにそんな展開書けるだけのスキルなんてあるのか?


 俺の名前は悪魔。

 しかしこれは本名ではない。

 ただ周りがそのように俺のことを評するだけだ。

 それは俺の性格や見た目で言っているわけではないことを俺は知っている。

 この右手。

 この右手によって俺はそう呼ばれることになった。

 俺の仕事はこの右手で天使と呼ばれるヤツらを駆逐することだ。

 今日もヤツらが俺の仲間との熾烈な争いを繰り広げている。

「ふぅ……ヤツらめ……無差別に攻撃してきやがって……」

「ヤツらは女子供関係なしに襲ってきやがる。気を引き締めろよ。昨日もヤツらに南西方面の連中がテロ攻撃を受けたようだ」

「そうだ……な!?」

 途端に空が白く染まる。ヤツらだ! ヤツらが襲来したのだ!

「に、逃げろ! さすがにあの数は相手にできない! 今、ここで死ぬわけにはいかないんだ!」

「ふ……そうしたいのは山々なんだがな……昨日の襲撃、実は俺は南西方面の軍にいたんだ」

「な……なんだ……と?」

「ほら、この通りさ。右足がふっとばされちまってる。それでも運のよかったほうさ。ほとんどは殺されちまった。そして、今日こそ命運尽きたようだな……」

 痛々しく傷口を見せる戦友の悪魔。その顔は一種のあきらめにも見てとれた。そして、わかってしまったのだ。こいつはここで死ぬつもりなのだ、と。

「行け。俺はここでアイツらをひきつける。なぁに心配することはねぇ。俺の身体にはTNT爆弾が埋め込まれているんだ。コイツを爆発させるときがきたようだ」

「な、なにを言ってるんだ……お前には妻と二人の娘がいるだろう!」

「ふ……あいつらはお前に任せた。お前ならきっと俺の家族を幸せにしてやれる。知ってたか? 俺の妻、つまり俺とお前の幼馴染なんだが、実はお前のことが昔から好きだったんだ」

「そんなことはどうでもいい! 今、必要とされてるのはお前だろう! ひきつけるのは俺がやる! だからお前はっ……!」

 そこまで言ったところで手で遮られる。……そうか戦友よ。お前はそこまでの覚悟を……。

「せーの、でいくぞ! じゃあな、戦友。お前と戦えて俺は楽しかったぜ……せーのっ!」

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」

 同じ咆哮が逆に向かっていく。そして――。

 俺は決意した。この右手とともに戦い抜くことを。


「どうだ? これが燃えだ」

 ふふんと鼻を鳴らす悪魔。そして両手を掲げ――。

「イヤ、そのネタ、前もやったから。どんだけ好きなんだそのポーズ」

 とりあえず遮っておく。

「たしかに燃え展開かもしれないけど、これ、この後どうなるの?」

「その後、戦友の死を受けた俺こと主人公は自分を責めることから始めるんだ。なぜ、あのときもっと引き止めなかったとかな。そして、戦友の妻に報告しにいったときに色々と諭されるんだ。そこから修行の日々がおよそ単行本一冊分くらいは続く」

「なげぇよ! どんだけ強くなるんだよ! ていうか最後の文のせいで打ち切りっぽいだろうが! 悪魔先生の次回作にご期待くださいみたいな感じになってるから!」

 いきなり戦友が死んでしまったら感情移入も何もないだろう。設定もいまいち要領を得ないし。

「ま、でも、これじゃ最近の少年向け小説は無理ね。使い古されすぎて、巡り巡って中高年のハートは掴めても、最近の子供たちには受けないわ」

「なにおう!? じゃあお前が書いてみろよ!」

「フフッ。いいのかしら? この天界のエンジェルと呼ばれたこの私に書かせても……」

 イヤ、天使だからそのまんまなんだが、というツッコミを華麗にスルーして、PCの前に座る天使。

「私が得意とする分野、感動モノでその勝負受けるわ!」


「あの葉が散るのが先か、私の命が散るのが先か……」

 ふと、そんなことを呟く。

 私は不治の病。

 そう診断されたのは、私が物心つく前だった。

 だから死は怖くない。

 でも、この場所にいることが怖かった。

「死ねるのなら今すぐ死んでしまいたい……」

 願望。

 もう、希望なんてない。望みといえばそれくらいなもの。

 窓際にある私のベッドは、外の景色が楽しめる。それが唯一の楽しみといってもいい。

 外に目をやる。

 すると、窓がカガミの役割を果たして、逆方向に誰かがいるのが見えた。

「天使ちゃん……そういうことを言っちゃいけないよ……」

 隣のベッドで寝ていたおばあちゃんだった。

 まったく会話をしたこともないし、私には仲良くしようという気持ちすらなかった。

「おばあちゃんのたわごとだと思って聞いてね? おばあちゃんには大好きな人がいた。その人はもういないけど、でも私の心の中には生きているの。その人との昔話なんだけどね……(中略)……というわけなの……」

