プロローグ
札幌の隣町…石狩。
夏休みが終わり、そろそろ秋に差しかかろうという時期。
札幌に比べれば人口も少ない小さな町にある赤い校舎の高校。
南線高等学校という表札が見える。
その校舎に今日から転入するひとりの少年が母親と共に校門の前にいる。
「この町並びも懐かしいなぁ…ちっちゃい頃に見てたこの校舎も変わってないや」
「何言ってんの?老けたオッサンみたいな事言ってないでとっとと行きなさい」
「わかってるって。母さんも頑張って」
他愛もない穏やかな親子の会話。
そんな中、母親らしき女性が少年に問いかける。
「佑介…サッカーは続けるんでしょうね?」
「当たり前だろ?どこでやったって一緒だよ」
「正直、プロを目指すあんたには…」
「いいんだよ、母さん」
何かを言いかけようとした母の言葉を佑介と呼ばれた少年が止める。
少年の名は松居佑介。
父である恭平の仕事の都合で中学時代は静岡で過ごした。
静岡では少々名の知れたサッカープレーヤーで地区のトレセンにも選出されている。
U-18日本代表候補にも選出され、流星の異名も持っていた。
そんな中で父方の祖父の体調が思わしくないという知らせが入った。
そのため、仕事の忙しい父を残し、母の京子と共に地元石狩に戻って来たのである。
静岡でも有数の強豪校である藤枝学園に通っていたにも関わらずだ。
だが、佑介には帰って来るだけの理由があった。
「アイツと小学校の時に約束したんだ…いつかまた一緒にサッカーやろうって」
「…あんたらしいね。それなら母さんは何も言わない。精一杯楽しんでおいで」
「うん、それじゃあ行ってきます!」
そう言って佑介は校舎へと駆け出して行った。
正門から職員室へと向かう廊下で佑介は親友の顔を思い浮かべた。
(恭平…あの時の約束、果たしに来たぜ)
登場人物
松居佑介 Yusuke Matsui
生年月日 1985.10.2
身長 163cm
体重 50kg
本作の主人公。
静岡では「シューティングスター」の異名で知られていたサッカープレーヤー。
地区のトレセンにも選ばれる程の実力者で、U-18日本代表にも飛び級で選出される。
主にトップ下やセカンドトップを務めるが、攻撃的なポジションなら柔軟に対応できる。
細かいタッチで密集地帯をドリブルで切り裂いていくのが持ち味。
フィジカルはやや劣るがそれを補って有り余る程のスピードとテクニックを誇る。
時折見せる閃きでチームの窮地を何度も救ってきたファンタジスタ。
松居京子 Kyoko Matsui
生年月日 1959.8.27
身長 144cm
体重 不明
佑介の母。
父方の祖父の面倒をみるため、佑介と共に石狩に戻ってきた。
息子の事を常に温かく見守っている良き母である。