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上目遣いに

作者: 尚文産商堂
掲載日:2011/05/31

俺は今、後輩と付き合っている。

後輩といっても、俺が高校にいた時の後輩じゃなくて、卒業した後に入ってきた後輩だ。

まあ、面識がなかったわけではない。

俺の幼馴染である男の妹ということもあり、昔から遊んでいた仲ではある。

だからと言って、今のように付き合うことになるとは、到底思えなかった。


きっかけは、俺が高校に遊びに行った時だ。

部活はどうなっているのかを知りたくて、先生と話したあとに、部室へのぞきに行ったのだ。

その時、後輩が一人で絵を描いていた。

扉を開ける音でこちらを振り返り、俺が立っていることが頭で認識できた時点で、驚いた顔を俺に向けた。

「どうしてここにいるの」

絵筆を水壷に浸し、手を簡単にふきながら俺に近寄った。

「いや、暇になったから遊びに来たんだ。で、部室はどうなっているのかなって思ってな」

「どうなっているも、今はあたしだけよ。ほかの人たちもいることはいるけど、今日は用事があるとか何とか言ってきてない人も、連絡がない人もいるし」

「そっか」

俺は、後輩にそう言って、部室の中にはいった。

俺が卒業したときそのままの部屋だった。

「しかし、何も変わってないな」

その時、ふと俺は思い出した。

「そうだ、あれまだ残ってるかな」

俺は部室の端にある壁を触り、隙間を見つけた。

この隙間は俺が1年生の時に見つけたもので、何かしらのものを入れることができた。

何かしらといっても、プリント5枚が限度の小さな隙間だ。

俺はここに、卒業したときのメモリアルとして手紙を1枚差し込んでいたのだ。

「あった」

ほこりまみれにはなっているものの、まだ、読めそうだ。

「なんなの?」

「俺が卒業したときに、ここに置いて行った手紙だよ」

手紙を開けると、5年後のおれへという題名でいろいろ書いてあった。

「大学へ行っているか、バイトはどうなっているのか、彼女はできたか」

のぞきこまれながら、後輩が俺の手紙の文章を適当に拾い上げながら、口にした。

「まあ、高校卒業したときの気持ちなんて、こんなものさ」

「それで、どうなったの?」

「ああ、大学へは行けたし、コンビニのバイトを今はしてる。できてないのは彼女ができることぐらいかな」

「好きな人とかいないの?」

「いたさ。でも、別の人と付き合ってる」

それから、後輩へ向き直って、冗談半分で言った。

「もしかしたら、お前が俺の彼女になってくれないかなってか」

それを聞いた時の後輩の表情は、その言葉を真に受けたような感じだった。

「それって、冗談?それとも本気?」

「もしも本気だとしたら?」

「あたしも、好きだった。そう言おうと思う」

「…そうだったんだな」

俺は後輩をやさしく抱きしめ、そして、肩をたたいていった。

「じゃあ、付き合ってくれるのか」

後輩は、うなづいた。

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