「そ、そんな……わたし、わたし間違ってた! おばあちゃん! ありがとう! わたし、これからは愛に生きるわ!」

「うんうん、やっぱり若い者はええのぅ……」

 それからおばあちゃんと仲良くなった。みかんをもらったり、おばあちゃんが昔よく遊んだ遊びをしたり、一緒にTVを見たり。

 そうやって一ヶ月が経ったある日。

「天使ちゃん……おばあちゃんね。怖かったの。でも、天使ちゃんのおかげで勇気が出たよ」

 いつもどおり一緒にTVを見ているとおばあちゃんが急に告白し始めた。

「なにがー?」

「ううん……なんでもないの……それにしてもこの司会者ほんとに黒いわよね。肝臓が悪いって噂は本当みたいね」

 そのときはおばあちゃんがなんのことを言っているのかわからなかった。

 それからさらに一ヶ月が経った。

 おばあちゃんがいなくなった。

 ベッドは綺麗にメイクされて、おばあちゃんの私物や、一緒に遊んだ数々の道具も消えていた。

 それでも私は待ち続けた。

 約束したのだ。どちらかが元気になったら、絶対にお見舞いに来るんだって。

 きっと元気になって退院しただけなんだ。そう思うことにした。

 季節が変わった。

 まだおばあちゃんはこなかった。

 年が変わった。

 まだおばあちゃんはこなかった。代わりに新しい人がおばあちゃんのベッドを使い始めた。

 さらに年が変わった。

 それでもおばあちゃんはこなかった。日々、襲ってくる苦痛に耐えた。耐えることができたのはおばあちゃんが来ると信じていたから。

 それから何年も経った。

 もうおばあちゃんのこともほんのり覚えているだけになった。

 そして、私は退院した。

 不治の病とされていた私の病気の治療法が見つかったのだ。医学が進歩するくらい年月が進んでいた。

 それから、恋人ができて、結婚もして、子供も二人もできた。

 あるとき、私はカゼを引いて、昔、入院していた病院に行く機会ができた。

 懐かしいな、とか思いながら、自分が何年も暮らしたベッドを見に行った。

 そこには……おばあちゃんがいた。

「あら、天使ちゃん。お久しぶり」

 あの頃とまったく変わらない声、姿。違うのは私のベッドにいるということだけだった。

 思わず涙が溢れてきた。

「あらあら天使ちゃん。大きくなったのね。それに……幸せなのね?」

 うなずくことしかできなかった。それから涙混じりに昔話に花を咲かせた。

「それじゃ、私そろそろ行かなくちゃならないから……またくるね、おばあちゃん!」

 おばあちゃんはうんとだけうなずいた。

 そうして、その日は家路に着いた。

 それから一週間。まだカゼが治っていなかった私はまた病院に行った。そして、子供の頃からの主治医にその話をした。すると、「その患者は既に何年も前に亡くなっている」というのだ。

 私は病室に確認しに行った。少しのあせりを含みながら。そして、その不安は現実になった。病室がないのだ。

 私は呆然とした。既におばあちゃんはいなかったのだ。あのとき、うんとうなずいたおばあちゃんはもう……。

 いつの間にか私は屋上にいた。なぜか高いところに登りたくなったのだ。夕日がまぶしい。少しにじんで見えるのは気のせいだろうか?

 そんなことを思っていると、急に風が強く吹いた、すると――。


「あー疲れたー! もうやめー!」

「ええ!? ここまで引っ張っておいてここで終わり!?」

 久しくこっちにいなかったせいか急激にテンションを戻すのに時間がかかった。

「だって疲れたんだもーん!」

 そういって持ち込んだビスケットとオレンジジュースをあおる天使。

「あんだけ長々と書いておいてそれはないんじゃないの!? もうすぐ終わりじゃん! 最後まで書ききろうよ!」

「えーだってぇ~もう終わりは書くまでもないっていうかぁ~アレだよアレ。おばあちゃんの名言みたいのが風に乗って聞こえてきて、感動して終わりだよ」

「見も蓋もねぇ!?」

 天使は物語うんぬんの前に根気がなかった!

