上目遣いに
俺は今、後輩と付き合っている。
後輩といっても、俺が高校にいた時の後輩じゃなくて、卒業した後に入ってきた後輩だ。
まあ、面識がなかったわけではない。
俺の幼馴染である男の妹ということもあり、昔から遊んでいた仲ではある。
だからと言って、今のように付き合うことになるとは、到底思えなかった。
きっかけは、俺が高校に遊びに行った時だ。
部活はどうなっているのかを知りたくて、先生と話したあとに、部室へのぞきに行ったのだ。
その時、後輩が一人で絵を描いていた。
扉を開ける音でこちらを振り返り、俺が立っていることが頭で認識できた時点で、驚いた顔を俺に向けた。
「どうしてここにいるの」
絵筆を水壷に浸し、手を簡単にふきながら俺に近寄った。
「いや、暇になったから遊びに来たんだ。で、部室はどうなっているのかなって思ってな」
「どうなっているも、今はあたしだけよ。ほかの人たちもいることはいるけど、今日は用事があるとか何とか言ってきてない人も、連絡がない人もいるし」
「そっか」
俺は、後輩にそう言って、部室の中にはいった。
俺が卒業したときそのままの部屋だった。
「しかし、何も変わってないな」
その時、ふと俺は思い出した。
「そうだ、あれまだ残ってるかな」
俺は部室の端にある壁を触り、隙間を見つけた。
この隙間は俺が1年生の時に見つけたもので、何かしらのものを入れることができた。
何かしらといっても、プリント5枚が限度の小さな隙間だ。
俺はここに、卒業したときのメモリアルとして手紙を1枚差し込んでいたのだ。
「あった」
ほこりまみれにはなっているものの、まだ、読めそうだ。
「なんなの?」
「俺が卒業したときに、ここに置いて行った手紙だよ」
手紙を開けると、5年後のおれへという題名でいろいろ書いてあった。
「大学へ行っているか、バイトはどうなっているのか、彼女はできたか」
のぞきこまれながら、後輩が俺の手紙の文章を適当に拾い上げながら、口にした。
「まあ、高校卒業したときの気持ちなんて、こんなものさ」
「それで、どうなったの?」
「ああ、大学へは行けたし、コンビニのバイトを今はしてる。できてないのは彼女ができることぐらいかな」
「好きな人とかいないの?」
「いたさ。でも、別の人と付き合ってる」
それから、後輩へ向き直って、冗談半分で言った。
「もしかしたら、お前が俺の彼女になってくれないかなってか」
それを聞いた時の後輩の表情は、その言葉を真に受けたような感じだった。
「それって、冗談?それとも本気?」
「もしも本気だとしたら?」
「あたしも、好きだった。そう言おうと思う」
「…そうだったんだな」
俺は後輩をやさしく抱きしめ、そして、肩をたたいていった。
「じゃあ、付き合ってくれるのか」
後輩は、うなづいた。