「でも、そこの黒いのは感動してるわよ?」

「うごぉぉぉぉ~! ええ話や~! おばあちゃんっ子やねん自分」

 なぜか関西弁で感動している悪魔。ていうか途中、大事な部分が中略されていたんだが、それでも感動できたのか?

「ていうかダメだよ、こんなの。たしかにお年寄りとか死ってのは感動モノには必要な要素かもしれないけど、最近はそういうのなしのほうが受けるんだから。簡単に言うと、あざとい!」

「じゃあ、アンタ書けるの?」

 ぐ……ま、まぁたしかに。発想力の前に俺には書けないかもしれない。たとえあざとくても感動する人がいるなら、それはそれでいいのかもしれない。

「ま、これが天界のエンジェルの実力ってヤツよ。すごいでしょ? ちゃんと尺も稼いだし」

「それは言うなぁ! 途中で良心の呵責に訴えられたんだから!」


「ところでなんか反応あったのか?」

 ようやく泣きやんだ悪魔が話を変えてくる。

「?」

 しかし、なんのことだかわからない。

「ばっかおめぇ、タイトルだよタイトル。あれ、どうしたんだよ? まさかまた未定とかタイトルにするんじゃないだろうな?」

「あーうん。まだこの話書いてるうちにはタイトル案きてない……」

「やっぱつまらなかったのね……」

 グサッ!

「まぁ俺や天使の文章力ならまだしも、な」

 グサッ!

 ゆうしゃは しんでしまった!

「おお、ゆうしゃよしんでしまうとはなさけない! ていうかHP少なすぎるでしょ」

「俺は現代に生きるただの一般市民Aだからな! ゆとり世代はHP少ないっていうのは仕方の無い仕様なんだよ!」

 そりゃ想像上のお前らと比べられるほうがおかしい。こちとら純情少年なんだぞ? 盗んだバイクで湘南を爆走してやろうか?

「ま、とにかくまた未定で出すしかないわね……でも、引き続きタイトルだけは募集しておいてね」

「はい……すいません」

 俺にはリアルで主人公属性はないみたいだ。どちらかと言えば、主人公が色々苦難を経験して、大人になったとき、自分がとある国の王様だと気付くまで、その王座を守っていたおかしな名前の人くらいの立ち位置だ。

 長々とたとえを出したが、ようするに脇役。しかも脇役も脇役。印象に残りやすいはずの名前なのに出てこないくらいの。この手の名前がスラッと出てくるヤツは頭の回転と記憶力がいいヤツだ。


「仕方ないな。路線を変えるか?」

「二話目にしていきなり!?」

「あなた変身とかできないの?」

「近くに天使と悪魔がいる状況で変身できたとしても、なんの感動もありませんがね!」

「じゃあもうちょっとキャラを立てるとか?」

 一応、自分の中ではツッコミキャラというものがあると思うんだけど、たしかにまだまだキレが足りないような気がする。

「オーケー。ここも流行りに乗っかろう。ツンデレだ」


 俺はただのしがない一般人だ。べ……別になりたくてなってるわけじゃないんだからね!


「ちょっと待て。そもそも男のツンデレに需要あるのか? ていうかこの文だとただの負け惜しみにしか聞こえないぞ」

 ツンデレはカワイイ女子が二次元であるからこそ成立するのだ。

 男はもちろん、三次元にツンデレは危険すぎる。……きっと友達いないんだろうなぁ。

「それじゃあ……執事とかどう?」


 おはようございます。お嬢様。今朝は良い天気ですよ。そうですね、こんな朝にはアッサムティーなどいかがでしょうか? 

 ………………………。

 ………………。

 ………。


「お嬢様は今何処!?」

「そういえば仕える相手がいないわね……」

 俺と天使と悪魔しかいないこの空間に急にお嬢様を呼んでしまうわけにはいかない。というか呼べるわけもない。

「それじゃあ死の線が見えるという高校生とかどうだ?」


 これがモノを殺……。


「あぶねぇ! つい好きな部類だったから流されそうになった! これじゃまんま過ぎるだろ!」

 好き過ぎるとボーダーラインが見えなくなるのは悪い癖だ。やめておこう。

「それじゃあ、実は女なんだけど、壷を割ってしまったがためにホスト部に強制的に参加……」

「そもそも男だし!?」

「こうなったら仕方ない。BL路線に走るしかないか……今ならまだ方向転換できるぞ?」

「物語が方向転換する前に性癖が転換されそうなんですけど!?」

「むぅ~……文句ばっか言ってちゃ始まんないでしょ? ん、あ、そうだ!」

 なにかに気付いたのか天使が手を打つ。

「語尾よ! 語尾! 言葉の最後に特徴的な語尾を付けるのよ! これなら性格も性癖も性別も変える必要ないでしょ?」

「なるほどな……じゃあ語尾と言えばこれだろう語尾界の金字塔『にょ』!」


 もっと文才が欲しい……にょ……。


「キャーカワイー」

「そんな棒読みで言われて誰が喜ぶか!」

「う、うん、これは俺が悪かった……すまん」

 珍しく悪魔が素直に謝った。それほどひどかったということだろうか?

「それじゃあこれはどう? 『なのです』!」


 俺の名前は未定なのです。あうあうしちゃうです。


「嘘だ!」

「イヤ、一個も嘘ついてないけど……ていうかカワイイ路線は激しく違う気がするからパス」

「そうは言っても、男で語尾系キャラって少ないのよねぇ……あ! これはどう?」

 なぜか付け歯とビンの底のようなメガネを渡される。


 デュフフフフ、我輩が主人公でヤンス。これだけは譲れないでヤンスよ。


「すげ~下っ端っぽい……」

「お前がやらせたんだろうが! ……でヤンス」

 なんだかリアルでそういうキャラなせいか、今までで一番しっくりくる。だが、主人公だ!

「もうこうなったら主人公ってことを前面に押し出していこうぜ?」


 俺がこの物語の筆者兼主人公だしゅじんこー! もっと面白いものが書けるようがんばるしゅじんこー!


「………斬新すぎてついていけねぇ……」

「いまだかつてここまで主張する主人公がいただろうか……」

 以下、反語。


 あーだうーだ言いながら、あれこれ試してみたが全て却下。飽きるのも時間の問題だった。そこではたと思う。

 こんな感じでいいのだろうか?

 俺はここまでの話を物語として世に送り出していいのだろうか? 

 悪ふざけもすぎると犯罪になるかもしれない。

「やめだ、やめ! 今のままでとりあえずは進んでみる! それでもダメだったら……そのときはそのときだ」

 とりあえず言葉は濁しておいた。これは俺達のためだ。あまり長く触れすぎるとよくないことはわかる。きっと、この物語の根幹に関わるなにかに抵触してしまうだろう。

 さっきまであんなに騒がしかった二人も黙ってしまう。

「悪い悪い。それで? 俺はどんなキャラがいいんだ?」

「……別に今のままでいいだろ。なぁ?」

「そ、そうですわね。私達がボケてあなたがツッコむ。それでいいじゃありませんの」

 それきり誰も口を利かなくなってしまう。

 え? なにこの空気? 二話目にして、なにこのシリアス展開? こんなの望んでないんだけど。


 とうとうイソイソと帰り支度をする二人。

 なんだか俺のせいで空気を悪くしてしまったみたいだ。みたい、というかその通りなので、引き止める言葉も見つからない。

 そうやってぐずぐずしていると、いつもの謎の空間から出ようとする悪魔がこちらを向くことなく話し始めた。

「……ただ、ただよ……お前がやめたくなったらいつでもいいんだぜ? そもそもこれはお前が始めたいから始まったんだ。お前の好きなようにしたらいいさ。でもな、せめて自分で納得いくくらいまではやってみたらどうだ?」

 すると、天使も触発されたようにしゃべり始める。

「そうですわよ。最初に言ってたじゃありませんの。これは趣味だ! って。趣味は自分が好きでやること。それ以上の資格も条件も必要ないんですのよ。ましてや、タイトルなんて、ね」

 それだけ言って、二人は謎の空間に毎度のごとく消えていった。

「……ふん。いつもアホなことばっかり言ってるくせに」

 ただ、なんとなくむしょうにその空間のあった場所に頭だけ下げておくべきだと感じた。


 ん? 頭を下げた先に白い紙が見えた。

 拾い上げてみると、なにか書かれているようだった。

「それってツンデレっぽくない? おめでとう! キミはツンデレ要素を手に入れた!」

 ついでにどこからか聞こえるファンファーレ。

 それが鳴り終わるのを待ってから、こう言ってやった。

「男のツンデレに需要はねぇよ!」

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